慢性心不全の運動療法の効果は人により異なる可能性が
―45%の患者では明確な効果を示すが、15%の患者では逆効果かも―

2024年02月20日

研究・産学連携

 千葉大学大学院薬学研究院の樋坂章博教授、同医学研究院の安西尚彦教授、慶應義塾大学医学部の佐藤泰憲教授らの研究チームは、運動療法の効果を慢性心不全の患者2,130人で調べた過去の臨床試験HF-ACTIONの結果を新しい方法で再解析し、人により運動療法の効果は大きく異なる可能性があることを示しました。解析によると、β遮断薬注1)の使用、最高血圧と最低血圧の差、ヘモグロビン値などが運動療法の効果に影響する可能性があり、表1に示す方法で計算したスコアが高い(8点以上)、45%程度を占める患者さんでは生存率の改善が期待できる一方で、それ未満の場合には効果は不明確となり、さらに非常に低いスコア(5点以下)である15%程度の患者さんの場合には、運動療法により生存率がかえって低下する可能性が示されました(図1)。

 一般に慢性心不全のすべての患者さんに運動は効果があるとされ推奨されていますが、病状を悪くする可能性もあるとの報告は本研究が世界で初めてです。将来的に治療法選択の最適化につながる可能性がある一方で、この研究は特定の臨床試験の参加者に限定された解析であるため、スコアを実際の医療に適用するには、今後しっかりとした検証が必要です。現在継続中の運動療法の是非については必ず専門医にご相談ください。

 本研究成果は、千葉大学大学院薬学研究院の副島裕佳子を筆頭著者とし、2024年1月31日に、学術誌Frontiers in Cardiovascular Medicine で公開されました。

注1)β遮断薬:交感神経の緊張を和らげ心拍数を下げる薬で、慢性心不全の治療によく用いられる。
注2)BMI:体重(Kg)を身長(m)の2乗で除した値で、25以上は一般に肥満体型とされる。