新型磁性体「交替磁性体」の磁気構造の新たな測定法を発見!~未来型電子材料で、高速・省エネメモリーの実現へ!~

2025年12月11日

研究・産学連携

 千葉大学大学院工学研究院のピーター クリューガー教授は、近年発見された磁性体「交替磁性体注1)」の磁気構造を、原子レベルで測定できる新しい方法を発見しました。本研究では、光がらせん状に進む特殊な光(円偏光)を用いた「共鳴光電子回折(RPED)注2)」という手法を応用することによって、交替磁性体の磁気構造を直接検出することに成功しました。
 本研究成果により、表面や薄膜など、従来の手法では評価が難しかった3次元構造以外の物質でも、交替磁性体であるかどうかの測定が可能となります。今後、未来型電子材料「交換磁性体」を用いた省エネ型情報デバイス等の実現に向けた材料開発への応用が期待されます。
 本研究成果は、2025年11月6日に学術誌Physical Review Lettersで公開され、掲載論文の中でも特に注目度が高く、幅広い科学コミュニティに影響を与える研究と判断された論文を紹介する特集枠“Featured in Physics”にて紹介されました。

■用語解説
注1)交替磁性体(オルターマグネット):実空間でも波数空間でも磁気の符号が交替している新規の磁性体の種類。スピンの向きが規則的に交互になる新しい磁性体で、電気抵抗や磁場への反応が特殊。スピントロニクス技術への応用が期待される未来型電子材料。
注2)共鳴光電子回折(RPED):物質の異常散乱因子を活用して、価電子の空間秩序構造を観測する手法。特に軟X線領域では、3d遷移金属元素のL吸収端を観測でき、強相関電子系や磁性体の物性を解明するための重要な実験手法となっている。


■論文情報
タイトル:Circular dichroism in resonant photoelectron diffraction as a direct probe of sublattice magnetization in altermagnets
DOI:10.1103/pl1p-v5rs

  • 図1: (a) MnTeの結晶構造(赤・青:Mn, 黄:Te)及び交替磁性体の状態におけるスピン構造(矢印)。  (b) 上図:XMCD効果のため、左円偏光の場合には上向き原子(A)は下向きスピン原子(B)より共鳴光電子放射が強く、黄色矢印の方向に強いPEDピークが生じる。 下図:右円偏光の場合には逆で、B原子の放射のほうが強く、PEDピーク方向が180度で回転された。その結果、CD(右・左の差)は有限である。

    図1: (a) MnTeの結晶構造(赤・青:Mn, 黄:Te)及び交替磁性体の状態におけるスピン構造(矢印)。
    (b) 上図:XMCD効果のため、左円偏光の場合には上向き原子(A)は下向きスピン原子(B)より共鳴光電子放射が強く、黄色矢印の方向に強いPEDピークが生じる。
    下図:右円偏光の場合には逆で、B原子の放射のほうが強く、PEDピーク方向が180度で回転された。その結果、CD(右・左の差)は有限である。