特色ある研究活動の成果
Research

情報計測・分析・提示技術による手術の最適化 〜よい手術とは如何なるものか?〜

情報計測・分析・提示技術による手術の最適化 〜よい手術とは如何なるものか?〜

研究代表者:中村 亮一
共同研究者:
①氏名、②フリガナ、③ローマ字表記、④所属部局名、⑤職名、⑥専門分野
①川平 洋、②カワヒラ ヒロシ、③Kawahira Hiroshi、④フロンティア医工学センター、⑤准教授、⑥内視鏡外科学、消化器外科学

図1 術中計測情報による手術工程分析評価・支援システムのコンセプト

中村 亮一

中村 亮一

Nakamura Ryoichi

フロンティア医工学センター准教授

専門分野:コンピュータ外科学,医療技術評価学

1998年東京大学工学部精密機械工学科卒,2003年東京大学大学院工学系研究科精密機械工学専攻博士課程修了.博士(工学).2001年ハーバード大学医学部・ブリガムアンドウィメンズ病院放射線科研究員.2003年東京女子医科大学先端生命医科学研究所助手,2008年千葉大学大学院工学研究科テニュアトラック准教授,2012年同准教授(テニュア取得),2013年千葉大学フロンティア医工学センター准教授(現職).2016年より科学技術振興機構さきがけ研究員(兼務).ナビゲーション・ロボット技術と情報分析技術による新しい手術支援技術と新規治療法の創成に従事.日本機械学会,ロボット学会,内視鏡外科学会,生体医工学会の会員.日本コンピュータ外科学会,看護理工学会評議員.

どのような研究内容か?

 手術中に執刀医の操る手術器具の動きと患者さんの体の構造の情報をデジタルデータとして取得し、これらをコンピュータで分析することで、医師の習熟度と作業の課題点を明らかにします。熟練した医師の手術データとその他のデータを比較することにより、「よい手術とは具体的にどのようにやっているのか」「腕のいい医師と駆け出しの医師の違いはどこにあるのか」を工学技術(計測技術、分析技術、提示技術など)を用いて理解し明らかにします。

何の役に立つ研究なのか?

 最近の手術は「低侵襲手術」といって出来るだけ体を切らない・傷つけない方法で治療を行います。これは痛みが少なく早く退院できる「患者にやさしい手術」ですが、一方で見えるところが少ない・作業空間が狭い・手術道具が特殊など技術的に難しい手術ですので「医師にはやさしくない手術」です。技術的に難しい手術になるほど医師の高い技量や間違いの無いやり方・手順(最適化された工程)が必要になります。それを全て個々の医師の努力・修行で達成することは非常に厳しい道のりであり、医師の献身のみに頼らず様々な支援技術の応用で「よい標準医療をすべての病院ですべての患者に」の達成を目指すことが必要です。
本研究で取り組んでいる手術の計測分析技術を応用すれば、例えば医師が自分の技術レベルを知りより高いレベルの手術をするために必要なことは何かを理解して効率的に習熟度を高めたり、個々の手術において標準的な方法から外れた部分を明らかにすることで医療上のアクシデントや事故を未然に防ぐことが出来ます。

今後の計画は?

 現在耳鼻科の手術での臨床研究と、腹部の内視鏡下手術のトレーニングシステム開発研究を進めていますが、より多くのデータ・より多くの分野に応用を広げ、様々な手術において本技術による習熟支援・手術工程支援を行います。
 また将来的には、本技術により明らかになった「優れた手術手法・工程データ」を元にロボットや医療機器をコントロールし、自動車の安全支援技術のように自動的に危険を回避したり一部の処置を進めることの出来る「自動手術技術」の実現に挑戦します。

成果を客観的に示す論文や新聞等での掲載の紹介

Takaaki Sugino, Hiroshi Kawahira, Ryoichi Nakamura, Comprehensive surgical task analysis on image-guided surgery, Journal of Medical Imaging and Health Informatics, 7(4):780-787, Aug 2017
https://doi.org/10.1166/jmihi.2017.2103
Takaaki Sugino, Akihito Kuboki, Nobuyoshi Otori, Osamu Honda, Masashi Yamamoto, Ryoichi Nakamura, Quantitative analysis of a camera operation for endoscopic sinus surgery using a navigation information: clinical study, Journal of Japanese Society of Computer Aided Surgery, 19(1)17-25, 2017
http://doi.org/10.5759/jscas.19.17
Takaaki Sugino, Hiroshi Kawahira, Ryoichi Nakamura, Surgical task analysis of simulated laparoscopic cholecystectomy with a navigation system, International Journal of Computer Assisted Radiology and Surgery, 9(5):825-836, Sept 2014
https://doi.org/10.1007/s11548-013-0974-8

報道等
・日刊工業新聞 2017年7月26日 23面
「医工連携で成果 現場ニーズを形に 内視鏡下手技 自動評価で確認」
https://d3ukgu32nhw07o.cloudfront.net/space_pdf/pdf_file59771a30dcf98.pdf
・日本科学未来館科学コミュニケーターブログ 2017年8月13日
「ロボットやコンピュータで手術が変わる!?」
http://blog.miraikan.jst.go.jp/event/20170813post-753.html
・マネジメントスクエアNo。330 (2017年8月号)
「モノづくりプロジェクトの挑戦 臨床現場と県内製造業を結び付け、医療機器産業の活性化を目指す C-square(シースクエア)」
千葉県・千葉県産業振興センター・千葉大学フロンティア医工学センター・国立がん研究センター東病院による医工産学連携プラットフォームC-Squareの活動についての記事において、C-Squareを通じた本技術の製品化の取り組みが紹介されています。

研究への意気込みは?

 「病に倒れた自分の大事な人を救うことの出来る技術を作り出す」
この医工学分野で研究開発を進める上での何よりのモチベーションです。

学生や若手研究者へのメッセージ

 学者・博士(男子)、学校の先生(女子)は「大人になったらなりたいもの」で常に上位にありますね。第一生命の調査では2017年は男子で15年ぶりに学者・博士が野球・サッカー選手をおさえて1位になりました。昨今は博士の厳しい状況ばかりが取り上げられますが間違いなく良い仕事です。特に医工学分野では研究者・学識者・教育者・イノベーターといろいろな形で、社会にそして人の生命・生活に貢献できます。博士取ろうぜ&頑張れ若手博士!

図2 内視鏡下鼻副鼻腔手術(ESS)での手術技能・工程計測

図3 模型を用いた内視鏡下鼻副鼻腔手術トレーニングでの術具操作技能計測・評価

図4 内視鏡下縫合結紮トレーニングの自動評価システム