慢性炎症の原因となるタンパク質を新たに特定~ぜんそくなどの慢性炎症性疾患の新たな治療法開発に期待~
2025年12月12日
研究・産学連携
千葉大学大学院医学研究院 木内政宏助教と平原潔教授らの研究グループは、「組織常在性記憶CD4+T細胞(CD4+TRM細胞)」注1)が肺や腸などの組織に長期間とどまるメカニズムと、炎症性サイトカインの持続的な産生は、遺伝子の働きを調節するタンパク質である転写因子Hepatic Leukemia Factor(HLF)注2)によって制御されていることを新たに特定しました(図)。
今回の成果は、ぜんそくや関節リウマチなどの疾患に見られる慢性炎症の発症の仕組みを分子レベルで解明したものであり、HLFを標的とした新しい治療法の開発につながる可能性が期待されます。
本研究成果は2025年12月11日(米国東部標準時間)に国際科学誌Scienceに公開されました。
■用語解説
注1)組織常在性記憶CD4+T細胞(CD4+ TRM細胞): 慢性的な感染や炎症により、皮膚、肺、腸などの組織に誘導され、長期間組織内に定着するCD4+T細胞。病原体の再感染時に迅速かつ局所的な免疫応答を担っているが、炎症を慢性化させる一因となる。
注2)Hepatic Leukemia Factor(HLF): 特定の遺伝子の発現を制御するタンパク質を転写因子と呼ぶ。転写因子の一種であるHLFは、肝臓の細胞が正常に機能するのに重要な役割を担っている。また、従来は造血幹細胞でHLFの発現が知られていたが、本研究により組織常在性記憶CD4+T細胞の形成と炎症促進にも関わるタンパク質であることが明らかとなった。
■論文情報
タイトル:Hepatic leukemia factor directs tissue residency of proinflammatory memory CD4⁺ T cells.
DOI:10.1126/science.adp0714
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図:HLFはぜんそくを誘導する炎症性CD4+TRM細胞を制御する