

大学院工学研究院 総合工学講座/
大学院融合理工学府 基幹工学専攻 電気電子工学コース
伊藤・下馬場・角江 研究室
患者さんを取り巻く社会環境を整え、
より良いケアの実現に貢献したい
諏訪 さゆり(すわ・さゆり)
千葉大学大学院看護学研究院教授。千葉大学大学院看護学研究科修士課程、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。東京女子医科大学看護学部講師や認知症介護研究・研修東京センターでの主任研修主幹を経て、2010年から現職。2021年より大学院看護学研究院長。

大学院工学研究院 総合工学講座/
大学院融合理工学府 基幹工学専攻 電気電子工学コース
伊藤・下馬場・角江 研究室
患者さんを取り巻く社会環境を整え、
より良いケアの実現に貢献したい

諏訪 さゆり(すわ・さゆり)
千葉大学大学院看護学研究院教授。千葉大学大学院看護学研究科修士課程、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。東京女子医科大学看護学部講師や認知症介護研究・研修東京センターでの主任研修主幹を経て、2010年から現職。2021年より大学院看護学研究院長。
少子高齢化が進み、社会課題となっている認知症高齢者のケア分野を研究する諏訪さゆり教授。
どうすれば高齢者や家族介護者にとってより良いケアになるのか、これまでの研究成果や、最新テクノロジー活用などの取り組みについて話を伺いました。
研究テーマについて教えてください
認知機能障害によって日常生活行為を一人で行えなくなる生活障害のある認知症高齢者のケアについて研究しています。認知症高齢者のケアは、ご本人や家族介護者だけでなく、医師や看護師といった専門職などもかかわっています。認知症高齢者をどのように捉えてケアすれば、自律と自立を支援できるのかという知見を深めるためにこの研究に取り組んでいます。
看護に興味を持ったのは、小学生の頃にナイチンゲールの伝記を読んで感動したのがきっかけです。大学進学時、千葉大学に国立大学初の看護学部が設立されていると知り、看護学の世界に進もうと決めました。その中でも高齢者看護に興味を抱いたのは、千葉大学入学後、高齢社会の課題を研究するサークルに参加し、対照的な2組の家族に出会ったことからです。1組は介護者が認知症高齢者に怒りをぶつけ、もう1組は介護者が優しく接していました。この差がどこからくるのだろうと思い、研究をした結果、家族介護には発展的な段階があり、介護者の認知症への理解が進むにしたがい、関係性が良くなっていくことに気づきました。博士論文では、この知見を踏まえ、介護者がどの段階なのかを知ることができるアセスメントツールを開発しました。
介護に段階があることがわかり、次に課題になるのは、具体的にどのようなケアをすればいいのかということです。WHO(世界保健機関)が公表している『国際生活機能分類』という本と出合ったのはそんなときです。この本により、ケアには治療をベースとした通常の医学的なアプローチのほか、スムーズに排尿できない認知症高齢者に対しては、トイレの扉を少し開けて見つけやすくするなど、環境の改善により自律と自立を支援するアプローチがあることがわかりました。現在はこの考えをベースに研究を進めています。
具体的にどのような研究に
結びついているのでしょうか?
まずは、認知症ケアのエキスパートを対象とした調査データを解析し、効果的なケアとその中でも家族介護者には困難なケアの特徴を抽出しました。これは論文発表したほか、認知症高齢者ご本人と家族介護者に広く知っていただくための書籍として出版もしています。また、こうした知見をより多くの人と共有できるようにデータベースの構築とケア知識の検索技術の開発に取り組んでいます。私はこれを「AIナーシング」と名付けていますが、いずれはウェブでの公開やアプリ開発、介護ロボットへの搭載なども視野に入れています。特に介護ロボットは、人間による介護との線引きやプライバシーの扱いといった様々な課題があるので、私の研究がより良い介護ロボットの開発に寄与できるといいなと考えています。

生活機能が低下した認知症高齢者についての研究成果を書籍やパンフレットとして発信。マンガを掲載するなど、わかりやすく工夫している。

介護ロボットの開発や社会実装に役立てるため、フィンランド、アイルランドの研究者と共同研究を行っている。「海外比較をすることで日本ならではの課題が見え、適切なテクノロジー活用のヒントになります」と諏訪教授。
ゼミはどのような雰囲気ですか
各自が個々にテーマを持ち、定期的に進捗状況の報告や、ディスカッションをしながら研究を進めています。少子高齢化が進んで、在宅での高齢者ケアは誰にとっても身近な課題ですが、祖父母が認知症になったことがきっかけでケアを探求したいと思った学生もいます。各自の経験がベースになっているので、それがモチベーションにつながっているのではないでしょうか。
最後に学生へのメッセージをお願いします
私の専門は看護学ですが、介護ロボットの開発に関連して、千葉大学や産業技術総合研究所の工学系の先生方、そしてデジタル先進国の北欧の研究者との交流が生まれ、自分の研究活動が発展したという実感があります。千葉大学は総合大学ですし、グローバルな環境も整っているので、学生のうちからネットワークをどんどん広げて、学際的に視野の広い社会人へと、自分で自分を育ててください。