特色ある研究活動の成果
Research

人工光型植物工場におけるシソの薬用成分-光強度と培養液濃度の違いによる影響

人工光型植物工場におけるシソの薬用成分-光強度と培養液濃度の違いによる影響

研究代表者:魯 娜
共同研究者:
①氏名、②フリガナ、③ローマ字表記、④所属部局名、⑤職名、⑥専門分野
①加川 夏子、②カガワ ナツコ、③Kagawa Natsuko、④環境健康フィールド科学センター、⑤講師、⑥植物化学
①高垣 美智子、②タカガキ ミチコ、③Takagaki Michiko、④千葉大学国際教養学部、⑤教授、⑥熱帯農学

図1 人工光型植物工場におけるシソの栽培および処理条件(EC=電気伝導度(培養液濃度))

魯 娜

魯 娜

Lu Na

環境健康フィールド科学センター特任助教

専門分野:施設園芸学、植物生理学

2006年 中国農業大学 卒業
2008年 中国農業大学 農業生物環境与能源工程学 修士課程 修了
2012年 千葉大学大学院 園芸学研究科 博士後期課程 修了(農学博士)
2012年 Philips (株式会社) プラントスペシャリスト (アジア担当)
2014年 千葉大学環境健康フィールド科学センター特任助教として着任

どのような研究内容か?

 薬草を含む多くの植物は、人に対して薬用効果を持つことが知られています。例えば冷奴や刺身、梅干しに使われるシソには、解熱や鎮静などの効用があり,その精油成分でありペリルアルデヒドには中枢神経抑制,抗鬱および抗アレルギー作用があることが報告されています。抗アレルギー作用や抗アルツハイマー病効果をもつロスマリン酸も含まれており、シソを食べると、アレルギー症状が軽減し、認知症を予防できるかもしれません。しかし、ペリルアルデヒドやロスマリン酸の含量は、栽培された場所や収穫された時期によって変化し、意図的に増やすことはできませんでした。
 本研究では,人工光型植物工場でシソを栽培し、栽培光強度と培養液濃度の違いがシソの生育および成分含有量に及ぼす効果を明らかにしました。
 結論として、人工光型植物工場のような高度な環境制御が可能な条件下において、①光強度と培養液濃度を管理することにより、シソの生長率を高め、かつ薬用成分の含有率を維持できること、さらに、②養分不足・高光強度下において、アオジソとアカジソのロスマリン酸含有量が顕著に増加することを見出しました。栽培種環境因子の組合せにより、植物生合成・蓄積機構を選択的に活性化させ、目的とする二次代謝物を増量することができる可能性を示しました。

何の役に立つ研究なのか?

 現在、漢方の原料生薬のほとんどは輸入に依存しており、国内生産が重要な課題になっています。人工光型植物工場では、作物栽培にとって最適な栽培環境を自由にコントロールすることができます。そこで植物生長に影響を及ぼす環境因子を理解し、高い生産性を維持したまま薬用成分等を多く含む高付加価値作物を栽培することが可能であり、国内生産に繋がります。

今後の計画は?

 天然由来の植物成分は、食品、医薬品、化粧品等で需要が高く、今後は高品質な機能性ハーブや薬用植物の人工光型植物工場での栽培生産技術を開発します。特に紫外線照射による植物の二次代謝産物に着目して研究を進めていきます。

関連ウェブサイトへのリンクURL

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpls.2017.00708/full

成果を客観的に示す論文や新聞等での掲載の紹介

論文:N. Lu, E. L. Bernardo, C. Tippayadarapanich, M. Takagaki, N. Kagawa, W. Yamori. 2017. Growth and Accumulation of Secondary Metabolites in Perilla as Affected by Photosynthetic Photon Flux Density and Electrical Conductivity of the Nutrient Solution. Front Plant Sci. doi:10.3389/fpls.2017.00708
新聞:朝日新聞(2017年6月7日)、柏市民新聞(2017年6月9日)、東京新聞(2017年7月7日)

この研究の「強み」は?

 人工光型植物工場において環境要因を最適化することにより、高収量、無農薬、高品質の植物栽培が可能となることです。
 人工光型植物工場は、光、温湿度、二酸化炭素濃度、水分、肥料成分などの植物の生育に必要な要素を計画的に自動制御することにより、出荷のサイクルを短くし、かつ収穫量の増大が期待できる未来型農業です。畑での栽培と比べて最大のメリットは、①閉鎖型施設内で栽培するため、天候に左右されずに安定供給できること、②農薬を使う必要がないこと、③高い栄養価の高付加価値作物を生産できることです。生産場所、天候に左右されず、安全安心で健康に良い成分が多い生薬や食料を生産できます。

研究への意気込みは?

 世界に向けた研究発信を継続したいと思います。

学生や若手研究者へのメッセージ

 新しいことを明らかにする点に研究の面白みを感じています。今後も、高いモチベーションをもって研究を続いていきたいと思います。

図2 光強度および培養液濃度の違いによるシソ成長量の変化(*統計的に有意な差がある)

図3 光強度および培養液濃度の違いによるペリルアルデヒド含有量の蓄積変化

図4 光強度および培養液濃度の違いによるロスマリン酸含有量の変化