特色ある研究活動の成果
Research

銀カルベノイド反応で医薬分子を迅速に合成

銀カルベノイド反応で医薬分子を迅速に合成

研究代表者:原田 慎吾
共同研究者:
①氏名、②フリガナ、③ローマ字表記、④所属部局名、⑤職名、⑥専門分野
①根本 哲宏、②ネモト テツヒロ、③Nemoto Tetsuhiro、④薬学研究院、⑤教授、⑥有機合成化学

図1 金属カルベノイドとフェノール誘導体の反応

原田 慎吾助教

原田 慎吾

Harada Shingo

薬学研究院助教

専門分野:カルベノイド化学

大阪育ち。趣味は筋トレと猫鑑賞。2008年大阪市立大学理学部化学科卒業、2013年京都大学大学院薬学研究科博士課程修了。2013年より現職。(2017年ビーレフェルト大学化学科博士研究員)

どのような研究内容か?

 私達の研究室では、化学反応においてユニークな反応性を示す金属カルベノイド(金属原子と炭素原子が二重結合を形成したもの)という化学種を扱う研究を行っております。この研究過程において我々は、金属カルベノイドが配位している金属種によって大きく異なる反応性を示すことを見出しました。図1に示すようなフェノール誘導体に対し、汎用されるロジウム触媒または銅触媒を作用させると異なる反応が進行するのに対し、銀触媒を作用させると選択的に芳香族性が失われたアザスピロ環化合物が得られることを見出しました。さらに鏡像異性体(右手と左手の関係のように、互いに重ね合わせることのできない似て非なるもの)をつくりわけることにも成功しました。コンピューター計算による解析を行った結果、銀カルベノイド種は極めて高い求電子性(電荷でいうプラス、つまりマイナスと引き合う)を有しており、反応性の差異に寄与していることを明らかにしました。

何の役に立つ研究なのか?

 アザスピロ環を有する化合物は図2に示す通り有用な生物活性を示します。しかし三次元的に複雑な分子構造を持つものが多く、ジヒドロジジメリンとホラジエニンは未だに合成されたことがありません。つまり、医薬分子の有力候補にも関わらず、創薬研究に活用されていないというのが現状です。今回開発した銀カルベノイド反応により、三次元的に複雑な構造を有するアザスピロ環分子を迅速に合成できます。すなわちジヒドロジジメリンとホラジエニンを含む多種の生物活性物質のコア骨格を構築できます。これまで人工的に合成することができなかった複雑な分子も合成可能となり、新たな創薬シーズの創出に繋がることが期待されます。従って、本研究は、カルベノイド化学分野における学術的な芽となるだけでなく、機能性分子合成、医薬品リード開発という産業の芽に繋がることも期待できます。

今後の計画は?

 今回、開発した銀カルベノイド反応を鍵とするジヒドロジジメリン、ホラジエニンの全合成研究を行います。それらの誘導体も得るため、分岐的な合成ルートの確立を目指します。全合成を達成し、天然物とその類縁体が取得できれば、共同研究として生物活性試験を進めていきたいと考えております。

関連ウェブサイトへのリンクURL

千葉大学薬学部薬化学研究室HP

成果を客観的に示す論文や新聞等での掲載の紹介

Nakayama, H.; Harada, S.; Kono, M.; Nemoto, T., J. Am. Chem. Soc., 2017, 139, 10188. " Chemoselective Asymmetric Intramolecular Dearomatization of Phenols with α-Diazoacetamides Catalyzed by Silver Phosphate"(国際誌) [IF; 13.858 (2016)] 上記の論文は2017年9月18日に、ドイツのThimes社が発行する有機合成化学の専門学術誌SNFACTSに特集されました(Synfacts, 2017, 13(10), 1059.)。

研究への意気込みは?

 金属カルベノイド種は、上記のように有用性の高い反応種ではありますが、その原料のジアゾ化合物はやや不安定であり、取り扱いに注意を要します。安全性の観点から、改善の余地を残しておりますので、ジアゾフリーの銀カルベノイド反応の開発など、より安全な有機合成法への展開を目指して研究を進めていきたいと考えております。

学生や若手研究者へのメッセージ

 もし勉強が苦手または嫌いと感じる学生がいたとしても、研究に対し臆する必要は全くありません。研究は学校で習う勉強とは全く異なるものです。教科書に書かれている事を学ぶのではなく、教科書に書かれるような内容を自ら探し、明らかにするような行為です。研究者の楽しみは、誰も知らない事を世界で一番初めに知る事ができる点や社会貢献、特許取得による一攫千金の夢など人それぞれだと思いますが、とてもやりがいのある専門性の高い職業ですので、研究者を目指してみてはどうでしょうか。

図2 アザスピロ環構造をコア骨格として有する生物活性物質