特色ある研究活動の成果
Research

数学で生物の行動パターンを読み解く

数学で生物の行動パターンを読み解く

石田 祥子

石田 祥子

Ishida Sachiko

大学院理学研究院数学・情報数理学研究部門特任助教

専門分野:関数方程式論

2013年3月 東京理科大学大学院 理学研究科数学専攻 博士後期課程修了
2013年3月 博士(理学) 取得
2012年4月~2013年3月日本学術振興会 特別研究員(DC2)
2013年4月~2017年1月 東京理科大学 理学部第一部数学科 嘱託助教
2017年2月~ 千葉大学 理学研究院 数学・情報数理学研究部門 特任助教
他)日本女子大学非常勤講師 (2014年)

どのような研究内容か?

  私は細胞性粘菌 (アメーバ)の動きを数学を使って研究しています。細胞性粘菌は単体と集合体の2つの活動期があります。単体で活動しているときに餌がなくなり飢餓状態に陥ると、粘菌は自分自身から化学物質を放出して位置を教えあい1つに集合します。そして集合体は環境が良くなるまでの準備をします。この集合体を形成するときの粘菌の動き方・集まり方を解析しています。
 さて、粘菌の話ばかりしてしまいましたが、次に『数学』がどのように研究に関わっているのか話したいと思います。粘菌の動きは一瞬の変化を表す『微分』を含む方程式 (微分方程式と呼ばれます)の解を求めることで分析できます。ただし、方程式はとても複雑な形をしているので、学校で勉強したときのようにいつも解があるとは限りません。どんな条件のときに解が求まり、それはどんな形をしているのか、時間がたつとどう変化するのかなどを解明しています。
 少し専門的になりますが、私はこの分野ではあまり注目されてこなかった最大正則性原理という数学の道具を使って時間無限大まで方程式の解が存在する限界の条件を求めることに成功しました。反対にこの条件を超えてしまうと有限時間までしか解が存在しないことも解析しています。この結果は細胞性粘菌が有限時間で集合体を形成することに対応しています。

何の役に立つ研究なのか?

 世の中の多くの現象は先ほど紹介した微分方程式を用いて表すことができます。例えば、熱の広がり方、パイプの中の液体の流れ方、捕食-被食関係にある生物の個体数変化などです。私が研究してきた細胞性粘菌の動きを表す微分方程式も、癌細胞が周りの健康な細胞に広がっていく浸潤現象を表す微分方程式と関係があることが近年見つかりました。そのため、将来的には医療の分野で役立つことが期待されます。

今後の計画は?

 研究対象としている微分方程式の解の時間変化に着目しています。粘菌が『どれくらいの時間』で集合体を形成するのかは大変おもしろい問題だと思います。実際、海外ではすでに研究を始めているチームがあります。また、粘菌が飢餓状態にありながらも集合体を形成しない場合には『どのような形』に細胞が分布されるのか、『分布にパターンはあるか』など、考えてみたいことはたくさんあります。
数学は理論上のことになるので、研究結果と実際の実験との関連も調べてみたいと思います。私は実験に関しては素人なので、生物学者の先生に力を貸していただけるよう魅力的な研究を続けていきたいと思います。

成果を客観的に示す論文や新聞等での掲載の紹介

[1] T. Hashira, S. Ishida, T. Yokota, "Finite-time blow-up for quasilinear degenerate Keller--Segel systems of parabolic-parabolic type", J. of Differential Equations, accepted.

[2] K. Fujie, S. Ishida, A. Ito, T. Yokota, "Large time behavior in a chemotaxis model with nonlinear general diffusion for tumor invasion", Funkcialaj Ekvacioj, accepted.

[3] S. Ishida, "Global existence and boundedness for chemotaxis-Navier--Stokes systems with position-dependent sensitivity in 2D bounded domains", Discrete Contin. Dyn. Syst. 35 (2015), 3463--3482.

[4] S. Ishida, T. Yokota, "Global existence of weak solutions to quasilinear degenerate Keller--Segel systems of parabolic-parabolic type", J. Differential Equations, 252 (2012), 1421--1440.

学生や受験生へのメッセージ

 こんにちは。石田です。みなさんは数学にどのようなイメージを持っていますか?面白い!、問題を解くためのツール、計算法則、苦手、すでに諦めている、色々あると思います。
 数学が好きな人へ。好きな定理はありますか?その定理の図形的解釈や複数の証明方法を学ぶことは大学における『数学』という分野では必ず役に立ちます。
 数学が苦手な人へ。無理に好きになる必要はないと私は考えています。ただ、エアコンをつけたときに「熱の広がり方は数学で表せるんだったな」とたまに思い出してもらえると数学者は嬉しくなります。