特色ある研究活動の成果
Research

有機王水を用いた都市鉱山から金(Au)を回収する技術の開発

有機王水を用いた都市鉱山から金(Au)を回収する技術の開発

写真1 有機王水

松野 泰也教授

松野 泰也

Yasunari Matsuno

大学院工学研究院教授

専門分野:リサイクル工学、環境システム工学、化学工学、電気化学

1967年に兵庫県芦屋市に生まれる。東京大学工学部化学工学科卒業、東京大学大学院工学系研究科を修了し工学博士を取得。通商産業省工業技術院資源環境技術総合研究所、東京大学大学院工学研究科マテリアル工学専攻准教授を経て、2016年より現職。2013年より有機王水を用いた貴金属精錬プロセスの開発に着手し特許登録。本多記念会本多記念研究奨励賞、リサイクル技術開発本多賞などを受賞。

どのような研究内容か?

 松野研究室では、有機溶媒にハロゲン化銅等を溶解した「有機王水」と呼ぶ溶媒を用いた貴金属精錬技術の開発をしています。金(Au)は、イオン化傾向が最も小さい金属であり化学的に安定しています。有機王水を用いれば、そんな金を容易に溶解できるとともに、溶解した金を析出させ高純度で回収することができます。一言で言えば、金を簡単に回収(リサイクル)する技術を開発しています。(写真1 有機王水)

何の役に立つ研究なのか?

 携帯電話等の電気・電子機器には、金などの貴金属やレアメタルなどの様々な金属が使用されており、使用済み機器は「都市鉱山」と呼ばれています。(写真2 都市鉱山の例)2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは、携帯電話などの都市鉱山からメダルが作られたのは周知の事実です。今後も都市鉱山からこれらの金属の回収を強化することが重要な課題になっています。私の開発した有機王水を用いれば、容易な操作、低コストかつ環境調和型の貴金属回収プロセスを構築できる可能性があり、都市鉱山からの金属回収強化に貢献します。

今後の計画は?

 数年前までは国から研究費の支援を受けて研究開発していましたが、現在は企業と共同研究しており、実際に都市鉱山から金を抽出しています(写真3 小型家電から抽出された金)。コスト的に見合うようになれば社会実装が実現されます。精錬時の金の抽出率をあと少し改善するのが目下の課題であり、その方法を探求しています。

関連ウェブサイトへのリンクURL

松野研究室HP
http://matsuno-lab.tu.chiba-u.ac.jp/index.html

成果を客観的に示す論文や新聞等での掲載の紹介

・2018年2月19日、日経新聞朝刊9面【都市鉱山 金の採掘簡単 千葉大、廃液ほぼゼロに】にて本技術が紹介さました。
・【東京動画「トトトトーキョー」 トミック、金を抽出してみた!!】にて、当研究室の学生がユーチューバーのトミックさんと共に、都市鉱山から金を抽出する実験の一部始終が公開されています。
https://www.youtube.com/watch?v=MYk_7DVcnSY
・2017年10月2日にテレビ東京【未来世紀ジパング "ゴミ"それとも"資源"?意外と知らない世界のゴミ事情】に沸騰ナビゲーターとして出演し、都市鉱山について解説しました。

この研究の「強み」は?

 金は太古より人々に愛され、精錬技術も数多く開発されてきました。しかしながら、化学的に安定な金を溶解し精製するには、取扱いの難しい物質やプロセスを使わざるを得ないのが現状です。本技術は「中学生でもできる金の精錬方法」、つまり簡単な操作をウリにしています。また、発生する廃液を極力減らすことが可能と考えられるゆえ、環境調和型と言えます。(写真4 有機王水プロセス概略図)

学生や若手研究者へのメッセージ

 この研究を開始する前は、私は全く別分野の研究に携わっていました。たまたま、当時の同僚の有機合成での実験失敗の話からヒントを得て、この有機王水の研究を開始しました。当初は、寝食を忘れ実験室に籠り、金を溶解して析出(回収)する実験を繰返していました。また、有機溶媒中での電気化学に関する専門書を購入し、学生と共に輪読し勉強しました。新たなことに挑戦している時は、心身共に充実します。これが、我ら研究者の活力源ではないでしょうか。
 若人の皆さん、研究職は楽しいですよ。将来の選択肢に博士になることも考えてみてください。
 当研究室の見学は常時大歓迎です。

この研究の「強み」は?

 今の日本は超高齢化社会です。平均寿命と健康寿命の差は10年以上あり、医療・介護費が増大しています。「いつまでも健康である」ことは重要な課題と考えています。そこで、私生活においては50歳を過ぎたときから、アンチエイジングのための登山を実践しています。いつかその成果も報道されるようになるのが次の自分の目標です。(写真5 仙丈ケ岳にて)

写真2 都市鉱山の例

写真3 小型家電から抽出された金

写真4 有機王水プロセス概略図

写真5 仙丈ケ岳にて