

大学院医学研究院 先端研究部門 高次機能治療学研究講座
実験免疫学教室
免疫研究を通して千葉大学独自の
がん免疫療法の開発を目指す
木村 元子(きむら・もとこ)〈写真右端〉
千葉大学大学院医学研究院教授。東京理科大学基礎工学部卒業。同大学大学院生命科学研究科修士課程、千葉大学大学院医学研究院博士課程修了。米国国立がん研究所留学を経て、2014年に千葉大学赴任。2021年より現職。

大学院医学研究院 先端研究部門 高次機能治療学研究講座
実験免疫学教室
免疫研究を通して千葉大学独自の
がん免疫療法の開発を目指す

木村 元子(きむら・もとこ)〈写真右端〉
千葉大学大学院医学研究院教授。東京理科大学基礎工学部卒業。同大学大学院生命科学研究科修士課程、千葉大学大学院医学研究院博士課程修了。米国国立がん研究所留学を経て、2014年に千葉大学赴任。2021年より現職。
生命の仕組みへの興味から免疫学と出合い、以来、一貫して免疫に関する基礎研究を続けている木村元子教授。
中山学長との縁や免疫研究の魅力、最新の研究成果などについて話を伺いました。
研究テーマについて
教えてください
研究室名にあるように、実験を通して新たな免疫システムの発見とそれを利用した疾患の制御を目指しています。免疫研究には幅広いテーマがありますが、そのなかで私が取り組んでいるのが、T細胞についての研究です。T細胞は免疫の司令塔とも言われ、私たちの体を守るのに欠かせない大切なものですが、その働きに異常をきたすと、アレルギーや自己免疫疾患の発症、腫瘍形成の原因にもなり得ます。T細胞の分化や機能メカニズムを解き明かすことは、新たな治療法につながる可能性を秘めています。
現在、特に注力しているのは、免疫本来の力を利用してがんを攻撃する治療法である「がん免疫療法」の開発に関する研究です。免疫システムは、体内に入ってきたウイルスなどの異物を攻撃して自分を守ることが知られていますが、T細胞はがん細胞から絶えず刺激を受けると、疲弊して機能しなくなるという特徴があります。これに対し、CD69というたんぱく質を人為的に欠損させたT細胞を用いると、疲弊が起こりづらく、がんを攻撃する力を高めることでがん細胞の増大を抑えられることが実験でわかってきました。現在はこの研究を応用した千葉大学独自のがん免疫療法の確立を目指しています。
また、これ以外にも、胎児期につくられた特別なT細胞がどのような役割を担っているかを解き明かす研究など、新たな免疫システムの発見を目指した研究にも取り組んでいます。
免疫研究の魅力は何ですか
誰も知らない現象や仕組みを発見できることが大きな魅力です。私は大学時代に生命科学を学び、そこで免疫学に出合いましたが、最初から免疫を研究しようと思っていたわけではありません。もともと生き物や自然に興味があったので、生命のメカニズムに関することを学びたいという気持ちで東京理科大学に入学し、たまたま私が在学中に生命科学研究所が設立されたことで、免疫を研究する機会に恵まれたのがきっかけでした。この研究所の立ち上げに関わっていたのが、千葉大学出身で免疫学の世界的権威である多田富雄先生と、現千葉大学長の中山俊憲先生。そういう意味では、私が免疫学を志した時点で、千葉大学とは深い縁があったのだと思います。
免疫学に出合って以来、一貫して免疫研究に携わっていますが、免疫システムは驚くほど精緻で、知れば知るほど新たな発見があり、奥が深い学問です。私は実験を通した基礎研究を行っていますが、先ほどのがん免疫療法の例のように、研究成果がいずれ人の役に立つと思うと、研究者としてやりがいを感じます。

全てのT細胞は胸腺で分化する。実験免疫学教室では、T細胞の発生や分化のメカニズムと、T細胞が関わる疾患との関連について研究が行われている。

CD69欠損マウスでの実験結果。腫瘍の増大や肺への転移が抑制されていることがわかる。千葉大学ではこの結果をもとに、独自のがん免疫療法を開発中。
学生へのメッセージを
お願いします
研究者を志すなら、興味のあることや好きなことを見つけて、貪欲に取り組むことが重要です。そのうえで、人との縁を大切にしてください。私の場合は、学生時代に出会った多田先生と中山先生に免疫学研究へと導いていただきました。また、千葉大学で博士課程を修了した後に8年間留学した米国国立がん研究所では、議論する重要性を学びました。私は研究室の学生たちにどんどん意見を言うように指導していますが、これは米国留学の経験があったからです。もし相手と違う意見でも、お互いの意見を伝えることで相互理解も進みますし、視野も広がります。ぜひ積極的に人と関わってください。