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広報誌ちばだいプレス

大学院理学研究院 物理学研究部門 / 大学院融合理工学府 先進理化学専攻 物理学コース 北畑 裕之 教授
研究室訪問

大学院理学研究院 物理学研究部門
大学院融合理工学府 先進理化学専攻 物理学コース

非線形・ソフトマター物理学研究室

身の回りの様々な現象を物理学で
解き明かし、未来の応用に貢献

北畑 裕之(きたはた・ひろゆき)〈下段右から2人目〉
千葉大学大学院理学研究院教授。京都大学理学部卒業。論文博士(理学)。同大学理学研究科助手を経て、2008年に千葉大学赴任。理学研究科講師、理学研究院准教授を経て2020年10月より現職。

研究室訪問

大学院理学研究院 物理学研究部門
大学院融合理工学府 先進理化学専攻 物理学コース

非線形・ソフトマター物理学研究室

身の回りの様々な現象を物理学で
解き明かし、未来の応用に貢献

千葉大学 大学院理学研究院 物理学研究部門 / 大学院融合理工学府 先進理化学専攻 物理学コース 北畑 裕之 教授

北畑 裕之(きたはた・ひろゆき)〈下段右から2人目〉
千葉大学大学院理学研究院教授。京都大学理学部卒業。論文博士(理学)。同大学理学研究科助手を経て、2008年に千葉大学赴任。理学研究科講師、理学研究院准教授を経て2020年10月より現職。

物理学の中で、全国的に見ても研究室が少ないと言われる非線形・非平衡物理学に取り組んでいる北畑裕之教授。具体的な研究内容や基礎研究に打ち込むことの醍醐味などについて話を伺いました。

研究テーマについて
教えてください

非線形・非平衡の物理について研究しています。明確な定義が難しいのですが、基本的には文字通り、線形でないもの、平衡でないものが非線形・非平衡だと捉えることができます。線形というのは比例の関係がある状態のことで、平衡というのは安定した状態のことなので、そうではないものということですね。例えば、炎の動きを想像してみてください。酸素などの条件があれば火は燃え続けますが、動き自体は常に変化をしていて不規則です。私たちはこのような動的な現象を日常的に目にしていますが、実はメカニズムがまだ解明されていない現象も少なくありません。また、化学反応で自発的に変化や振動が生じるようなケースも研究対象で、一見するとどう理解すればいいのかわからない現象を物理学で解明していくのが、私たちの研究の大きな目的です。物理といえば、おそらく多くの人は素粒子や宇宙といったテーマを連想されると思います。それらに比べると、非線形・非平衡物理学はまだまだ新しい分野で、全国の大学でも研究室自体の数が限られていますが、逆に言えばそれだけ未知の可能性を秘めている分野でもあります。

非線形振動 炎の揺らぎ 画像

このような炎の揺らぎも非線形振動の1つ。2つの炎での実験では、距離を近づけると炎は両方とも高く上がり、距離を離すと炎は交互に高くなる。

研究の醍醐味や
やりがいは何ですか

2つあります。1つめは、仕組みがわからない現象を研究で解き明かして理解できるようにすること。これは研究者としての喜びです。私はもともと物理に限らず理系全般、特に自然や生物、数学などが好きでした。非線形・非平衡物理学の研究は、自然界の現象も扱いますし、分析には数理モデリングも使います。また、研究室名にもなっているソフトマターは、分子の形状により構造が変化しやすいものを指しますが、例えば人間の細胞などもソフトマターと捉えることができるので、生物にも関係してきます。自分がもともと好きだった分野を幅広く扱えるのが、非線形・非平衡を研究する1つめの醍醐味です。

2つめは、基礎研究の可能性の大きさです。基礎研究というのは、応用に直結していないので、一見すると「なんの役に立つの?」と思われがちです。しかし、基礎研究をしっかりと積み重ねることで、結果的に新しいものを生み出すことにつながっていきます。私の研究室でも、これまで医学や工学、企業の製品開発など、様々なお声掛けをいただき共同研究を行いました。なかには人工臓器への応用の可能性があるものもあります。自分の研究がいずれ社会の役に立つという期待が持てるのは、基礎研究の大きなやりがいだと感じています。

非線形性 BZ反応 画像

数種類の化学物質を混ぜた溶液を放置すると、円や渦巻の模様が自然に現れる「BZ反応」も、非線形性が重要とされる現象の1つ。

学生へのメッセージを
お願いします

学問はやらされていると楽しくありませんが、自分が好きなことなら進んでやろうという気持ちになりますし、それ自体がモチベーションになります。学生生活を実りあるものにするためにも、自分が楽しんで研究できるテーマを見つけるという意識を大事にしてください。

また、コロナ禍の今だからこそ、いろんな人との交流を広げることをお勧めします。オンラインでもかまいませんし、むしろオンラインなら世界中の人と交流するチャンスだとも言えます。視野も広がり、研究に関する情報も入るので、閉じこもらずに世界に目を向けましょう。