特色ある研究活動の成果
Research

デザイン心理学を応用した千葉大学発ベンチャーによる社会貢献

デザイン心理学を応用した千葉大学発ベンチャーによる社会貢献

デザイン情報誌『AXIS』(株式会社アクシス刊)2016年4月180号

日比野 治雄教授

日比野 治雄

Hibino Haruo

千葉大学大学院工学研究科教授

専門分野:デザイン心理学

1982年東京大学文学部心理学科卒,1990年,Ph.D.取得(カナダ・ヨーク大学)。2000年より現職。認定心理士。元々の専門である実験心理学の知見を生かし,人間の心理を考慮した科学的な視点からのデザインを実現することを目的に,2009年に(株)BB STONEデザイン心理学研究所を起ち上げた。同研究所は2011年3月には工学系で最初の『千葉大学発ベンチャー』(第6号)の称号を獲得し,その技術顧問としても活動をしている。1993年日本心理学会研究奨励賞,2006年第47回科学技術映像祭・文部科学大臣賞, 2011年千葉大学工学部地域・社会貢献賞,2012年グッドデザイン賞,2013年国際ユニヴァーサルデザイン協議会IAUDアウォード(プロダクトデザイン部門),2014年日本パッケージングコンテスト「医薬品・医療用具包装部門賞」受賞等。

どのような研究内容か?

近年のデザイン界においては,科学的根拠に基づいたデザイン(evidence-based design)が世界的な潮流となっているため,多くの企業は科学的根拠に基づいたデザインの実現を目指しています。しかし,現在までのところ,そのような企業のデザインは,企業内のデザイナーか外部のデザイナーが行うことが一般的ですが,そのようなデザイナーの場合は,感性的なデザインには長じていても,客観的で科学的な視点に乏しいという大きな問題点があるのです。それに対して,当ベンチャーの手法は千葉大学デザイン心理学研究室の知的財産(特許)を基礎にした客観的で科学的な視点からデザインの数値化を可能とする技術であり,デザインにおける様々な問題を明確な判断基準を提示しながら解決するのに極めて有効なのです。そこで,科学的根拠に基づいたデザイン(evidence-based design)の実現を目指す多くの企業のデザイン活動に様々な形で協力するという新規性と独創性を有するサービスを提供するための活動を行っているのです。

何の役に立つ研究なのか?

実際の企業が抱えるデザインに関する様々な問題の解決に,上記の当デザイン心理学研究室の知財(特許)を応用する方法は一通りではありません。それぞれの問題を的確に理解し,その解決方法を適切に探ることが必須事項となるのです。そして,それを行うためには当デザイン心理学研究室で培われてきたノウハウに基づいた方法を,それぞれの問題の解決に適するように設定して検証を行うことが求められます。それが,当ベンチャーの行っているデザイン・コンサルティング・サービスなのです。具体的な内容は,実験心理学や計量心理学の知見をベースに,デザインにおける諸属性(見やすさ,使いやすさ,感性等々)を数値化し,デザインに科学的裏付けを提供するというものであり,そこに新規性と独創性があるのです。そのため,多くの大企業との協業を行い様々な成果をあげ,メディアにも数多く取りあげられています(下記「成果を客観的に示す論文や新聞等での掲載の紹介」参照)。

今後の計画は?

今後もデザイン心理学の有効性を広く社会に知ってもらう努力を続けるとともに,今までと同様に様々な企業に協力し,その成果を製品化につなげるように努めたいと考えている。そのような意味での第一歩として,デザイン心理学会を設立し,デザイン関係だけに留まらない多様な領域の多くの方々にデザイン心理学の考え方を伝えて行きたい。

成果を客観的に示す論文や新聞等での掲載の紹介

これまでに多数のメディアで,千葉大学発ベンチャー(株)BB STONEデザイン心理学研究所に関する記事等が掲載されているが,最近のものは下記の通りである:
・デザイン情報誌『AXIS』(株式会社アクシス刊)2016年4月180号,pp. 94-97,「デザイン,心理学,認知科学の接点」:科学的根拠に基づいたデザイン(evidence-based design)の重要性という観点から,デザイン心理学の有効性および可能性について好意的に記述してくれています。
・『日経ビジネス』2012年10月8日号,「日本を救う次世代ベンチャー100」:この記事では,100社のベンチャーの中で,トップの見開き2ページで,やはりデザイン心理学について好意的に記述してくれています。
・『日本経済新聞』2012年4月25日,「障害者が判別しやすい紙幣 千葉大発VBが研究 国から受託」:当ベンチャーが国立印刷局からの委託を受けて行う日本銀行券の券種の判別性に関する調査・研究の受託業務についての記事。

この研究の「強み」は?

デザインの問題には必ず「人間」の問題が関わっています。なぜならデザインを創造するのもそれを使うのも「人間」だからです。デザイン心理学は,その「人間」を科学的に扱うことに長けた実験心理学を基盤としているので,デザインを「人間」という観点から科学的に探求して行くのに最適なのです。それがデザイン心理学の強みです。

研究への意気込みは?

上記の「強み」を十分に生かし,デザイン心理学の観点から,これからも色々な領域に貢献できるよう研究に邁進したいと思っています。

学生や若手研究者へのメッセージ

デザイン心理学は,デザインの領域の中でも比較的新しい分野ですが,その重要性は日に日に増しています。日本のデザインをより良くするために,デザイン心理学の分野から社会に貢献できるように一緒に頑張りましょう!

その他

デザインの領域では,幅広い知識や教養が必要となります。大学に入学してからも,あまり自分の興味を狭くせずに,好奇心の赴くままに広く学ぶ(勉強だけではなく,もちろん趣味も含みます)という姿勢が大事だと思います。