特色ある研究活動の成果
Research

心不全の新しいメカニズムを解明

心不全の新しいメカニズムを解明

研究代表者:真鍋 一郎
共同研究者:
①氏名、②フリガナ、③ローマ字表記、④所属部局名、⑤職名
①藤生克仁、②フジウカツヒト、③Fujiu Katsuhito、④東京大学大学院医学系研究科、⑤特任助教
①永井良三、②ナガイリョウゾウ、③Nagai Ryozo、④自治医科大学、⑤学長

図1 心臓を守る心臓-脳-腎臓のネットワーク

真鍋 一郎教授

真鍋 一郎

Manabe Ichiro

大学院医学研究院教授

専門分野:疾患生物学、循環器内科学

1990年鳥取大学医学部卒
1992年東京大学医学部第三内科にて血管の分子生物学研究を開始
1997年米国ヴァージニア大学留学
2001年東京大学大学院医学研究院循環器内科
2016年より現職

どのような研究内容か?

 現在、心不全が急速に増えています。心不全は、心臓の働きが不十分な状態で、息切れがしたり、体があまり動かせなくなったりします。重症の場合は入院治療が必要になります。心臓病の死因の中でも心不全は増加し続けています。また、高齢化とともに腎臓の病気や糖尿病など、他の生活習慣病を同時に持っている人が増えています。例えば腎臓病は心不全を増やすこと、逆に心不全は腎臓病を悪くすることが分かっています。このように、心不全自体が増えていること、さらにいろいろな生活習慣病が影響し合って病気が悪くなることが大きな問題となっています。ところが、心不全がどうやって進むのか、そのメカニズムは十分に分かっておらず、心臓や腎臓が影響し合うメカニズムについては研究が始まったばかりです。現在急速に増えている心不全を中心とした病気に対処するためには、そのメカニズムを理解して、新たな薬を作ることが必要です。
 今回の研究では、心臓に与えられたストレスに対して、心臓と脳と腎臓が連携して働くことによって心臓を守っていることを明らかにしました。心臓と脳と腎臓は、神経やGM-CSFという血液の中を流れるたんぱく質によって一緒に働きます。また、心臓においては、免疫細胞の一種であるマクロファージがアンフィレグリンというたんぱく質を作って心臓を守っています。このように、心臓は、心臓だけでなく、腎臓や神経、免疫といったいろいろな臓器や機能が協同して働くことによって守られています。腎臓が悪くなると、この連携のメカニズムがうまく働かなくなり、心不全を起こしやすいと考えられます。

何の役に立つ研究なのか?

 今回の研究成果は、心臓と腎臓の新しいつながり方(連携メカニズム)を明らかにしました。また、マクロファージが心臓を守る大事な細胞であることを明らかにしました。今回見つけたたんぱく質や、神経の働きは、新しい心不全の薬を作る時に、重要な薬を作用させる標的になります。また、心不全や腎臓病の患者さんで今回見つけた臓器の連携機能がどのように障害されているかを調べることによって、あたらしい診断法の開発にもつながります。

今後の計画は?

 心不全や腎臓病が増えている大きな原因は高齢化です。加齢によって今回見つけた臓器連携の機能がどのように変わっているのか、また、マクロファージや神経の働きがどう変わっているかを調べることによって、高齢者で何故このような病気が増えるのか、明らかにできると考えています。また、さらに詳細なメカニズムを調べることによって、さらに新しい薬の標的が見つかると考えています。

関連ウェブサイトへのリンクURL

http://plaza.umin.ac.jp/manabe
千葉大学プレスリリース

成果を客観的に示す論文や新聞等での掲載の紹介

Fujiu K, Shibata M, Nakayama Y, Ogata F, Matsumoto S, Noshita K, Iwami S, Nakae S, Komuro I, Nagai R, Manabe I. A heart-brain-kidney network controls adaptation to cardiac stress through tissue macrophage activation. Nature Medicine 23:611-622, 2017.

この研究の「強み」は?

 いろいろな細胞や、いろいろな臓器の間の働き合いを研究することによって、全く新しいメカニズムを明らかにすることができました。また、今回見つけたメカニズムは、今増えている心不全を理解する大きな助けになります。

学生や若手研究者へのメッセージ

 医学や生物学には未解決の問題が無数に残されています。今回の研究は、心不全を、臓器や細胞の間の相互作用という少し違った視点からみることによって、新しい発見につながりました。現在、実験の技術やコンピュータを使った解析技術が急速に進んでいます。今は、このようなテクノロジーの急速な進歩によって医学研究が大きく変わる潮目にあると思います。若い研究者や学生の皆さんには、新しいテクノロジーを積極的に取り入れ、すぐに結果が予想できるような課題ではなく、難しくても本質的な問題に取り組んで、科学を前に進めることに取り組んで欲しいと思います。また、そのような若手研究者をできるだけサポートしていきたいと考えています。私たちの研究に興味があったら、いつでもメールでご連絡下さい。
manabe-tky(アットマーク)umin.ac.jp

図2 マクロファージが作るアンフィレグリンは心臓を守る