研究
Research

大学院 工学研究科 製品デザイン研究室

カーデザイナーから教職へと 転じ、後進の育成に尽力

大学院 工学研究科 製品デザイン研究室

ーデザイン科学専攻ー

千葉大学でプロダクトデザインを学び、トヨタ自動車でカーデザイナーを務め、デザインの第一線を退いたのち、千葉大学の製品デザイン研究室に着任した林孝一教授。後進の育成の重要性と学生の可能性を実感しているという林先生にお話を伺いました。

林孝一

はやし こういち

千葉大学大学院工学研究科教授。(2015年9月時点)

千葉大学工学部卒、同大学院工学研究科で工業意匠専攻修了。トヨタ自動車に就職し約30年にわたりデザイナーを務める。2010年から千葉大学客員教授を兼任。2014年、トヨタ自動車を退職し、千葉大学の教授となる。

東京大学工学部計数工学科卒。同大学院で博士課程修了。工学博士。高速反応が可能な多指ロボットハンド、視覚や触覚などの複数の感覚情報を統合した遠隔操作ロボットなどの研究を行っている。

先生が取り組んでおられる研究について教えてください。

トヨタ自動車でカーデザインに携わってきた経験を活かし、トランスポーテーションデザインを主軸に据えた研究を行っています。トランスポーテーションデザインとは、文字通り人間の移動(トランスポーテーション)に関する製品のデザインを考える研究分野です。

製品デザイン研究室では、車や公共交通はもちろんのこと、自転車や車いすなどの新しい形や機能についても研究対象としています。また、デザインといっても単に見た目を良くするだけでなく、高齢化社会への対応といった社会的なニーズ、3Dコンピューティングを使った新しいデザイン手法など、研究範囲は多岐にわたっています。

先生ご自身も千葉大学大学院の工学研究科のご出身ですが、カーデザイナーを志したきっかけはどのようなものだったのでしょう。

カーデザインの魅力に初めて触れたのは、中学生の頃にいすゞの117クーペという車を見たことですね。イタリアのジョルジェット・ジウジアーロによるデザインで、今でもファンの多い車ですが、私にとってプロダクトデザインというものを意識するきっかけの一つになりました。

その後、大学受験で進路を考えていたときに、千葉大学工学部に工業意匠学科があることを知り、興味を持ちました。入学時から明確にカーデザイナーを目指していたわけではないのですが、就職を検討する時期になり、改めて自分がやりたいことを考えたとき、車のデザインなら続けられると思い、トヨタ自動車への就職を決めました。

トヨタ自動車から教員として大学に移られた経緯についてお聞かせください。

千葉大学からトヨタ自動車に客員教授として人材が欲しいという話があり、私に白羽の矢が立ったのがきっかけです。私は教員という柄ではないので、最初はお断りしていたのですが、思い直して2010年に客員教授となり、昨年から正式に教授職に就きました。考えを変えたのは、私自身がすでに管理職となり、デザインの最前線から離れていたため、学生を育成して社会に送り出す仕事に新しい意義を見出したからです。

実は、私が学生時代にトヨタ自動車に入社する直接のきっかけをつくってくれたのは、当時、工業意匠学科の教授であった森本眞佐男先生という方なのですが、この方もトヨタ自動車のデザイン部長から教員に転身された方でした。そういう意味では縁を感じますし、私も若いデザイナーの背中を押す役割を果たしたいと感じています。

最後に学生へのメッセージをお願いします。

私がデザイナーとして仕事をしていて感じたのは、自分のアウトプットに満足してしまったら、それ以上の成長がないということです。スポーツ選手や演奏家が練習を怠るとすぐに腕が落ちてしまうのと同様、常に向上するというメンタリティを持つことが必要なのではないかと私は考えています。教員になってみて改めて思うのは、千葉大生のポテンシャルの高さです。どの学生もこれから伸びしろは十分にありますので、自分の可能性を信じていろいろなことに挑戦してほしいですね。

研究室所属の大木佑太さん(修士課程1年)がヤナセのデザインコンテストで、最優秀賞を受賞

2015年4月に開催されたヤナセ100周年記念デザインコンテスト「こんなメルセデスに乗りたい!」で、研究室所属の大木佑太さんが最優秀賞を獲得。バンパー周りのデザインにこだわったという「GLACLASS+100km」は実車化され、ヤナセのショールームやイベントなどで展示されたのち、大木さんにプレゼントされ るとのこと。上の写真は、8月27日に行われた完成披露会

学生が作成したポートフォリオ。「最初はデザインスケッチも描けなかった学生が、わずか数年で立派なポートフォリオを作り上げることに驚きを感じています」と林先生

研究室のメンバーは、修士課程2年が5名、修士課程1年が8名、学部4年が5名の計18名。うち3名が中国と台湾からの留学生。それぞれが積極的にデザインコンペに参加している