特色ある研究活動の成果
Research

森林セラピー効果とその個人差

森林セラピー効果とその個人差

研究代表者
宋 チョロン

共同研究者
①宮崎 良文、②ミヤザキ ヨシフミ、③Miyazaki Yoshifumi、④環境健康フィールド科学センター、⑤教授、⑥自然セラピー学、生理人類学
※ ①氏名、②フリガナ、③ローマ字表記、④所属部局名、⑤職名、⑥専門分野 

図1.フィールド実験測定風景

宋 チョロン特任助教

宋 チョロン

Song Chorong

千葉大学環境健康フィールド科学センター特任助教

専門分野:自然セラピー学、環境健康学

2010年 韓国忠南大学校 卒業
2012年 千葉大学大学院 園芸学研究科 博士前期課程 修了
2015年 千葉大学大学院 園芸学研究科 博士後期課程 修了(農学博士)
2015年 千葉大学環境健康フィールド科学センター特任助教として着任

どのような研究内容か?

本研究においては、1)森林セラピーがもたらす生理的リラックス効果を調べ、さらに、2)そこに生じる「個人差」が単なるバラツキではなく、「生体調整効果」を持つことを明らかにしました。 森林等の自然由来の刺激が快適感をもたらすことは経験的に知られていますが、その評価はアンケート等に限られており、生理指標を用いた科学的データ蓄積は非常に少ないという現状でした。しかし、最近の生理的評価法の進歩に伴って、新たな知見が得られはじめています。(図1,3)
我々は、森林中で歩行したり、その景色を眺めたりすることによって(図1,2)、①ストレスホルモン濃度が低下し、②脳前頭前野活動が鎮静化し、③リラックス時に高まる副交感神経活動が高まり、ストレス時に高まる交感神経活動が低下し、④血圧や脈拍数が低下することを示し、森林がもたらす生理的リラックス効果を明らかにしました(図4)。 一方、それらのデータには大きな個人差があることがわかりました。例えば、血圧や脈拍数は、森林歩行によって都市歩行に比べ、平均的には低下しますが、上昇する人もいました。そこで、その人が元々持っている値との関係を調べたところ、血圧ならびに脈拍数の高い人は低下し、低い人は上昇し、適正値に近づいたのです。つまり、森林は生体を適正な状態に近づけるという生体調整効果を持つことが明らかになりました。都市歩行においては、その効果はありません。 結論として、森林セラピーは、1)生理的リラックス効果をもたらすこと、ならびに2)生体調整効果を持つことを解明しました(図5)。

何の役に立つ研究なのか?

森林セラピーは、生理的リラックス効果ならびに生体調整効果を持ち、予防医学的観点から医療費の削減に寄与する可能性があると考えています。
森林セラピーは、現在のストレス社会において、生理的リラックス状態をもたらし、低下していた免疫機能を改善し、病気になりにくい体を作るという予防医学的効果に基づいた概念です。森林セラピー効果の解明と利用の促進は、ストレス社会において大きな意味を持ち、国民の健康増進に寄与すると期待しています。
また、本来、個人差は科学の世界では嫌われものでしたが、単なるバラツキではなく、生体調整効果を持つことが明らかになり、個人差研究に新たな視点を付与したと考えています。

今後の計画は?

今後は、高齢者を含めた未病状態の方々を対象とした森林セラピー効果を明らかにするとともに、個人差の持つ生体調整効果についてデータ蓄積することによって検証します。また、対象範囲を花きや公園等に広げ、「自然セラピー」がもたらす効果を解明します。
実学である本研究において、社会実装できる成果を上げ、その成果を世界に発信することを目指します。

関連ウェブサイトへのリンクURL

自然セラピー研究室
INFOM
森林セラピー総合サイト

成果を客観的に示す論文や新聞等での掲載の紹介

論文等に関して、森林セラピーの生理的リラックス効果についてはインパクトファクター誌12報に掲載され、生体調整効果については2015年に掲載されました(関連論文はこちら)
新聞においては、ワシントンポスト、ニューヨークタイムズ、グローブアンドメール(カナダ最大紙)、グローボ(ブラジル最大紙)等の海外18紙で紹介され、テレビにおいては、アルジャジーラチャンネル、カナダ国営放送CBC、ブラジル国営放送グローボ、韓国KBS等、海外にて8回放映されています。2016年1月にはナショナルジオグラフィック誌で紹介されました(関連新聞・TVはこちら)

この研究の「強み」は?

森林セラピーは、「森林」を対象とした研究と「人」を対象とした研究が融合されて成り立つ研究分野です。しかし、日本においても、世界においても、この両分野の融合はなされていないのが現状です。我々の研究室では両方の視点から研究を進めており、その点に「Only one」としての「強み」があります。

研究への意気込みは?

今後、森林セラピーをはじめとした「自然セラピー」がもたらす生理的リラックス効果ならびに生体調整効果に関するデータを蓄積し、「自然セラピー」が持っている予防医学的効果を明らかにしていきます。さらに、医療費の削減効果に言及できるように研究に励みたいと考えております。

図2.フィールド実験風景

図3.室内実験測定風景

図4.森林セラピーの生理的リラックス効果

図5.森林セラピーの生体調整効果