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平成30年度千葉大学大学院修了式・学位記授与式 学長告辞

掲載日:2019/03/30

  本日ここに、博士、修士、専門職の学位を授与された皆さん、おめでとうございます。素晴らしい研究の成果を収め、学位を取得されましたことにお祝いを申し上げます。またご臨席賜りましたご来賓の皆様にお礼を申し上げますとともに、ご列席のご家族そして関係される皆様に、これまでのご支援に対して深く感謝申し上げます。

  皆さんの大学院における研究活動では、新たな発見の喜びや驚きが、多々あったことと思います。論文に結びつくデータが得られた時の喜びは、研究に携わった本人にしか味わえないものであり、これからも強く記憶に残ることでしょう。また、皆さんの中には、新たな研究成果を求めて、苦悶の日々を過ごされた方も、多いのではないでしょうか。楽しいと思って始めた研究も、結果を出すまでには、いろいろなプロセスがあったことを思い出してください。このように皆さんは、大学院で学位論文をまとめるために様々な努力をされてきました。その結果として、皆さんの価値観や人格が形成されていったのです。大学院における研究活動の成果物として皆さんが得るものは、学位記という1枚の証書でしかありません。しかし、その過程から得られた知識や経験は、皆さんの血となり肉となって、皆さんのこれからの人生において、何かを創り上げるときの大きな原動力になることでしょう。

  今日の修了式を迎えられた皆さんは,今まさに人生の新たなスタートラインに立っています。そして皆さんは、将来、社会をリードする立場に就くことが期待されています。しかし、皆さんがこれから活躍する社会は、21世紀に入って大きく変貌してきています。世界では、交通手段や情報通信技術などの発達により、様々な分野や地域にグローバル化をもたらし、結果として何事も地球規模で考えなければならない時代となっています。それに伴い人々の価値観も著しく多様化しています。日本では、グローバル化への対応ばかりでなく、人類が経験したことのない少子高齢化時代に突入するため、労働人口の減少や高齢化への対応などが喫緊の課題となっています。

  また、人工知能・AIの進化が加速度的に速まっており、近い将来AIに取って代わられる学問分野や職業なども話題になり始めています。そこで私が強調したいことは、これからはAIでの対応が難しい分野、すなわち創造力が強く要求される分野や、人間関係が重要なウエイトを占める分野が、注目されていくだろうということです。そして、創造力や人間関係が重視される分野においても、進化したAIを取り入れた新たな展開が迫られることになるでしょう。

  このような変革の時代のリーダーには、深い知性とともに広い視野にたってリーダーシップを発揮できる豊かな人間力を身に付けていることが求められます。その中でも創造的に考える能力である知性は、大学院で研究成果を求めて努力する過程で磨かれてきました。この「知性を磨く」という行為は、大学院を修了しても終わりではありません。新しい環境の中で、これまでの研究活動で培った知恵と経験を駆使して、新しい課題を研究することにより、皆さん自身の知性を磨き続けてください。

  また、人間力は「一人の人間として力強く生きていくための総合的な力」と定義されますが、皆さんが社会でプロフェショナルとして仕事をする過程で、皆さん自身の努力により育成されてきます。ですから将来リーダーとして活躍したかったら、まずは日常の仕事を通して如何にして自己の人間力を高めることが出来るかを考えて活動してみてください。しかし、実際には日常の活動の中で人間力を高めるために、どのような努力をしたら良いのか分かりにくいと思います。そこで、千葉大学を巣立っていく皆さんへの「はなむけ」として、私が自身の人間力の育成に向けてこれまで努力してきたことをお伝えします。

  一つ目は、新しい職場において「師匠」を見つけることです。新しい職場で皆さんがおこなう活動において、人間力の育成法などというマニュアル本は有りませんので、その職場の先輩たちの人間力を見習うか、教えを乞うしかないのです。その時に、どの先輩を師匠と仰ぐかは、それまでの皆さんが身につけてきた価値観により決まります。師匠となる方は、自ら求めなければ見つかりません。職場の中で自分にとって最適と感じられる方を師匠と決めて、その方の人間力を積極的に見習うようにすれば良いのです。また、反面教師となる方も人間力の育成には重要な機会となることもあるので、学ぶ対象からは簡単に切り捨てないようにしてください。

  二つ目は、論語の為政第二に出てくる有名な「我十有五にして学に志す」から始まる孔子の教えです。その中で孔子は「40にして迷わず」と述べています。私たちは40歳前後でさまざまな道が見えてきて、自分に合った道が他にあるのではないかと迷うので、「決して迷わず」と述べているのです。すなわち、迷いを捨てて「ただひたすら」一つの道を追求することが人間力育成の近道だと教えているのです。私は、孔子の「40にして迷わず」という教えを、大学院時代の恩師からは「一つに秀でることは、全てに通じる」と教わりました。思ったとおりに行かないのが人生です。流行に囚われず、磨きぬいた知性を駆使して、信じた道をひたすら進んでください。そうすれば、次に孔子が「50にして天命を知る」と述べているように、皆さんも自己の天命を自覚できるようになるとともに、広い視野にたってリーダーシップを発揮できる豊かな人間力が備わっていることをお約束いたします。

  これまで指導してくれた教職員、共に学んだ先輩・後輩など多くの方々が、これからの皆さんの活躍を応援していることを、忘れないでほしいと思います。そして千葉大学は、これからも皆さんの将来を見守り続けます。皆さんには是非、千葉大学の同窓生として、千葉大学を、そして後に続く後輩たちを応援していただきますよう、お願い致します。

  平成最後の大学院修了生として、千葉大学での学びによって高めた専門性と教養に自信と誇りを持って、深い知性に基づく豊かな人間力を発揮されて、未来の明るい社会をつくり出してゆくリーダーとして、多方面で活躍されることを心より祈念し、私の告辞といたします。本日は、誠におめでとうございます。

平成31年3月26日
千葉大学長 徳久剛史