標的外のタンパク質の付着を防ぐラテックス粒子を合成~精度と信頼性の高い検査キットの開発に期待~

2025年11月10日

研究・産学連携

 千葉大学大学院融合理工学府博士後期課程2年の丹羽亮太氏、同大大学院工学研究院の青木大輔准教授、谷口竜王教授らの研究チームは、ラテックス注1)粒子と呼ばれる樹脂からなる微小な粒子の表面に、ブラシ状に取り付けた「鎖状の高分子(高分子鎖)」の密度が、タンパク質の吸着しやすさに及ぼす影響を検討しました。その結果、生体膜の構造に似た「グラフト鎖」を粒子の表面に高密度に配置することで、標的外のタンパク質が付着する現象「非特異吸着」をほぼ完全に抑制できることを明らかにしました。本研究で得られた知見は、インフルエンザ検査キットなどの体外診断用医薬品(In Vitro Diagnostics:IVD)注2)において、精度と信頼性の高い製品開発につながることが期待されます。

 本研究成果は、2025年10月11日に、アメリカ化学会が発行する学術誌Langmuirにて公開されました。

■用語解説
注1)ラテックス:元来はゴムの樹から採取される乳白色の粘性樹液を指していたが、合成ゴムを工業的に製造することが可能になった現在では、高分子微粒子の水分散体をラテックスと呼ぶ。
注2)体外診断用医薬品:医薬品医療機器等法では、「専ら疾病の診断に使用されることが目的とされている医薬品のうち、人又は動物の身体に直接使用されることのないものをいう。」と定められている。身近な例としては、自宅で行えるCOVID-19やインフルエンザウイルスの抗原検査キットなどがある。

■論文情報
タイトル:Controlled Grafting Density of Zwitterionic Polymer Brushes for Enhanced Antifouling Properties of Polymer Particles
DOI10.1021/acs.langmuir.5c03689

  • 図 2:コア-シェル型のラテックス粒子の化学構造と走査型電子顕微鏡写真.