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学長室

スピーチ集
平成23年度千葉大学入学式学長告辞
ご入学された皆さん、ご入学おめでとう。私たち教員も職員も、そしてあなた方の先輩も皆さんを心から歓迎いたします。
皆さんはこれからの楽しい大学生活に大きな希望を持ち胸を膨らませていることでしょう。そのような皆さんの夢をいっそう輝くように私たちも全力で応援します。
この新たな出発の日ではありますが、どうしても申し上げなければならない悲しい出来事が日本に起こりました。東北関東の太平洋沿岸を襲った地震と津波のことです。これほどの自然の威力をどれほど予測出来たでしょうか。ただただ悲しいというしかありません。しかし、悲しんでいるばかりではおれません。今こそわれわれの力を最大限発揮して、この危機を乗り越えて、新しい日本へと回復させようではありませんか。このことを認識して、入学という新たな出発を迎えてほしいと思います。
千葉大学には9つの学部、15のセンターなどを中心にいろいろな分野の専門性が発揮され、世界の大学や研究所といろいろな分野で積極的な交流を行っている文字通りの総合大学です。そして日本国内全ての県からこられているのみならず、海外55カ国から1,100人を超える留学生を含めて、14,000名を超える学生が学んでおり、皆さんはこの中の大切な一員となったことを認識していただきたいと思います。
皆さんはこれからいろいろな分野での学びが始まります。学びをするという中で大切にすることは何でしょうか。いろいろあると思います。それぞれ皆さんの考えで大いに学んでほしいと思います。学ぶ上で大切なことはたくさんありますが、その中で情報という要素も極めて大切であります。現代は“情報の時代”といわれるように、均一な、時には不要な、たくさんの情報を一瞬にして手にすることができるというのが特徴の一つとされていると思います。その情報の山から、真に必要とするものを取り出して自らのものにするという作業が待っています。それができなければ単なる仕分けをすることでしかありません。それが自分にとってどのような価値があるかを見定めなければなりません。その情報の価値を評価するのは自分であります。そのようにして見出したものが、真に必要とする情報への遭遇になるのだと思います。その遭遇にいたるにはどのようなことが必要なのでしょうか。一つは物事の本質を見分けるということではないでしょうか。ある面では難しいことですが、情報が多い現代だからこそ、そのことが強く求められるのだと思います。情報の見かけ上の量の多さや圧倒的な迫力などに迷わされることなく、何が人間にとって意味と価値のあるものであるかを見分けることが大切であると思います。そのような見分けをするために何が必要でしょうか。
いろいろな局面をみて、取捨選択して判断するという技術も必要でしょう。物事の意味、本質を理解しないために目の前の現実にとらわれ、正確に捉えることができないということが問題になることもあるでしょう。一般的に言われることとして、この原因はこういうことを引き起こしたという説明から因果関係を示すことがあります。しかし、その道筋が真に正しいものであるかどうかを確かめる方法は、必ずしも多くはありません。多くの人が同じように考えたとしても、それが正しいという保証にはならないというのが本質を考える上で大切なことだと思います。
ここに潜む大切なこととして“物事を感じ取るという感受性あるいは感動する心”があると思います。この大切さを数学者の藤原氏は、 “数学の真理を追究する上で大切な資質は、知能指数や偏差値ではなく美的感受性である。”と述べています。さらに“数学の研究とは、いってみれば高い山の頂きにある美しい花をとりにいくようなものですから、まずはじめに麓に行き、頂きを見上げてそこに美しい花のあることを認知しなければなりません。美的感受性が欠如しているということは、そもそも険しい登山のスタートラインに立つという動機さえ生まれない。”と述べています。
これは数学の世界だけではなく、これから大学で学ぶ皆さんに言えることだと思います。さて、この美的感覚ということに日本人は著しく優れた民族であるとも述べられています。文字は単にことを伝えるという記号としてばかりではなく、書道という芸術をつくりました。花を単に飾るというだけではなく、華道という芸術を作りました。お茶を飲んで味わうだけではなく、茶道を作りました。これは偶然ではなく、日本人の持つ美的感覚のなせる技であるとしています。このような日本人の美的感覚を育んできたのは、繊細で美しい日本の自然であるともいわれています。ですから、この日本という環境に生きるということは、自然とそのような感覚を育んでいるともいえるでしょう。
このような、本来日本が持つ環境の中で学ぶことができることを誇りにして、学んで欲しいと思います。私たちはこのすばらしい環境をそれほど意識することなく生きていると思います。鎌倉時代の高僧である道元は、その著書“正法眼蔵”の中で“霧の中を歩めば、覚えざるに衣湿る”と述べています。霧の中にいて、そこを歩いているときには気づかなかったが、あとで気づくと衣服が濡れていた。ということだと思いますが、私たちはこのようなことをしばしば経験しているのだと思います。学問の世界でも同じだと思います。いい師に恵まれ、その時には気づかなかったけれども、いつの間にかその師の考えや思想に知らない間にどっぷり浸かっているということがあります。すばらしい学問が生まれる時には、すばらしい研究者が集い、すばらしい環境が生まれた時だともいわれます。現代はいろいろな意味で、日本人の育んで来たこのような自然も環境も大きく変化させようとする時代でもありますが、そのような中でも本質を見失うことなく学びをしていただきたいと思います。私たちは皆さんにできるだけそのような環境の中で学んで欲しいと願っています。そのために教職員は応援を惜しみません。
先にも述べましたが、本学は総合大学であります。総合大学とは単に学部が、学部の建物が物理的に集合して存在しているということから総合という名前がついているのではなく、そこにそれぞれの学問が展開されていると同時に、それらの学問が有機的に交流がなされているということがあるからこそ、総合大学であります。皆さんはこの総合大学で学ぶという意味を十分に理解され、その環境を大いに利用して、大いにその特徴を学んで欲しいと思います。
私たち教員、職員、そして先輩の学生はあなた方の大学生活が楽しく、意義ある毎日であるように、あなた方と共に語り、学び、働き、大学を発展させていきたいと思います。ぜひ、ともに学び、遊ぶという気持ちをいつも持ってください。
本日入学された方々のご家族、関係する方々にお祝い申し上げ、告示といたします。
平成23年4月8日
千葉大学長 齋藤 康






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