特色ある研究活動の成果
Research

森林セラピーが高血圧者にもたらす血圧低下とその継続効果

森林セラピーが高血圧者にもたらす血圧低下とその継続効果

研究代表者
宋 チョロン

共同研究者
①池井 晴美、②イケイ ハルミ、③Ikei Harumi、④園芸学研究科、(国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所、⑤博士後期課程、研究員、⑥自然セラピー学、環境健康学
①宮崎 良文、②ミヤザキ ヨシフミ、③Miyazaki Yoshifumi、④環境健康フィールド科学センター、⑤教授、⑥自然セラピー学、生理人類学
※ ①氏名、②フリガナ、③ローマ字表記、④所属部局名、⑤職名、⑥専門分野 

写真1.森林セラピープログラムの風景

宋 チョロン特任助教

宋 チョロン

Song Chorong

環境健康フィールド科学センター特任助教

専門分野:自然セラピー学、環境健康学

2010年 韓国忠南大学校 卒業
2012年 千葉大学大学院 園芸学研究科 博士前期課程 修了
2015年 千葉大学大学院 園芸学研究科 博士後期課程 修了(農学博士)
2015年 千葉大学環境健康フィールド科学センター特任助教として着任

どのような研究内容か?

 近年、森林環境との触れ合いが人にもたらす生理的リラックス効果が明らかになりつつあり、森林セラピーの健康増進効果に対する期待が高まっています。しかし、これまでの研究においては、主に20代の健常者を中心に調べており、高齢者やストレス関連疾患者を対象とした研究は極めて少ないのが現状です。そこで、本研究においては、中年期から高年期の高血圧者に対する森林セラピーの生理的効果を調べました。
 男性高血圧者を対象として、10時から15時まで森林セラピープログラムを実施したところ(写真1)、最高血圧は140.1mmHgから123.9mmHg、最低血圧は84.4mmHgから76.6mmHgに低下しました(図1)。また、高血圧者を対象とした別実験において、リラックス時に高まる副交感神経活動が上昇し、心拍数が減少することも明らかになりました(図2,3)。
 さらに、血圧の高い社会人を対象とし、1泊2日の森林セラピープログラムがもたらす生理的効果とその継続性について調べました。その結果、最高血圧においては、参加3日前(132.7 mmHg)に比べ、森林セラピーによって低下し(117.0 mmHg)、その低下が3~5日間継続 (124.6 mmHg)することがわかりました(図4)。この血圧低下の継続は、本研究によって初めてわかったのです。
 結論として、森林セラピーは、高血圧者に対して血圧低下効果をもたらし、その低下効果は3~5日間継続することが明らかになりました。

何の役に立つ研究なのか?

森林セラピーは、現在のストレス社会において、生理的リラックス状態をもたらし、低下していた免疫機能を改善し、病気になりにくい体を作るという予防医学的効果に基づいた概念です。高血圧者に参加してもらった研究例は、ほとんどありません。本研究は高血圧者の血圧が低下し、その効果が3~5日間継続することを明らかにした初めての実験例であり、予防医学的効果を持つ森林セラピーの普及に大きな意味を持ちます。

今後の計画は?

 今後は、車椅子使用者、高齢リハビリ患者、軽度うつ病患者等の方々を対象として、森林セラピーがもたらす生理的リラックス効果に関するデータを蓄積し、森林セラピーが持っている予防医学的効果を明らかにしていきます。また、対象範囲を公園や花き等に広げ、「自然セラピー」がもたらす効果も解明します。

成果を客観的に示す論文や新聞等での掲載の紹介

 森林セラピーの研究成果に関して、以下に記します。
 論文としては、森林セラピーの生理的効果について29報(インパクトファクター誌)、高血圧者に関しては3報を掲載しています。新聞においては、ウォールストリートジャーナル、ニューヨークタイムズ、ワシントンポスト、カナダグローブアンドメール紙、ブラジルグローボ紙等の海外23紙で紹介され、テレビにおいては、アルジャジーラチャンネル、カナダ国営放送CBC、ブラジルレコードテレビ、ブラジルグローボ、韓国KBS等、海外で10回、国内では139回の放映がされています。雑誌に関しては、タイム誌、ナショナルジオグラフィック誌、カントリーファイル(イギリスBBC発行誌)等、海外20誌で紹介されています。

この研究の「強み」は?

 森林セラピーは、「森林」を対象とした研究と「人」を対象とした研究が融合されて成り立つ研究分野です。しかし、日本においても、世界においても、この両分野の融合はなされていないのが現状です。我々の研究室では両方の視点から研究を進めており、その点に「Only one」としての「強み」があります。

研究への意気込みは?

 今後、森林セラピーをはじめとした「自然セラピー」がもたらす生理的リラックス効果ならびに生体調整効果に関する更なるデータ蓄積を行い、「自然セラピー」が持っている予防医学的効果を明らかにしていきます。この予防医学的効果の解明により、自然セラピーが持つ医療費の削減効果に言及したいと考えています。

学生や若手研究者へのメッセージ

 日本を越えて、世界をターゲットにした研究を行いたいと思っています。

図1. 森林セラピープログラムによる血圧の低下

図2. 森林歩行よる副交感神経活動の上昇

図3. 森林座観による心拍数の減少

図4. 森林セラピープログラムによる血圧の低下とその継続効果