掲載日:2012/1/4

平成24年(2012年)年頭の挨拶

年頭の挨拶

 

 皆様 明けましておめでとうございます。

 よいお年をお迎えになられましたことと存じます。旧年中は公私ともども大変御世話になり感謝申し上げますとともに、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 さて、年が明け、今年を考えるときに、特別な昨年ということに思いをいたさずにはおれない気持ちです。東日本大震災、原子力発電所の事故という大変悲しい出来事を抜きには語れないように思います。東北地方の甚大な被害、そして放射能汚染という被害、これらによる様々な状況はいまさら申し述べることでもないかもしれませんが、本学においても2名の入学予定者の尊い命が奪われましたこと、またご親族、友人を失うという悲しみ、そして家屋の損失をはじめとする被害など大変大きな打撃をうけました。亡くなられた方々への心からご冥福をお祈りしますとともに、被害を受けられた方々の一日も早い、復旧、復興を願わずにはおれません。

 このような極めて深刻な国難ともいうべき状況の中にあって、大学の方々はそれぞれの専門性や、助けなければならないという純粋な気持ちから、現場への支援や募金や被災者の受け入れなどにご活躍いただきました。そこには人間としての生きる原点ともいうべきアイデアと行動が見られるのを感じました。学生にも、職員にも、教員にも、それぞれの職種を生かし、そしてその領域を越えてお互いに協力しながら、見事な活動が行われたと思います。それらは現在も続いています。これらのご活躍を拝見するにつけ、本学の素晴らしさを誇りに思う次第です。

 被災地に出かけ、活動して帰ってきた学生にお会いして、助けることの大切さを力説される姿を拝見し、一回り大きな人間として帰ってきたように思いました。被災地の方々には失礼かもしれませんが、被災地で学生は新たな学びをしたようにさえ思いました。

 復興のこれからの長い道のりを考えますとこの作業はまだ緒についたばかりというべきかもしれません。これからも続けていかなければならないことと思いますが、色々な機会を通して、共に生きる仲間として支援していきたいと思います。

 国はこの震災という災難から国を復興させるという施策に取り組んでいます。ご存知のように、復興のための予算の組み立てがおこなわれています。予算の縮減、節約そして増税という手法がとられようとしています。大学は研究を通して教育を行い、人材を育成して国家に貢献するという使命を持っています。これは予算の動向やいろいろな国の施策で変動するのではなく、いわゆる基盤的な作業としていつの世代も行ってきましたし、これからもそうあらねばなりません。さて昨今の状況を見ますと、この原則が崩壊されようとしているように見えます。本学で考えますと、平成16年の法人化以降約9億円の運営費交付金の削減が行われました。この額の実態は人件費で単純に換算しますと、教員約100人の削減に相当します。これらの状況に対して、本学でも人員削減という手法で主に対応してきています。教職員の壮絶なご努力により、この状況にあってもいくつかの素晴らしい業績を生んで高く評価されているところであります。しかし、このご努力も異常ともいえる、ある意味の犠牲的な労働の上に成り立っていると言わざるをえません。国際的な評価を見ますと、全体もですが、その発展は海外の国々に比較して本学も必ずしも喜べる状況ではなく、これからの国際化を目指す本学にとりましては、憂うるべき状況と言わなければなりません。

 これらの国の施策を唯々諾々と受け入れるつもりはありません。なんとかこの大学の状況を理解していただき基盤的経費を守っていただくよう国への働きかけを行っていかねばなりません。

 そのような状況にあっても、大学がその根幹に持つ教育、研究機能が発揮されるために必須の条件としての“未来を作り”、“夢を作る”ということを忘れてはなりません。そのような大学の発展を目指した機能強化に取り組んでいくことが必要なことと思っています。

 それぞれの専門領域には特長があり、一概に述べることは難しいかもしれません。しかしどの分野でも、現在を語るだけではなく、将来に、未来に向かって何かを作り出していくという作業が課せられていることには間違いのないことであると思います。そしてそれらの夢は、専門家以外の人々にも広く理解されるために、専門家は努力しなければならないというのも事実であると思います。そのようなことは全学的にも発揮していかねばならないことがあることを認識しています。そのひとつに、高等教育の未来の姿を作り出していくということがあげられると思います。それぞれの専門領域ではその分野における高等教育について十分認識した取り組みがなされていると思いますが、全学的にも、それぞれの専門教育の集合体としての未来の高等教育を創造する機能を強化せねばならないと考えています。全学的な議論が展開されることを願っています。

 最近の取り組みの中で、全学的に見てみますと未来を作るという機能としてすでに、植物工場の実践、学生が中心で語る未来の居住環境を作るソーラーデカスロンへの参加、未来医療教育研究センターの創設、看護学におけるリーディング大学院の実践、新たな産学官連携を展開するCSPCの実践、アカデミック・リンク・センター、ハドロン宇宙国際研究センター、そのほかにもたくさんあるように思われますが、是非未来の夢をさらに大きく広げていただきたいと思います。そしてそのような未来への夢を作り出す機能を全学的にも強化してまいりたいと思います。そしてその成果を広く全学的に共有していくことが重要であると思います。

 次に国際化があります。現在社会にも、大学にもしきりに国際化ということが唱えられています、国際化とはどのようなことをさすのでしょうか。外国に行き、外国から人が来る、これは国際化のごく一部をさしているにしか過ぎないと思います。おそらく未来の国際化というのは、生きていくためのいわゆる国境もなく、基本的には世界共通の規則で、自由に国際的な文化に触れることができ、そこで生活をし、仕事をする、そしてそこでいろいろなものが生産され、世界のバランスが生まれるということなのかもしれません。そのような未来が来るまでに、我々は何を作っていかねばならないかということを考えなければなりません。本学では現在も極めて活発にいろいろな国の大学と交流をし、実績を積んできています。それらの活動は高い評価を受けていると思っています。しかし、先に申し上げましたような世界の流れを見るにつけ、日本ではなく世界の中の一人として活躍することができるために何を、どのように学ばねばならないのか、どのような環境を作らなければならなのかを改めて考えていかなければならないのではないかと思っています。今年の大学改革シンポジウムでは、グローバル人材育成がテーマとして取り上げられます。活発な議論をして、我々が挑戦しなければならないことについてお互いに共有していきたいと思います。

 大学で素晴らしい展開がされている背景には、常に優れた教職員の力の存在を忘れてはならないと思います。素晴らしい教職員の力なくして機能強化もありえないと思います。その優秀さを大学が維持していくためには、教員の選考には極めて重要な作業ともいえます。選考にあたっては基本的な考えとして、そこをどのような機能をもつ講座にするかをはっきりとさせ、教員選考にあたっては、そのためにふさわしい教員を選考するということだと思います。そのために部局の研究教育領域の専門的なお考えを重視しながら、全学的な視野に立って行われるべきと考えます。学問はいまや領域を超えて、時に共同研究という形で、時に融合して、推進されたり、時には本学では亥鼻キャンパスで行われていますが、Interprofessional Educationといわれるように教育テーマが多岐の領域にわたる課題に対して、領域を超えて教育が行われているというようになっています。そのような領域を超えて目的を推進していくために、研究に対して、教育に対して、どのような技術やマインドをもつ人を選考するかということについて、広く認識して行われていくことが重要であると思われます。全学に開かれた教員選考が行われていくために、どのような方法が必要かということについて検討がなされていますが、基本的な考え方についてご理解いただきたいと思います。

 本年も大学にとって、決して楽な1年であるとは思えません。しかし、研究、教育を通して人材を育成するという機能は大学にしかないという誇りをもって、研究の持つ魅力を感じ、若者が育つという教育が持つ魅力を感じながら、楽しい1年になることを願って年頭の挨拶とさせていただきます。

 

  


平成24年1月4日
国立大学法人千葉大学
   学長 齋藤 康