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平成29年度 千葉大学卒業式 来賓祝辞

掲載日:2018/03/30

  本日で千葉大学をご卒業される皆さん、誠におめでとうございます。長いようで短かった学生生活を終え、今後の新生活に、期待に胸を膨らませていることと存じます。

  普段はこのような公の、ましてや国立大学法人千葉大学の卒業式でお話をさせて頂くようなことはございません。しかしながら、千葉大学と私との御縁から、お受けさせて頂きました。

  千葉大学との初めての接点は、小学校高学年の頃でした。当時の家庭教師の先生が、千葉大学医学部の学生さんだったのです。その先生が熱心に勉強を教えて下さる姿から、「千葉大学の学生はすごい」と特別な尊敬の念を抱いたことが印象に強く残っております。

  そして、そのような私が、現在は千葉大学経営協議会の一メンバーとして本校に携わらせて頂いております。不思議な御縁を感じていた矢先に、今回のお話を頂戴しました。

  本日は、そのような千葉大学の、そして日本の未来を担う皆さんの大きな門出という晴やかな場でございますので、少しだけ皆さんより実社会で経験を積んできた人生の先輩として、お祝いの言葉をお贈りさせて頂きます。

  皆さんの多くは、これから企業や官庁に就職される方、また中には研究の道へ進まれる方もいらっしゃることと思います。いずれの道にしましても、現在の世の中は、もの凄いスピードで、また複雑に変化していることを胸に留めて下さい。

  例えば、今では当たり前のように一人一台スマートフォンを持っていらっしゃると思いますが、ほんの十年前では考えられなかったことです。電話やメールだけでなく、社会情勢から日々の生活に至るまでの情報を収集したり、又は外国のホテルの予約をすることができたり...と、人間社会における常識は、大きく変わりました。このように情報がボーダレス化した社会では、地球の反対側で起きた小さな事象が瞬時に社会の常識を覆すほどの影響力を持つ時代でもあります。

  また、私が大学卒業後入社した京成電鉄でのことです。当時、電鉄と言えば、お客様を「乗せてあげている」という感覚でした。勿論、今では常識は変わり、お客様に「お乗り頂いている」事業でありますし、業種業界問わず共通する考えではありますが、以前のような体質でビジネスをしていては全く成り立たないことは、十分ご理解いただけるものと思います。

  そのような中で、時代の変化に身を委ねるのではなく、皆さん自身が時代に先んじて「進化」を続けていかなければ、時代に取り残されてしまいます。しかし、いくら時代が変わろうとも、常識が変わろうとも、一番大事なのは、「夢」を持ち、その実現に向けて諦めずに努力を続けることなのです。

  私どものオリエンタルランドは、1983 年の東京ディズニーランド開業から遡ること23 年前の1960 年に、京成電鉄内に設立された会社です。収入はゼロ、僅か机3つ、電話無しのスタートでした。

  我々にあったのは、ただ一つ。初代社長川﨑さんの「アメリカのディズニーランドの素晴らしい世界を、日本の子供たちにも見せたい」という夢だけです。私自身、京成電鉄経理部に在籍する傍ら兼務でオリエンタルランドの業務に携わっていました。しかし、いつしかこの夢の実現に人生をかけたい、と考えるようになり、1972 年にオリエンタルランドへ転籍致しました。

  幾つもの苦労を乗り越え、やっとの思いで東京ディズニーランドは開業しましたが、それでも、当時の世間からは「上手くいくはずがない」「すぐ潰れる」など、散々言われました。東京ディズニーランドは初年度の入園者目標を1,000 万人と掲げましたが、それは当時の関東圏の大型遊園地約3つ分の年間入場者数程の数値で、「常識」では考えられなかったことです。

それでも一年目に1,000 万人の入園者数を達成することができました。人々が「心の豊かさ」を求める傾向が強まり、「常識」が変化した時代背景にも恵まれました。また従業員が一丸となって「何が何でも成功させる」という強い信念を持って奮闘したことが、この結果に繋がったものと思います。

  皆さんも、「これだ」と思ったことには、最後まで決して諦めることなく取り組んで下さい。

  ここで私自身の経験から、大事にして欲しい考えと行動について、3つほどアドバイスをお送り致します。

  1つ目は、「目の前の仕事を確実にやる」ということです。

  会社や組織の方針、或いは上司からの指示が、時には突然変わったりすることもあります。しかし、自分の役割や与えられた仕事には、常にベストを尽くして下さい。

  仕事を山登りに例えると、どんなに辛くても必死に目の前の山を登りきれば視野が大きく開け、次に登るべき山が見えてきます。自らの役割の中でベストを尽くすことで、仕事を行う上での知識、経験が身につき、更に別の仕事もやり遂げられる実力がついてきます。まずは目の前にある山を自分の足で登ってみてください。

  京成時代、私は法学部出身で総務部を希望しましたが、会社から告げられた最初の配属先は経理部でした。為替手形も約束手形すらも知りません。しかし、経理実務を日々こなし仕事に精通するにつれて徐々に面白さが分かってきたのです。会社の資金はいわゆる血液と同じであり、滞ると人が病気になるように会社も傾く。このように、無味乾燥だと思っていた経理の知識は、その後異動した部署では勿論のこと、今なお経営判断にも大いに活かされています。

  2つ目は、「自分自身を磨く」ことです。

  今は、スマートフォンなどで、いつでもどこでも簡単に情報を得られる時代です。しかし第三者からの情報だけに頼ることなく、自らが足を運んで様々な人と話したり、見たり、聞いたり、肌で感じて下さい。人間の感性はその人の過去の経験以上には養われません。情報過多とも言える現在、大量の情報が否が応でも入ってきます。そのような中で、本質を見極める力が大事です。その為には、芸術にしても、学術にしても、本物や一流のものに触れ、感性を高める努力をしてください。自分自身への投資を続け、努力を続けなければ、本質に辿りつくことはできません。東京ディズニーシーへ行かれたことのある方はイメージしていただけると思いますが、例えば入口付近からはイタリアの「ポルトフィーノ」という小さな漁村を模したエリアが拡がっております。本場さながらの臨場感に徹底的にこだわりました。勿論、これらはインターネットで調べてデザインしたものではありません。本物を見てきたからこそ、本物と見間違う程のものを創り上げてくることできました。

  最後に3つ目です。それは、自分の仕事に対して「常に理論武装」をしていただきたい、ということです。

  単に目の前の事象や過去の経験で判断するのではなく、何故そうなったか等、理論的に研究してもらいたいのです。そのためには、自身の担当業務・専門分野の枠だけでなく、それを超えた様々な分野の勉強をしてください。

  私は社内でも全部署の責任者に、担当業務を超え「人事・経理・法律」について各自で知識を深めるように、と発破をかけてます。経理に関しては先程申し上げたように、会社の血流そのものでありますし、また昨今社会問題にもなっているように、従業員の働き方や環境構築については、人事労務に関する知識や、それを取り巻く法律も理解しなくては務まりません。何か起こってから対応しようとしても、「知りませんでした」では済まされません。

  色々なことをお話しさせていただきましたが、くれぐれも健康は第一に、各々の夢の実現に向けて頑張ってください。「健全な精神は健全な肉体に宿る」というように、身体が健康でないと、何もできなくなってしまいます。皆さんはこれから実社会の荒波に旅立たれますが、是非しっかり夢と信念を持ち、これからのご活躍、そして輝かしい未来に向けて大いに羽ばたかれることを心からお祈りし、私からのお祝いの言葉とさせていただきます。

平成30年3月23日
株式会社オリエンタルランド 代表取締役会長 (兼) CEO
 加賀見俊夫