特色ある研究活動の成果
Research

ボリュームディスプレイの開発

ボリュームディスプレイの開発

研究代表者
伊藤 智義
共同研究者
①下馬場 朋禄、②シモババ トモヨシ、③Shimobaba Tomoyoshi、④工学研究科、⑤准教授、⑥計算機科学,3次元映像,3次元計測
①角江 崇、②カクエ タカシ、③Kakue Takashi、④工学研究科、⑤助教、⑥光工学
※ ①氏名、②フリガナ、③ローマ字表記、④所属部局名、⑤職名、⑥専門分野

図1.6個の画像を内包した立体
(左)作製した12面体 (中央)6個の元画像 (右)6個の投影画像

伊藤 智義教授

伊藤 智義

Ito Tomoyoshi

千葉大学大学院工学研究科教授

専門分野:計算機科学,3次元映像,3次元計測

1989年東京大学教養学部基礎科学科第一卒,1992年同大学院総合文化研究科広域科学専攻博士課程中退,同年群馬大学助手,1994年助教授,1999年千葉大学助教授,2004年教授,2015年副理事併任.理論天文学を志し,天文学専用計算機GRAPEの開発により,1994年日本天文学会奨励賞.その後,専用計算機による3次元映像技術に研究を展開し,2007年日本光学会ホログラフィックディスプレイ研究会鈴木岡田賞,2010年市村学術賞,2012年科学技術分野の文部科学大臣表彰科学技術賞(研究部門)など.学生の育成に定評があり,2015年度日本学術振興会育志賞(博士学生),LSIデザインコンテスト本戦に第7回から13年連続出場し,うち優勝5回(修士学生),文部科学省サイエンスインカレに第2回から4年連続本戦出場(学部4年生)など.一方で,漫画原作者としても活躍.集英社ヤングジャンプ漫画大賞原作部門佳作(1984年),準入選(1985年)を経てデビューし,代表作に「栄光なき天才たち」など.近著として,2016年6月より少年チャンピオン誌上で「2030年,コンピュータ将棋に挑む」を短期集中連載中.

どのような研究内容か?

ボリュームディスプレイは「3次元映像を投影する映像装置」ではなく,「映像システムそのものが3次元」であるという意味で使っています.私たちの研究グループは「複数の2次元情報を内包するボリュームディスプレイ」のアルゴリズムを見出しました.これまでにも複数の画像を取り込んだアート作品は知られていましたが,枚数や画像に強い制約がありました.私たちが開発した手法では,内包する画像の枚数に制限がありません.図1は,クリスタル加工を用いて,正12面体の中に6個の2次元情報(画像)を内包し,6軸方向にそれぞれ異なる画像を投影させた例です.
続いて,この手法を映像として取り扱うために,電子制御による映像システムの試作を行いました.図2は発光ダイオード(LED)を512個(8×8×8)用いて構成したボリュームディスプレイです.また,図3は糸を表示媒体にしたボリュームディスプレイです.49本(7×7)の糸にプロジェクタから情報を投影しました.どちらも,正面と側面で違う動画を表示することに成功しています(正面A, B, C, ...: 側面 1, 2, 3, ...).

何の役に立つ研究なのか?

ボリュームディスプレイは3次元像をそのまま表示するという究極の3次元映像技術ですが,本研究手法はそれ以上の可能性を秘めています.いろいろな方向から異なった情報を見ることができるという特長に加えて,見える方向から外れると意味のある情報が読み取れないという特長があります.つまり,情報の投影に指向性を持たせることが可能になります.この特長を利用すると,例えば,図4のように必要とする人に必要な情報を個別に送ることができます.2020年に東京でオリンピックが開催されますが,そのような国際舞台では多言語に対応した情報伝達装置になり得る可能性を持っています.

今後の計画は?

電子制御は動画にとって有用ですが,3次元的に表示素子を組み上げていくボリュームディスプレイにとっては次の2点が難点となります.
(1) 配線数が膨大になること.
(2) 膨大な素子と配線数によって陰影が発生すること.
そこで注目したのが光制御です.近年,光を当てると様々な色に発光する蛍光材料の研究が進んでいます.実際に液晶ディスプレイの画質向上等に利用されています.本研究ではさらに進んで,既存の2次元ディスプレイを強化するためではなく,3次元のボリュームディスプレイの画素そのものに利用することを考えました.光制御の利点は配線の必要がないことです.そのため,電子制御では大きな問題になっている高密度化,陰影の抑制が期待できます.基礎的な検証として,紫外線を照射すると発光する材料を封入したキューブを512個(8×8×8)組み上げた試作を行いました(図5).上面(格子模様),正面(斜めライン),側面(混色:黄色)に異なる画像を表示することに成功しました. 現在は,光制御で動画化を可能にする研究にまで発展してきています.このような研究は前例がなく,新しいタイプの次世代3次元ディスプレイとして,産業界に大きなインパクトを与え,貢献できるものと期待しています.

関連ウェブサイトへのリンクURL

研究室ウェブサイト

成果を客観的に示す論文や新聞等での掲載の紹介

特許
[1] "立体画像を作成する方法", 特許第5645010号 (2012.4.26)
[2] "量子ドットディスプレイおよびそれを用いたディスプレイ表示方法", 特願2014-039972号 (2014.2.28)
[3] "三次元表示装置及びそれを用いた三次元表示方法", 特願2016-081583号 (2016.4.14)

論文
[1] "Three-Dimensional Volume Containing Multiple Two-Dimensional Information Patterns", Scientific Reports 3, Article No. 1931 (2013.6)
[2] "Design, Implementation and Characterization of a Quantum-Dot-Based Volumetric Display", Scientific Reports 5, Article No. 8472 (2015.2) 【Nature Japanの注目の論文に選出】
[3]"Image quality improvement for a 3D structure exhibiting multiple 2D patterns and its implementation", Optics Express, Vo.24, No.7, pp.7319-7327 (2016.4)

報道
[1] 日刊工業新聞 2011年6月3日19面, "千葉大など、同一空間に異なる複数画像を表示する技術開発" (2011.6.3)
[2] 日刊工業新聞 2013年9月12日1面, "見る位置で違う画像に-千葉大などディスプレー開発" (2013.9.12)
[3] テレビ東京2013年9月20日放送「ワールドビジネスサテライト」,トレンドたまご"立体ディスプレイ" (2013.9.12)
[4] 日刊工業新聞 2015年2月18日19面, "光を当てると各面に異なる画像を表示-千葉大、新原理の立体型ディスプレー開発" (2015.7.9)
[5] 日経産業新聞 2015年4月24日10面, "紫外線当て3D表示-千葉大など装置考案" (2015.7.9)

受賞
[1] 平成27年度 日本学術振興会育志賞(博士学生平山竜士:2016.3.1)
  注)平山竜士君は学部4年生から本研究に取り組んできた中心的な研究者の一人です.

図2.LEDによるボリュームディスプレイ

図3.糸を用いたボリュームディスプレイ

図4.ボリュームディスプレイによる多国語デジタルサイネージシステム

図5.光ナノ材料を用いたボリュームディスプレイ