千葉大学サステナビリティレポート2025
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サステナビリティに関する教育・研究プレスリリースはこちら原著論文はこちら(英語) 千葉大学予防医学センターは、都市環境が人々のウェルビーイングに与える影響について、精力的に研究を進めています。最近の研究では、柏市柏の葉エリアに住む成人を対象に、スマートフォンアプリを用いて日々の感情や居心地の良い場所、不快な場所などを記録し、分析を行いました。その結果、公園などの公共空間や、飲食店、文化・スポーツ・教育施設といった場所が、人々の瞬間的な心地よさに繋がりやすいことが明らかになりました。また、人生に対する満足度や幸福感といった長期的なウェルビーイングは、「文化・スポーツ・教育施設」で過ごす時間と関連性が高いことも示唆されています(図1)。 これらの研究成果は、都市計画や政策立案において、人々のウェルビーイングを重視した設計の重要性を示しています。緑豊かな公園を増やしたり、誰もが利用しやすいカフェやレストランを整備したり、地域住民が交流できるオープンスペースを設けるなど、都市環境を整備することで、人々の心身の健康とウェルビーイングを高めることができると考えられます。千葉大学予防医学センターは、今後もウェルビーイングな都市環境の実現に向け、研究を進めていきます。 地球温暖化に強く関与していることが指摘されている CO2 を、持続可能なエネルギー源である光を用いて燃料や高付加価値物質に変換する研究を行っています。最近では、光触媒や反応設備のコストを生成物の価格が上回ることで、持続可能社会で実現可能なカーボン・ニュートラルサイクルに関する研究を行いました。 そのためには、CO2 からより高付加価値物質を得る光触媒を調べました。その結果、コバルト(Co)–酸化ジルコニウム(ZrO2)光触媒に紫外可視光を照射することで、CO2 から炭素数が1から3のパラフィン化合物(化学式CnH2n+2、n は整数;メタン、エタン、プロパン)を生成できました。また、CO2 から光触媒により CO を得るのは容易です。そこで、Co–ZrO2 光触媒に紫外可視光を照射することで、CO から炭素数が 2,3 のオレフィン化合物(化学式 CnH2n;エチレン、プロピレン)を選択して生成することができました。右図は光触媒の反応速度、および同じ炭素原子でも質量数が異なる 13C を含む 13CO2 を用いたときに生成する生成物(13CnH2n+2、13CnH2n)をオンラインで追跡できる装置です。持続可能社会での用途に合わせた CO2 からのさまざまな各生成物(上記炭化水素、その他アルコール、有機酸等)を選択して自在に得る研究を進めています。図1 瞬間的・長期的ウェルビーイングと場所や環境特性の関連オンライン光触媒反応追跡装置千葉大学では文系・理系・医薬系を含む総合大学として多様な分野で SDGs や環境に貢献する研究を行っています。その一部について紹介します。千葉大学予防医学センター 社会予防医学研究部門 中込敦士 准教授理学研究院 化学研究部門 泉康雄 教授ウェルビーイングな都市環境を目指して千葉大学予防医学センターの研究チームより用途に応じて目的生成物を自在に選べる光触媒CO2 からの持続可能なカーボン・ニュートラルサイクルに向けて※本研究は、OPERA 採択事業「ゼロ次予防戦略による Well Active Community (WACo) のデザイン・評価技術の創出と社会実装」および三井不動産株式会社との共同研究の研究費で実施されました。 参照:Yu-Ru Chen et al. (2025): Scientific Reports, Volume 15, article number 4422. DOI:10.1038/s41598-025-88349-x15サステナビリティに関する最先端の研究

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