特色ある研究活動の成果
Research

屋上緑化がもたらす環境改善と環境負荷

屋上緑化がもたらす環境改善と環境負荷

研究代表者黑沼 尊紀

共同研究者①氏名、②フリガナ、③ローマ字表記、④所属部局名、⑤職名、⑥専門分野
①渡辺 均②ワタナベ ヒトシ、③Watanabe Hitoshi、④環境健康フィールド科学センター・大学院園芸学研究科、⑤准教授、⑥花卉園芸学

図1 屋上緑化芝地 (調査対象地)

黑沼 尊紀准教授

黑沼 尊紀

Kuronuma Takanori

環境健康フィールド科学センター助教

専門分野:花卉園芸学

2016年 千葉大学園芸学研究科博士後期課程 修了(農学博士)
2017年10月より 千葉大学環境健康フィールド科学センター テニュアトラック助教
ASHS Ornamental Publication Award 2016 受賞

どのような研究内容か?

 屋上緑化は、環境によい技術として、世界中で施工されています。日本でも条例が制定され、平成26年時点の屋上緑化面積は、平成12年に比べ36倍に増加しています。しかし、屋上緑化は、環境改善効果に関する多くのデータが蓄積している反面、環境負荷についての研究報告は少ないのが現状です。そこで、本研究では二酸化炭素を指標として、屋上緑化がもたらす環境改善と環境負荷を定量化し、その関係を明らかにしました。

1) 屋上緑化による環境改善:二酸化炭素削減
屋上緑化は、植物の二酸化炭素固定によって大気中の二酸化炭素量を減少させています。また、断熱効果を有するため、冷暖房の使用量が減少し、二酸化炭素の発生が抑制されています。これら2つの効果について、それぞれ分析しました。

2) 屋上緑化による環境負荷:二酸化炭素排出
屋上緑化には、軽量土壌やプラスティック製品などの工業製品が利用されており、これらの製品を製造する際に二酸化炭素が発生します。そこで、環境経済学の手法を用いて、屋上緑化を施工することによる二酸化炭素排出量を算出しました。

3) 屋上緑化による二酸化炭素削減が排出を上回るまで
屋上緑化は製造時に二酸化炭素を排出するため、施工した時点では環境にマイナスの影響を及ぼします。しかし、施工後は二酸化炭素を減少させ、約11年で二酸化炭素削減量が排出量を上回ることが明らかになりました。一方、屋上緑化の一般的な製品寿命は40~50年とされています。以上のことから、屋上緑化は二酸化炭素削減に貢献することが示されました。

何の役に立つ研究なのか?

 本研究によって、屋上緑化がもたらす環境改善と環境負荷がそれぞれ定量化され、これらの関係について科学的なデータを提供することが出来ました。さらに、本研究は、屋上緑化が11年目以降、二酸化炭素削減に貢献することを世界で初めて解明しました。
 屋上緑化は、環境改善ならびに快適性の向上など、多くのプラスの効果が注目されてきました。しかし、環境への影響を十分に評価するためには、環境改善だけではなく、環境負荷にも着目し、その関係を明らかにしていく必要があります。本研究アプローチは、他の緑化技術の環境への影響を評価する際にも、有効な手段となります。

今後の計画は?

 本研究では、日本の一般的な屋上緑化を想定した実験を実施しました。今後は、世界で用いられている屋上緑化システムや植栽植物について研究を進めたいと考えています。また、環境負荷は、製品の製造時にのみ発生するのではなく、輸送や廃棄の過程においても発生しますので、輸送や廃棄の過程を含めた解析も行う必要があります。

成果を客観的に示す論文や新聞等での掲載の紹介

原著論文
Kuronuma T., Watanabe H., Ishihara T., Kou D., Toushima K., Ando M., and Shindo S. (2018) CO2
Payoff of Extensive Green Roofs with Different Vegetation Species. Sustainability, 10(7), 2256;
https://doi.org/10.3390/su10072256

招待講演
黒沼尊紀,渡辺均.2016.屋上緑化における主要植栽植物のCO2固定能及びPayback Timeの算出.
公益財団法人都市緑化機構 平成28年度 特殊緑化に関する研究者発表会,第9-12頁

この研究の「強み」は?

 園芸学と環境経済学の知見を統合し、学際的な研究を進めました。それにより、新たな視点で緑化技術の環境への影響を評価することが出来ました。

研究への意気込みは?

 社会に存在する課題を自分自身で見つけ出し、一つ一つ丁寧に実証していくことは、私にとって、非常に刺激的でやりがいのある仕事です。引き続き精いっぱい頑張ります!

図2 屋上緑化で広く利用されているパーライト系人工軽量土壌。
これらの製品を製造する際に、環境負荷が発生する。

図3 施工後経過年数0年(左)と10年(右)の屋上緑化土壌基盤断面の様子。
植物の二酸化炭素固定によって、経年的に有機物が蓄積し、土壌厚が増加している。