特色ある研究活動の成果
Research

希少難病「POEMS症候群」に対するサリドマイド治療:世界初のランダム化臨床試験

希少難病「POEMS症候群」に対するサリドマイド治療:世界初のランダム化臨床試験

POEMS症候群(Crow-Fukase症候群)

桑原 聡教授

桑原 聡

Kuwabara Satoshi

大学院医学研究院教授

専門分野:臨床神経学、神経免疫学

1984年 千葉大学医学部卒業
1999年 Prince of Wales Medical Research Institute(シドニー)研究員
2008年 千葉大学教授

どのような研究内容か?

 POEMS症候群(クロウ・深瀬症候群)はリンパ球の一種である形質細胞の増殖に伴い、血管内皮増殖因子(VEGF)という蛋白が異常産生されて全身の臓器障害を来す希少疾患です。VEGFは全身の血管の増殖と血管透過性亢進(血管内から水分が漏れやすくなる)などの作用を持つ蛋白であることから、過剰産生されると全身の浮腫、胸水(肺に水が貯まる)、多発神経炎(手足のしびれと筋力低下)、皮膚症状(血管腫、剛毛)など様々な症状がみられます。全国患者数300-500名の稀な疾患です。
 急速に進行、重症化することが多く、治療法の確立が急がれていましたが、患者の少なさゆえに臨床試験の実施は困難とされてきました。同症候群の研究・治療に取り組む千葉大学病院神経内科の研究グループはこのほど、POEMS症候群においてサリドマイドの有効性を示す世界初の多施設共同二重盲検プラセボ対照のランダム化比較試験を2015年に完遂しました。
 サリドマイドは1959年に睡眠薬・安定剤として発売された薬剤ですが、妊婦が服用した場合に催奇性が問題となり販売中止になりました。しかしその後VEGFなどの蛋白の産生を抑制する作用が認められ、再び製造されるようになりました。治療薬の有効性を示すためには、実薬と偽薬(プラセボ)を無作為に割り付け(ランダム化)、医師・患者ともどちらを服用しているかを知らされない(二重盲検)臨床試験が必要です。これは二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験と呼ばれます。

何の役に立つ研究なのか?

 POEMS症候群は適切な治療がなされない場合には平均生存期間が33か月と非常に重篤な疾患でした。サリドマイド療法は形質細胞の増殖とVEGFの産生を抑制することがこの臨床試験により初めて証明されました。

今後の計画は?

 今後、全国の患者さんにこの治療が行えるように薬事法の承認申請(承認されると保険適応となり全国で処方できます)を目指しています。

関連ウェブサイトへのリンクURL

千葉大学大学院医学研究院神経内科学

成果を客観的に示す論文や新聞等での掲載の紹介

Lancet Neurology 2016年10月号に論文掲載
NHK総合 ニュース845 クロウ・深瀬症候群におけるサリドマイドの有効性 2016年8月5日放映

この研究の「強み」は?

 この疾患に対する世界初のランダム化群間比較であり、この結果をもって薬事法の承認(保険適応)を予定しています。千葉大学から世界に向けて発信する新規治療法です。

研究への意気込みは?

 千葉大学から世界に向けて発信できる新しい治療法の開発をさらに続けていきます。

学生や若手研究者へのメッセージ

 常に新しいことに挑戦しましょう。未だに治療法が確立されていない病気はまだたくさんあります。医学・薬学系研究者は新しい治療を開発して、臨床試験で証明し、世界に発信しましょう。

その他

 本研究にご協力いただいた全国の多施設共同治験参加施設と、参加してくれた患者さん・ご家族に深謝いたします。

試験結果 サリドマイドはVEGFを39%減少させ、症状を改善