特色ある研究活動の成果
Research

量的・質的データによる企業文化と組織変革に関するプロセス研究

量的・質的データによる企業文化と組織変革に関するプロセス研究

横尾 陽道

ゼミ生と企業見学で訪れたヤマハ発動機(株)コミュニケーションプラザにて

横尾 陽道

Yokoo Harumichi

大学院社会科学研究院准教授

専門分野:戦略的マネジメント、組織変革論、企業文化論

群馬県出身。1995年4月~2004年3月 慶應義塾大学商学部、大学院商学研究科修士課程および博士課程に在籍、経営学を学ぶ。2013年1月 博士号取得(博士(商学)、慶應義塾大学)。2004年4月~2015年3月 北星学園大学専任講師等、2011年4月~2012年3月 成城大学客員研究員として勤務。2015年4月 千葉大学法政経学部准教授として着任、2017年4月~ 千葉大学大学院社会科学研究院、グローバル関係融合研究センター(兼務)に所属。

どのような研究内容か?

 昨今、企業間競争の激化に伴い業績が低迷している企業や、不祥事によって社会的信用が悪化している企業では、組織の存続のために不連続的変革(抜本的な組織変革)が必要とされています。不連続的変革は、企業経営におけるハードウェア(組織の分業体制、制度・システムなど)だけでなく、ソフトウェア(組織の意識、思考、行動など)の変革が必要とされます。たとえ「見た目」を変えても「中身」が変わっていなければ、遅かれ早かれ同じ失敗を繰り返す可能性があるからです。
 ただし、肝心要のソフトウェアの部分は、様々な経営要因と複雑に関連していることや直接観察できないことから、具体的な問題を把握し、解決方法を見出すことは容易ではありません。こうした現実を踏まえ、企業経営の哲学的基盤となる企業文化(組織メンバー間で共有された価値観と行動様式)という組織の認知・行動的な要因に焦点を当てた実証研究を行っています。
 不連続的変革の核心は、企業文化を変革(新たな企業文化を形成)することにあり、その意味で企業文化の形成プロセスを理解することがポイントとなります。企業文化の形成プロセスに関する既存研究ではトップのリーダーシップの観点から説明されることが一般的でしたが、戦略的マネジメント(組織の革新について経営諸側面から統合的に議論する研究領域)の視点から組織学習という組織的要素も加味した理論モデルを構築しました。このモデルの妥当性は、戦略経営研究グループ(代表者:十川廣國慶應義塾大学名誉教授)が長年行ってきた国内製造業を対象としたアンケート調査から得られた量的データを用いて統計的に検証しました。
 量的データを用いた研究では、革新が生じるプロセスにおけるキー要因間の一般的傾向は把握できたものの、その詳細は解明されていない部分が残されています。そこで現在は、聞き取り調査から得られた詳細な組織プロセスに関する質的データと、これまで蓄積してきた量的データをつなぐ研究デザインを検討し、理論モデルの精緻化を目指しています。具体的には、異なる部門文化(部門特有の価値観・行動様式)間の組織学習を通じ、組織全体が活性化され革新がもたらされるプロセスを解明することです。このことによって、不連続的変革や継続的な自己変革を促進する経営のあり方を提示できればと考えております。

何の役に立つ研究なのか?

 企業文化の視点から変革のプロセスと要点を明らかにすることで、不連続的変革の実践において、より根本的かつ具体的な示唆を行うことができると期待されます。2017年3月には、抜本的な労働環境の改革、ひいては企業文化の変革に取り組む業界最大手D社の業務改革担当チームに有識者として招かれ、企業文化の再構築に関するセミナーを行いました。

今後の計画は?

 当面は、2件の科研費課題(「部門文化の多様性を活用した組織の活性化および革新プロセスの解明」(研究代表者)、「企業のイノベーション創出プロセスと組織における多様性の研究:吸収能力の視点から」(研究分担者))を中心に進めていくとともに、国内製造業の経営に関する実態調査(アンケート調査、聞き取り調査など)を継続して行っていくつもりです。
 これまで研究データの入手可能性、職能部門の多様さ、活動成果の明確さから、国内の製造業を研究対象としてきましたが、将来的には、部門間の連携とイノベーションに関わる理論的な分析枠組みを精緻化し、対象を①国内の本社・事業部門と海外事業部門との関わり、②非製造業、③非営利組織まで研究対象を拡張していければと考えております。

関連ウェブサイトへのリンクURL

http://curt.chiba-u.jp/search/ResearcherDetail.aspx?ResNo=3380