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平成29年度 千葉大学大学院修了式・学位記授与式 来賓講話

掲載日:2018/03/30

  本日は千葉大学大学院修了、本当におめでとうございます。保護者の皆様方にも、心からお祝いを申し上げます。

  これまで論文の作成に心血を注いだことでしょう。この努力は高く評価したいと思います。しかし、これからが本番です。世界をめざして頑張って下さい。

  私は昭和51年に千葉大学教育学部に赴任しました。37年間お世話になりました。専攻は教育社会学です。教育と社会の関わりを研究する学問です。例えば、学校の統廃合をどうすればよいか、PTAの活動はどうすれば活性化するか、教員の力量はどんな研修で身につくか、などの研究をしてきました。

  そして、千葉大学をやめる10年間、ナガシマ学を立ち上げました。なぜナガシマ学を立ち上げたか、といいますと、当時イギリスの大学で、サッカー選手のベッカムについての研究が始まる、というニュースを耳にしました。直感的にこれはユニークでおもしろいテーマだと思いました。

  日本でベッカムに値するのは、私たちの世代では美空ひばりと石原裕次郎と長嶋茂雄です。この三人は戦後の日本人に夢と希望を与えてくれました。長嶋は私が小学校5年生の時、巨人に入団しました。契約金が1800万円でした。いまでは1億8000万円にあたるでしょう。野球少年だった私は長嶋に憧れ、プロを目指して日夜、野球に明け暮れました。当然ながら夢は叶いませんでした。しかし、長嶋は大好きでした。長嶋に関する情報は集めていました。

  長嶋はよく「記憶」の人と言われます。一方、野村は「記録」の人と言われます。また、長嶋は「感性」が強くカンピューターで右脳派、野村は「論理」が強くID野球で左脳派、花では長嶋はひまわり、野村は月見草にたとえられます。

  これ以外に、物事を伝えるとき「口伝」で伝えるか、それとも「文書」で伝えるか、という問いがあります。落語や歌舞伎などの芸事は口移しで教えます。

  長嶋はニューヨークにいる松井に電話越しでバットを振らせ、素振りの音を聞いて口で打撃のコーチをします。野村のキャンプのミーティングはつぶやきが長くて、全員にメモを取らせます。余談ですが、当時ヤクルトにいた息子の一茂だけは全くメモを取らなかったそうです。これも遺伝でしょうか。

  今に生きるか、それとも明日を考えて生きるか、の問いがあります。明日を考えないで今に生きる人は子供と若者に多いといわれます。ですから、今を精一杯生きた人はふり返ると思い出があります。子供時代のように「時代」を持つのです。一方、明日を考えて生きる人は残りの寿命の短い高齢者に多い、といわれます。

  長嶋は今に生きたから、大量点を取られても試合を捨てませんでした。野村は年間130試合をどう戦うかを組み立て、落とす試合を計算に入れていました。

  もう一つ海洋民族か農耕民族か、があります。漁師は潮の流れに注目します。網を打つ潮目を瞬時に読むのです。ですから、「今」を大切にします。そして漁師は穴場をメモに残しません。長男にだけあの山とこの山の間に網を打てと口で伝えます。メモに残した場合、拾われる可能性が高くなるのです。また、漁師は徒党を組みません。ある意味では一匹狼です。ある意味では縄文系とも言えます。機動力があり、ルールや前例のない所に出かけます。定着性が薄いのです。

  一方、農民は「明日」を大切にします。前例を大切にし、明日の天気を気にします。そして、植えた作物をメモにして残します。輪作にこだわります。ですから古文書も多く残っています。さらに、田植えの習性でしょうか、ラインの上げ下げが上手く、みんな歩調を合わせ協力的です。強固な農協という組合を作ります。弥生系と言えます。

  あなたはどのタイプでしょうか。長嶋型は「今に生き感性を大切にして記憶を残します。そして伝えるときは口伝です。縄文系で海洋民族です。」

  野村型は「明日を考えて生き、論理に強く記録を残します。そして、田植えで身に付いた勤勉さと努力を重ねる弥生系で農耕民族です。」

  この両者を教育にたとえるなら、野村は学校教育派となります。長嶋は公民館などの社会教育派です。学校は生体験でなく疑似体験が多いです。教科書があり、系統的で論理的です。どこでも通用する知識を大切にし、ユニバーサルです。そして問題解決のためのシュミレーションを作るのが得意です。学校は判断力を育てます。

  公民館は生体験が多いです。教科書のようなお手本がありません。独自なプログラムを考えます。論理より感性を大切にします。そして、地域にこだわります。独自の文化を大切にします。決断力を育てます。

  ちょっと視点を変えて、皆さんに中学校、高校時代の定期試験前、一週間の勉強の仕方を尋ねます。次の四つがあります。Aはコツコツ型です。ノートをきれいに取り、単語帳や年表を作って試験に臨みます。Bは一夜漬けです。試験前日に半分徹夜をしながら勉強します。Cは山ハリ型です。あの先生ならあそこがでるだろうとポイントを押さえて望みます。最後は、人生は勉強だけでない、といって勉強しないタイプです。皆さんはどれに当てはまりますか。今の中学生のデータを示すと一番多いのが四番目の勉強しない人たちです。4割近くいます。次がAのコツコツ型です。35%ほどです。三番目に一夜漬けがきます。15%ほどです。そして最後に山ハリがきます。10%前後です。

  山ハリ型は勘所を押さえます。何が大切かわかっているのです。得意な教科は山がはれます。

  長嶋は山はりです。海洋民族で一発勝負です。ボール球の読みが優れていました。野村はコツコツ型の農耕民族です。先を読み準備を怠らない習性を身に付けています。

  残念ながら、日本人は山ハリが少ないのです。ハイリスク・ハイリターンを恐れます。山が外れた時の自己責任を取るのを嫌がります。しかし、研究にはこの山ハリ的な視点が必要です。ユニークな研究には大胆な発想と根源的な問いかけがなければなりません。

  最後になりますが、千葉大学の先生で面白い研究をされている方がいます。金さん銀さんを知っていますか。あの銀さんには3人の娘さんがいるそうです。その人たちがみんな長寿だそうです。それはなぜか、を研究したのです。ユニークな研究です。結論を言えば、3人ともお話しが上手く会話を楽しんでいるそうです。

  皆さん方も、未来のある人生をおもしろがり、よき友と会話を楽しむ研究生活を送って欲しいものです。誰もやらない研究を期待しています。本日はおめでとうございました。

平成30年3月27日
千葉大学敬愛短期大学学長 明石要一