研究
Research

リモートセンシング

マイクロ波リモートセンシングの最先端、小型衛星搭載の合成開口レーダ(SAR)で災害監視(建石隆太郎教授)
~先端マイクロ波リモートセンシング拠点形成~

建石隆太郎

Tateishi Ryutaro

千葉大学環境リモートセンシング研究センターセンター長・教授

1974年、東京大学農学部卒業。1976年、東京大学生産技術研究所助手。1979年千葉大学工学部講師。1982年、工学 博士(東京大学)。研究分野は広域土地被覆マッピングとモニタリングおよび地表環境データベース。1992-2004年、国際写真測量リモートセンシング 学会(ISPRS)WGチェアマン。2002年より地球地図国際運営委員会(ISCGM) WG4チェアマン。2008-2009年、日本リモートセンシング学会会長。1998年より千葉大学ボート部部長。

「雲を透過して観測できる電磁波」を利用して地震などの災害や農作物の状態を観測

リモートセンシングとはどのような技術かご存知でしょうか?
観測したい対象物からの電磁波を利用してその対象物に関する情報を得る技術です。利用する電磁波にはその波長により可視光、赤外線からマイクロ波まであります。これらの中でマイクロ波は特別な特徴があります。すなわち、雲を透過して観測できます。このマイクロ波を利用したリモートセンシングの中で主流のタイプは合成開口レーダです。これは英語でSynthetic Aperture Radar (SAR)と言い、通常SARと呼ばれます。SARは、マイクロ波を人工的に発生させ、対象物で跳ね返って(散乱して)戻ってくるマイクロ波をSARの移動と共に順次受信します。これらの信号(散乱信号)を合成処理することにより解像度の高い観測画像を得ることができます。このようなSARの、観測性能の高い新しいセンサを開発し、地震、地滑り、火山などの災害の観測に応用しようという研究です。

SARセンサにより、SARと対象物との距離の変化を検出することができ、地表面の変化を観測することができます。例えば、地殻変動、建物崩壊、地盤沈下、火山活動などです。また、新しいタイプのSAR(円偏波合成開口レーダ)では対象物の散乱面の向きも検出できるため稲穂が垂れてきたかどうかなど農作物の状態も観測できる可能性もあります。
さらに、GPSから発信されるマイクロ波の遅延情報を利用して高度100-700kmの電離圏の電子密度の観測にも利用できます。この電子密度と地震発生との関係を分析して地震予知に役立てる研究も行います。

今後は、既に開発した新型SARを航空機ボーイング737-200に搭載して観測実験を行います。これにより、新型SARすなわち円偏波合成開口レーダ(CP-SAR)の有効性を確かめます。また、無人機(UAV)を用いた実験も行います。並行して、CP-SARを搭載した小型衛星を5年以内に打ち上げるよう準備を進めます。将来的には、インドネシア、韓国、マレーシアなどの国と国際共同で複数の小型衛星を同時運用することにより(コンステレーションと言う)観測頻度を高め、防災などの目的に利用する計画を持っています。

世界初の「小さい」「新しい」レーダ-を開発

この研究の凄いところは世界に先駆けた独創的な合成開口レーダを開発し実用に使うところです。その特徴は、'小さい'、'新しい'です。すなわち、従来の合成開口レーダの1/5から1/10の小ささ・軽さです。これは小型衛星に搭載するための絶対条件です。小型衛星により、これまでの1/10以下の安い費用で衛星を打ち上げることができ、打ち上げ機会が増え、複数の衛星を同時に運用することにより観測機会を増やすことができます。また、電界面を回転させたマイクロ波を送信する円偏波合成開口レーダ(CP-SAR)という新しいタイプのSARにより、雑音に強いよい精度のデータが得られます。

本研究において世界初の小型衛星搭載SARの実現を目指しています。その次のステップとして世界各国と協力して複数の小型衛星搭載SAR結びつけた統合的な観測システム、すなわち衛星コンステレーション、を実現することを計画しています。これにより高頻度観測が可能になり、防災に威力を発揮します。長期的には、成層圏プラットフォームによる日本列島上空の周回高頻度観測も構想の中に入っています。

学生、若手研究者の皆さんへ

新しい研究分野、リモートセンシングに多くの学生が参加してくることを願っています。リモートセンシングは間口の広い分野です。センサ開発(ハードウェア)からデータ処理解析(ソフトウェア)、観測対象を分析する研究から社会へ応用する研究まで多くの分野が含まれています。また、その特徴は"グローバル"という言葉で表現できます。まず、観測対象が世界各国でありグローバルです。教育研究環境も国際ネットワークと結びついておりグローバルです。
世界最先端のリモートセンシングの研究を千葉大学で行うことができます。

車両搭載のSARシステム

合成開口レーダ(SAR)による建物側面被害検出

小型衛星搭載SARのアンテナ展開

SAR搭載小型衛星の観測予想図

小型衛星SARの開発計画

SAR実験用の長さ6メートルの無人機(UAV)