研究
Research

大学院 医学研究院 免疫発生学研究室

免疫研究を通して難治性の病気の新たな治療法を開発

大学院 医学研究院 免疫発生学研究室

ー先端研究部門 高次機能治療学研究講座ー

アレルギーだけでなく、がんや糖尿病といった難治性の病気とも深い関連がある人間の免疫システム。
そのメカニズムを解明することで、新たな治療への道を開くための研究を行っている中山俊憲教授にお話を伺いました。

中山俊憲

なかやま としのり

千葉大学大学院 医学研究院 免疫発生学教授。(2014年12月時点)
山口大学医学部卒業、東京大学大学院医学系研究科修了。2001年に千葉大学に着任、2004年より現職。医学系グローバルCOE プログラム拠点リーダー、2014年7月より千葉大学副学長(未来医療)、未来医療教育研究機構 機構長。専門は免疫学。

先生が取り組んでおられる研究について教えてください。

私の研究室では、免疫のメカニズムを解明して、新しい医療の可能性につなげていくという研究を行っています。免疫というのは、体外から入ってきた「自分ではないもの」を排除する仕組みですが、過剰反応があるとアレルギーを引き起こします。花粉症や食物アレルギーがわかりやすい例ですが、近年ではがんや糖尿病、リウマチなどの難治性の病気も、免疫が関係していることがわかってきています。免疫システムはあらゆるものに反応すると思われていましたが、私の研究室では、「EZH2」というタンパク質が、一定以下のものへの反応を抑えるということを解明することに成功しました。これは、アレルギー疾患や自己免疫疾患を抑える薬剤の開発にも役立つ可能性があり、大きな成果だと言えます。
また、「免疫記憶」も私の研究の核の一つです。免疫記憶とは、簡単に言えば体が過去にかかった病気を覚えていて抗体をつくるというもので、これが利用されているのがワクチンですが、この記憶を担う細胞が慢性的な炎症を起こして、病気を誘発することがあります。私の研究では、この炎症を起こす細胞をピンポイントに取り除くことで、難治性の病気が治るという説を提唱していて、今年はその説を論文として発表しました。

なぜ免疫についての研究を志したのでしょうか。

私は岡山の田舎育ちで、もともと生き物に親しみがあったこともあり、同じ理系でも物理や数学よりも生物系を学びたいと考え、医学部へ進みました。
免疫学との出合いは、学生時代にある講演を聞いて、免疫の世界に魅了されたことがきっかけです。講演者の多田富雄先生は、当時、東京大学に研究室をお持ちだったのですが、私は医学部を卒業後、すぐに東京大学大学院に進み、多田先生に師事しました。
免疫システムの研究は今でこそ成熟した分野になりつつありますが、私の学生時代にはまだまだ未知の学問でした。逆にいえば、これから新しいことがわかっていく分野、発展していく分野なので、おもしろそうだと感じたことも、免疫の研究を志した理由の一つです。

千葉大学では、「未来医療教育研究機構」を立ち上げられたそうですが、これはどのような組織なのでしょうか。

千葉大学では、さまざまな医療現場で活躍できる次世代対応型医療人の育成と、亥鼻キャンパスの医療系3学部(医学・薬学・看護学)や附属病院といった総合力を生かした「治療学」拠点の創成に取り組んでいます。
平成25年度には、「亥鼻キャンパス高機能化構想」が文部科学省の国立大学改革強化推進事業に選定され、その実現を担う組織として設立されたのが未来医療教育研究機構です。
私はこの機構の機構長を務めさせていただいていますが、千葉大学ならではの強みを生かして、これからの日本の超高齢社会を支えることができるような医療人材を送り出したいと考えています。

最後に学生へのメッセージをお願いします。

学生の皆さんには、まず自分がやるべきことを、全力でやれるだけやってみることをお勧めします。
自分の可能性がどこまであるのか、自分ではなかなかわからないものです。
自分の限界を知ることで、自分が何に向いているか、どういう方向に進めばいいのかが見えてくるはずです。
年齢を重ねると無理がきかなくなりますので、若いうちに思いきり走ってみてください。

千葉大学が推進する豊かな健康長寿社会と安全・安心な社会の実現を支える医療人の総合的育成の司令塔の役割を果たすのが未来医療教育研究機構。

中山教授は、アレルギーや自己免疫疾患が免疫メカニズムの司令塔ともいえるヘルパーT細胞の数のバランスから起こるという従来の考え方(上の図)ではなく、記憶ヘルパーT細胞の集合の中に発病性のある細胞が現れることでアレルギーや自己免疫疾患が発症するという説(下の図)を提唱。
この考え方が正しければ、発病原因となる細胞だけを除くことで症状の改善が期待できることから、今年2月に発表された論文の閲覧とダウンロードが公開後わずか2カ月余りで1000件を超えるなど、注目を集めている。