特色ある研究活動の成果
Research

離床希望検知センサの研究開発 ― 臨床で本当に使用できる拘束しない離床センサ ―

離床希望検知センサの研究開発 ― 臨床で本当に使用できる拘束しない離床センサ ―

①氏名、②フリガナ、③ローマ字表記、④所属部局名、⑤職名、⑥専門分野
①酒井 郁子、②サカイ イクコ、③Sakai Ikuko、④看護学研究科 ケア施設看護システム管理学専門領域、⑤教授、⑥老年看護学、専門職連携学
①磯野 史朗、②イソノ シロウ、③Isono Shiroh、④医学研究院 麻酔科学専門領域、⑤教授、⑥麻酔科学、呼吸生理学、睡眠学
①菅原 久純、②スガワラ ヒサヨシ、③Sugawara Hisayoshi、④看護学研究科 生体看護学専門領域、⑤大学院生(博士前期課程)、⑥生理学、睡眠解析
①松島 絵里奈、②マツシマ エリナ、③Matsushima Erina、④看護学研究科 生体看護学専門領域、⑤大学院生(博士前期課程)、⑥臨床看護
①西村 利明、②ニシムラ トシアキ、③Nishimura Toshiaki、④ミネベアミツミ株式会社
①能登 雅俊、②ノト マサトシ、③Noto Masatoshi、④ミネベアミツミ株式会社
①飯田 徳仁、②イイダ ノリヒト、③Iida Norihito、④ミネベアミツミ株式会社

図1 ベッドに配置した高性能ロードセル
ベッドの4点の脚の下に、高性能ロードセルという重さを計測する機械を取り付け、各脚にかかる荷重を計測します。

雨宮 歩助教

雨宮 歩

Amemiya Ayumi

千葉大学大学院看護学研究科生体看護学専門領域 助教

専門分野:看護工学、歩行解析、糖尿病合併症予防
2004年 千葉大学看護学部卒業、東京大学医学部附属病院 入職(看護師)
2011年 東京大学医学部附属病院 退職、東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻 修士課程 入学
2013年 東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻 修士課程 修了、東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻 博士課程 進学
2014年 日本学術振興会特別研究員(DC2)
2016年 東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻 博士課程 修了(保健学博士)、千葉大学大学院看護学研究科 助教として着任

どのような研究内容か?

 高齢者は転倒することで骨折し寝たきりになったり、打ちどころが悪いと死亡したりすることがあります。そのため病院や介護施設では、転倒予防のために様々な対策がとられていますが、転倒事故は多発しています。
 その原因の一つとして、対象者がベッドから離れることを知らせる「離床センサ」がうまくはたらいていないことがあげられます。動き出しの動作こそ不安定で見守りや介助が必要であるにもかかわらず、既存の多くの離床センサは、動き出した後でアラームが鳴る、という問題点があります。また、誤報が多いためにスタッフの警報疲労が起きていることも問題です。更に、アラームが鳴ることで対象者に拘束感を与え、アラームを鳴らさないよう対象者が無理な動作をすることで、より転倒の危険性が高まっています。
 そこで私たちは、動き出す前の状態を検知し、誤報が少なく、対象者に拘束感を与えない離床センサを開発することを目的としています。
 一般的なベッドの4点の脚の下に、高性能ロードセルという重さを計測する機械を取り付けます(図1)。ベッドから離床する前にはほとんどの場合、ベッドの端に腰掛ける「端坐位」という姿勢になります(図2)。そして、端坐位のような姿勢を取ろうとしたときに、ベッドの脚4点にかかる荷重に偏りが生じることを明らかにしました(図3)。また、転落の危険性が高いほどベッドの端で寝ている時にも、この荷重の偏りがみられます。このようなベッドの荷重の偏りを検知する、離床希望検知センサとして開発を進めています。
 実験では、看護師が呼んで欲しいと思うタイミング(端坐位になる少し前、図3の写真のようにベッドから足が出る頃)を検知できる確率が88%、その後1秒以内には100%検知できています。また、呼ばなくてもよいタイミングにアラームが鳴らない確率が91%と、精度が高く、誤報が少ないという結果が得られています。

何の役に立つ研究なのか?

 高齢者の転倒やベッドからの転落の予防に役立ちます。
 転倒や転落を予防するために、対象者がベッドから起きて立ちあがろうとする動作や、ベッドから落ちそうになっている状態を検知し、看護師や介護スタッフなどにお知らせします。看護師や介護スタッフは対象者のもとに駆け付け、不安定な立ち上がり動作から見守り・介助することで転倒を予防することができます。または、ベッドから落ちないよう対象者の姿勢を変えることで、転落を予防することができます。

今後の計画は?

 現在、この離床希望検知センサについて特許を申請しています。また、このセンサが現場で本当に使えるのかを、介護施設で確認しています。介護施設で実際に計測したデータから更に精度を改善し、近いうちに発売する予定です。

関連ウェブサイトへのリンクURL

http://www.minebeamitsumi.com/news/press/2017/1193236_8990.html

成果を客観的に示す論文や新聞等での掲載の紹介

学会やシンポジウムでの発表
・Amemiya A, Sugawara H, Matsushima E, Kase R, Nishimura T, Noto M, Iida N, Isono S, Sakai I. Development of the Bed-Departure Hope Detection System Using a High-Performance Load Cell Sensor. In Proceedings of the 21st East Asian Forum of Nursing Scholars & 11th International Nursing Conferences, Seoul, Korea, 2018 (in press).
・雨宮歩,菅原久純,磯野史朗,酒井郁子.離床希望検知センサの開発― 臨床で本当に使用できる拘束しない離床センサ ―.千葉大学グローバルプロミネント研究基幹シンポジウム,2017.(図3:発表ポスター)。

この研究の「強み」は?

 病院や施設に精通している看護師や医師と、企業の工学研究者、開発者などが共同で研究を行っているところです。
 また、ベッドの荷重の偏りによってアラームが鳴るという、シンプルで誰にでもわかりやすい仕組みであるため、現場で使用しやすいと考えています。機械が複雑な計算をしてアラームが鳴るものだとなぜ鳴ったのかがわからず、対象者や現場の方たちのストレスになる可能性があります。

研究への意気込みは?

 現場で本当に使える離床センサということにこだわって研究・開発しています。
 私自身、看護師として病院で働いていた時に、離床センサの誤報が多く、それなのに重要な時にアラームが鳴らないことがあり、大きなストレスになっていました。そして、離床センサがうまく作動しなかったことで患者さんが転倒して亡くなったことがあり、本当に悲しく悔しい思いをしました。このような事故をもう起こさないよう、また、看護師や介護スタッフの方々の負担を少しでも減らせるように、私自身の臨床経験を最大限に活用し、現場で本当に使える離床センサを開発します!

学生や若手研究者へのメッセージ

 私も教員・研究者になったばかりで挑戦の日々です。この他にも、モーションセンサや動画解析、外力センサを使用し歩行やフットウェアに介入することで糖尿病性足潰瘍を予防する研究や、サーモグラフィやエコーを使用し小児のインスリン持続療法の皮膚トラブルを予防する研究を進めています。一緒に挑戦してくれる方や研究に興味のある方、ぜひご連絡ください。

図2 端坐位の姿勢
ベッドから離床する前にはほとんどの場合、ベッドの端に座る「端坐位」という姿勢になります。この端坐位になる少し前のタイミングで検知し、看護師や介護スタッフが駆け付けることで、不安定な動き出しの動作から見守り・介助することができます。

図3 端坐位による荷重の偏りを検知した波形
この波形は、ベッド上で右側を向いて横になっている状態からベッド上に座り、端坐位になり離床した際の波形です。写真のような端坐位になる少し前のタイミングから、センサ2が閾値(赤線)を超え、端坐位中には荷重の偏りが確認できます(赤丸)。閾値を超えたところで検知し、看護師や介護スタッフにアラームで対象者の離床希望をお知らせします。