千葉大学サステナビリティレポート2025
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はじめにコラム 台風で倒木した杉を活用した「山武ベンチ・パークレット」の設置オープンイノベーション拠点 Biohealth open Innovation Hub(BIH)工学部 10 号棟の改修で学びと共創をアップデートBIH 外観開所記念式典の様子倒壊した山武杉を再利用した椅子やテーブル千葉県産材である山武杉・房州石を使用したロビー伐採された山武杉の丸太を活用した山武・ベンチパークレット詳細はこちら 千葉大学は、文部科学省・日本学術振興会の 2023 年度「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」に採択され、免疫学・ワクチン学、予防医学などの研究を戦略的に強化し、成果の社会実装と学内展開を進めています。その拠点の一つとして、2025 年3月 31 日、柏の葉キャンパスに「Biohealth open Innovation Hub(BIH)」を新設し、同年5月 23 日に、開所記念式典と「千葉大学 J-PEAKS シンポジウム」を開催しました。当日は産学官の関係者など 175 名が来場し、J-PEAKSのビジョンや BIH の可能性を広く発信する場となりました。BIH は、大学・企業・地域の連携を促進し、新たな出会いや協働からイノベーションを生み出すオープンイノベーション拠点です。学内 100%出資の「株式会社千葉大学コネクト」と連携し、J-PEAKS の活動拠点としても機能することで、地域課題の解決や次世代のスタートアップ支援に貢献していきます(詳細 p.7)。オープンスペースには、カフェの併設も予定され、イベントやセミナーを通じて多様な人が集い、学び合う交流の場を提供します。また、空間づくりにもサステナビリティの視点を取り入れ、椅子やテーブルには 2019 年の房総半島台風で倒木した山武杉を再利用し、自然災害や森林保護、資源循環への意識を高める取り組みとして活用されています。 西千葉キャンパスの工学系エリアは、戦後に整備されて以来、各棟を中央の渡り廊下でつなぐ南面平行配置が特徴です。築 60 年を迎えた校舎の再開発の第一弾として、建築学コースの校舎を改修しました。「キャンパスマスタープラン 2022」に基づき、西側を学生活動ゾーン、東側を研究ゾーンとする機能再配置を行い、活動が校舎の外にも表れる設計としました。従来4階にあった製図室を低層階の建築スタジオに集約し、1階にはオープンな活動空間を整備しました。教員と 20 名もの学生によるワーキンググループが中心となり、校舎を「教材化」し、構造や設備の見える化、サインや二次元コードによる情報発信を行っています。また、南面外壁には緑化や環境部材を設置できる仕組みを備え、学びが循環する環境を創出しています。共創拠点(イノベーション・コモンズ)としての機能を高めるとともに、学び合いを支えるスタジオ空間やフレキシブルな研究室配置を通じて、キャンパスの持続可能性と多様性を体現しています。 工学部建築学コースでは、2024 年度の授業課題として「千葉市中央公園プロムナードのリデザイン」に取り組みました。その成果として、中心市街地のにぎわい創出と環境配慮の両立を目指すウォーカブルなまちづくりの一環として「山武ベンチ・パークレット」を提案し、2025 年3月に設置しました。このパークレットでは、2019 年の房総半島台風で倒木した山武杉を再利用し、災害廃材に新たな価値を与えています。イベント時に活用されにくかった街路樹周辺の空間を憩いの場として再生し、歩いて楽しいまちの実現と地域資源の循環を両立させる取り組みです。地域の自然と共生し、廃材を資源へと転換するこの実践は、持続可能な都市デザインの新たな一歩となっています。5

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