

千葉大学 大学院社会科学研究院
政治学・政策学研究部門 倉阪研究室
サスティナブルな社会の実現に向けた 政策を提言
倉阪 秀史(くらさか・ひでふみ)〈右から5人目〉
千葉大学大学院社会科学研究院教授。環境ISO学生委員会顧問。東京大学経済学部卒業後、1987年から11年間、環境庁(現・環境省)で環境政策に携 わる。1998年に千葉大学に助教授として赴任、2008年から教授。

千葉大学 大学院社会科学研究院
政治学・政策学研究部門 倉阪研究室
サスティナブルな社会の実現に向けた 政策を提言

倉阪 秀史(くらさか・ひでふみ)〈右から5人目〉
千葉大学大学院社会科学研究院教授。環境ISO学生委員会顧問。東京大学経済学部卒業後、1987年から11年間、環境庁(現・環境省)で環境政策に携 わる。1998年に千葉大学に助教授として赴任、2008年から教授。
人口減少や環境問題など、様々な社会課題のなかで、今後の社会の持続可能性を高めるための研究を行っている倉阪秀史教授。
その研究成果やゼミの内容、千葉大学環境ISO学生委員会での活動などについて話を伺いました。
取り組んでいる研究について
教えてください
持続可能性の経済学について研究しています。人口減少が進むなか、社会の持続可能性を保つには、地域の資本基盤の質を維持することが重要になってきます。こうした資本基盤をいかにマネジメントするかを考える手掛かりとして、人口減少や高齢化に対して何も手を打たなかった場合の2050年の予測を提示する「未来カルテ2050」を公開しました。未来カルテは全国の1,741自治体について、コードを入力すると自治体ごとのデータを見ることができ、ダウンロードは3万件を超えています。
自治体職員や中高生を対象とする「未来ワークショップ」では、この未来カルテを活用してあるべき未来像を実現するために今から何をすべきかを考え、「未来市長」の立場から政策提言を行っています。

西之表市で開催された未来ワークショップの様子。参加することによって、地域の課題をもっと知りたい、課題解決に貢献したいと思うようになった参加者が多い。
こうした研究の基礎になっているのは
何でしょうか
私が学生だった1980年代にエコロジーという概念が注目されるようになって、私も大学時代にはエコロジーサークルを立ち上げて、環境関連の読書会をしていました。先ほどの資本基盤という考え方は、私が大学時代に師事した宇沢弘文先生の著書『社会的共通資本』の影響が少なくありません。また、環境庁時代に環境基本法や環境影響評価などの法案づくりに携わったことや、千葉大学で長年続けている自治体の再生エネルギーの実態研究も、現在の研究のベースになっています。
ゼミでは学生にどのようなことを
教えていますか
未来カルテや脱炭素研究と同様の手法で、社会調査を通して実態をつかみ、どのような政策が必要かを考えています。単に検討するだけで終わるのではなく、最終的に必ず政策提言の形にするのがポイントです。成果は千葉大学が主催するSDGs日本政策学生研究会で発表するほか、記者発表をすることもあります。

倉阪ゼミでは研究テーマを学生が自分で選ぶ。学生同士のディスカッションも活発。学生からは「テーマによっては紛糾するくらい真剣な議論になる」「議論を通して社会調査の手法が共有できる」「各自のテーマ同士がリンクすることもある」といった声も。

7月刊行の新著『持続可能性の経済理論ーSDGs時代と「資本基盤主義」』(東洋経済新報社)は、持続可能性を取り扱える経済理論の枠組みを示す内容となっている。
千葉大学環境ISO学生委員会の顧問も
されていますね
学内の環境マネジメントシステムを運営する環境ISO学生委員会を立ち上げたのは2003年です。2004年から国立大学法人に移行することを機に、当時の磯野学長から大学として環境マネジメントの国際規格「ISO14001」の取得を目指すとの提言があり、私から学生主体で取得してはどうかと提案したのがきっかけです。学生主体とすることで実務教育としても機能しますし、光熱費の大幅な削減、SDGsへの貢献といった効果もあり、教育プログラムとして国際的な賞もいただきました。2009年からはNPO法人としても活動しています。

環境ISO学生委員会の授業。環境ISO学生委員会の活動は、一般教養科目の「環境マネジメントシステム実習」として単位化されている。
最後に学生へのメッセージを
お願いします
世の中は変えることができるという認識を持ってほしいと思っています。私がゼミやワークショップで政策提言にこだわっているのも、社会をより良くするという想いがあるからです。各自が各自の立場で世の中に対する働きかけをできる社会になれば、少しずつでも改善していく可能性が高まります。そんな社会を担う人材として巣立っていってください。