研究
Research

教育学部 幼児心理学研究室

研究者として、幼稚園長として、子どもたちの「心」を見つめる

教育学部 幼児心理学研究室

ー中澤研究室ー

乳幼児期は「歩く」「話す」「考える」といった、人間が人間たる能力が展開されていく時期。その発達過程についての研究を心理学の視点から行っているのが、幼児心理学研究室です。附属幼稚園の園長も併任する同研究室の中澤潤教授にお話を伺いました。

中澤潤

なかざわ じゅん

千葉大学教育学部教授、千葉大学教育学部附属幼稚園長。(2013年7月時点)

広島大学大学院教育学研究科修了、博士(心理学)。専門は発達心理学、幼児心理学。幼児の仲間関係と情動制御、先天性心疾患患者の心理的発達などのほか、マンガの読解についての研究も行っている。

中澤先生は幼児心理学や発達心理学について研究されていますが、心理学の中でもこうした分野に進まれた理由は何でしょうか。

私が大学で心理学を学んだ当時、主流だったのは行動主義心理学でした。これは、外部から観察できる「行動」を研究対象とする心理学で、刺激と反応との条件づけをもとに行動を分析するものです。その1つである弁別移行学習という研究を通して知ったのは、幼児期の前半と後半で学習の仕組みに違いがあるということでした。幼児期前半ではまだ概念的な能力が発達していないので、動物(ネズミやハト)と同じような単純な学習をします。けれども、幼児期後半になると、経験や言語の発達によって概念を獲得し、それを基に大人と同じ学習パターンを示すようになるのです。乳幼児はわずか数年の間に、「歩く」「話す」「考える」といった大きな進歩を示します。そう考えると、乳幼児期の中に人が人である要素が含まれており、幼児心理学により、この時期を研究することで、「人間とは何か」という問いへの答えを得られるのではないかと思ったのです。これが、私の研究の出発点でした。一言加えておくと、今では、乳幼児は豊かな理解や学習能力を持つことが明らかとなっています。乳幼児研究は日々新たな「発見」が見られる心理学の最先端の領域です。

現在は具体的にどのような研究をされているのでしょう。

子どもの仲間関係に影響する行動を支えている認知や感情の制御能力を研究しています。また、理化学研究所・米国NIMH・イタリアとの国際共同研究として、乳児の顔を見た時や、自閉症乳児の泣き声を聞いた時に誘発される感情反応を研究しています。感情変化は体温と連動することから、赤外線サーモグラフを使って、顔の体表温変化を調べています。日本とイタリアの違いや、感情の制御能力とその後の適応との関連性など、興味深い研究結果が出ています。

また、幾つかの医学部小児科と協同で、世界的に使われている発達の様子を調べる「Bay ley 乳幼児発達検査」の日本版をつくっています。日本の発達研究や小児医療の成果を海外に発信する上で役立つ研究と考えています。

中澤先生は教授として研究を行うかたわら、附属幼稚園の園長も併任されていますね。

園長職は今年で3年目になりますが、千葉大学の附属幼稚園は本当に環境が良いと感じています。もちろん自然が多いといった物理的な意味でもそうなのですが、もう1つの要因として、大学と幼稚園の連携がうまくいっている点が挙げられると思います。教育実習はもちろんですが、教育学部の授業をこの幼稚園で行うこともありますし、幼児教育教室と幼稚園は協同で地域に開いた研究会を開催しています。幼稚園の教員は私の教え子が多く、気心も知れています。この環境があるからこそ、この幼稚園に子どもを通わせたいとおっしゃる保護者の方も
おられて、大いに誇りを持っています。

最後に学生へのメッセージをお願いします。

大学と幼稚園の「学び」に関わっていて思うのは、いずれも定まった教科書はなく、自ら「学び」を作り出す活動が重要だという点が似ているということです。子どもたちを見てください。彼らは知りたいことを貪欲に求め、できないことを克服しようと努力し、それがそのまま成長の糧になっている。大学の学習や研究も同じで、自分でやりたいことを見つけ、わからないことを解明しようとする中で多くのことを得ることができます。千葉大学の学生は打てば響く優秀さを持っていますから、自主的に学ぼうという意欲を持って、学問の森を探検してほしいと思います。

研究室の大学院生と近々行われる「Bayley乳幼児発達検査」の準備を行う。検査で用いられる用具を日本向けに改良

園内では幼稚園教員養成課程の学生の実習も行われる。実習生は教師役として子どもの指導を行うために、子どもたちの行動を観察し、子どもを理解する

千葉大学教育学部附属幼稚園の様子。自然も豊かで、子どもたちが自由に遊び回っている