特色ある研究活動の成果
Research

官民連携の推進および公共事業見直しに関する研究

官民連携の推進および公共事業見直しに関する研究

研究代表者
岡田 哲史

共同研究者
①松浦 健治郎、②マツウラケンジロウ、③MATSUURA KENJIRO、④大学院工学研究院、⑤准教授、⑥都市計画・地域計画
①伊藤 潤一、②イトウジュンイチ、③ITO JUNICHI、④大学院工学研究院、⑤助教、⑥建築デザイン
※ ①氏名、②フリガナ、③ローマ字表記、④所属部局名、⑤職名、⑥専門分野 

岡田 哲史

岡田 哲史

OKADA SATOSHI

大学院工学研究院准教授

専門分野:建築デザイン

コロンビア大学大学院(MSBD),早稲田大学大学院博士課程修了後,日本学術振興会特別研究員,文化庁芸術家在外研修員, コロンビア大学客員研究員等を経て,2006年千葉大学に着任。建築家,博士(工学),米日財団LPフェロー,トヨタ財団リサーチフェロー,ヴェネツィア建築大学(IUAV)客員教授他。約10年間の建築史家としての活動の後,建築家として活動を始める。受賞歴としては,デダロ・ミノッセ国際建築賞グランプリ(イタリア2006),ロシア国際建築賞グランプリ(ロシア2006),シカゴ・アテナエウム国際建築賞(アメリカ2007/2008/2016),アジアデザイン賞‐環境公共文化施設部門金賞(香港2009),ヴェルサイユ賞(フランス・ユネスコ2017),日本建築学会賞・技術(日本2007),グッドデザイン賞3件(日本産業デザイン振興会),新建築賞(新建築社),山梨県建築文化賞(山梨県2000/2005)等多数。海外の主要大学や研究機関でワークショップや招聘講演をおこなっているほか,ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展,主要都市を巡回する国際建築展への出展,国際建築賞の審査員,国際シンポジウムのパネリスト等活動範囲は広い。作品業績としては建築作品集に『SATOSHI OKADA』(Electa, Milano, 2009)を筆頭に国内外の映像や著書・雑誌に200件を超える作品掲載,研究業績としては著書に『ピラネージの世界』(丸善1993),『ピラネージとカンプス・マルティウス』(本の友社1993)ほか3冊,専門誌への論稿掲載多数ほか,近年では『カサベラ・ジャパン』論稿連載(18回)等がある。

どのような研究内容か?

 本研究は,大局的に言えば,国や地方自治体でこれまで実施されてきた公共建築事業の方法の見直しに取り組むものです。公共建築は,もっぱら「税金の無駄遣い」という理由から「ハコモノ」というレッテルを貼られ非難されてきました。しかしそれも上手に企画立案され設計されれば,市民の生活環境をより豊かなものにすることができるはずなのです。
 そこで本研究は,地方自治体の行政サービスを充足させる有力な手段のひとつとして「官民連携(PPP)」に注目し,千葉大学の所在地である千葉市との共同研究事業をとおして,これまでに官民連携導入に向けた方法論の具体化,公共建築事業に関する契約書の法的見直しを実施してきたほか,千葉市の海浜部に広がる都市公園の施設整備推進に向けグランドデザイン策定に向けたガイドラインの提案,さらにはその具体化に向けたヴィジョンの提供など,広範囲にわたり携わってきました。

何の役に立つ研究なのか?

国や地方自治体の財政が逼迫の度を深める今日,地方自治体の公共サービスを充足させることが難しくなってきています。これは私たちが調査研究の対象地とした千葉市のみならず,全国の地方自治体においても共通の問題であり,人口減少が進むわが国において今後も深刻化することが予想される社会問題です。本研究は,その問題を解決していくうえで重要な役割を果たすものと考えています。
 本研究が重視する「官民連携」とは,文字どおり,官と民がパートナーシップを組んで事業を行うことを意味します。民間が行政の事業に企画段階から参加することにより,民間の資本やアイデアを公共サービスに反映させ,地域に根ざした個性的で魅力的なまちづくりの実現に寄与するだけでなく,行政においては財政資金の効率的使用や行政そのものの効率化を可能にすることが期待されている。その方法の導入に向けての具体策を提示した本研究の成果は,千葉市のみならず,日本全国の地方自治体に対しても公共事業の進め方について一定のガイドラインを提供するものと考えます。
 さらに本研究は,従来の公共事業の在り方を見直す試みのひとつとして契約書そのものの見直しを提案し,法律分野の専門家を交えて実施しました。こうした試みの企画提案と実施実行は,「官」と「民」のあいだに介在できる「学」だからこそ可能であり,その意味でも本研究は重要な社会的役割を担うものと考えています。

今後の計画は?

 本研究は,スタートさせて間もない萌芽的研究です。これまで,官民連携の専門家のみならず,わが国において,よりよい社会の実現をめざし最前線で活躍されている各界の方々の協力や支援をいただき進めてきました。大学における研究事業とはいえ,本研究が取り扱う諸課題は実社会が抱える現在進行形の実学的問題です。今後も要請があれば,千葉市のみならず,他の自治体とも共同研究体制を築き諸課題の解決に取り組むと同時に,建築学の分野にとどまらず,法律や政治経済専門分野の方々とのネットワークをさらに拡大し,横断的かつ多角的な視点で対応可能な体制づくり,プラットフォームの構築を推進させたいと考えています。

この研究の「強み」は?

 本研究の意義は,わが国の地方自治体における公共事業の方法,さらには在り方そのものに見直しと是正を促すことにあります。今後,数々の自治体でますます難しくなることが予想される行政サービスをめぐる諸問題に対し,「まちづくり」や「施設づくり」を機軸として,多分野横断的に複合的かつ融合的な解決策の提案をおこなう本研究は,その重要性をますます増していくものと思われます。今後の日本社会において,かぎられた社会資本は費用対効果を最大限にできる事業にこそ使われるべきではないでしょうか。本研究の強みとは,そのあたりまえのことの実現に向け,他分野のエキスパートたちと領域横断型の組織を構成し,企画提案から実施まで携わっていくことにあると考えています。