心的外傷体験とストレス
―ASD(急性ストレス障害)とPTSD(心的外傷後ストレス障害)―
山 田 敏 久 (保健管理センター助教授)

心的外傷後ストレス障害(post traumatic stress disorder PTSD)という言葉をご存知でしょうか。この言葉は,神戸大震災の後遺症として広く認識されるようになりました。主な症状は,
 1)再体験(侵入,想起),
 2)麻痺・回避,
 3)過覚醒
です。
 悪夢に苛まされたり,意識しないのにその場面が思い浮かんだりします。そのため,出来事を想起させる物や状況等を回避したり,感覚の麻痺が起こります。あるいは,逆に興奮して寝つけず,いらいらして怒りっぽくなったりすることもあります。
 感情的には,不安感,抑うつ感,無力感,孤独感などを抱きやすく,うつ病,パニック障害などその他の障害を合併しやすくなります。
 これらの対応として,近年,外傷体験早期にデブリーフィング等の表現活動を実施することでPTSDの発症を予防する可能性が高まることが知られてきています。
 デブリーフィングとは,単純には状況報告であり,事実確認のことです。しかし,このことにより,自身の状態を異常時の正常な反応として回復を促し,異常な状況から解放する(使命解除)意味があります。表現技法はこれだけに留まらず,集団討議や身体,芸術活動など多様です。いずれも体験者の意思を尊重し,無理強いはさせないことが特徴的です。


興味深そうに説明を聞く子どもたち

 図は,外傷体験後の障害の診断を明示したものです。
 体験後72時間以内での前述した反応は,異常時の正常な反応と言えますが,それ以後は急性ストレス障害(Acute Stress Disorder ASD)と診断され,1ケ月以上継続したり,あるいはそれ以降に発症した場合をPTSDとします。急性ストレス障害は自然治癒されることが多いのですが,PTSDは人によってはその後何年も苦しむ可能性があります。そのため,外傷体験早期もしくは1ケ月前後での支援活動を受けることが望まれます。近年では,緊急支援チームとして,ケースワーカー,カウンセラーなど精神保健の専門家らが複数でチームとなって支援を行なう活動が展開され始めています。
 学内でも,研究室,サークル等においては,交通事故,犯罪等様々に衝撃的な外傷体験を経験する可能性があり,学業や対人関係に支障をきたさぬよう安全管理,危険管理の立場から支援を検討していく必要があるでしょう。

参考文献
心的トラウマの理解とケア 厚生労働省 じほう 2001

興味深そうに説明を聞く子どもたち