うつ病患者の脳内ネットワークにおける「独自性」の低下を発見~個人の脳の「指紋」を指標とした新たな客観的診断法の開発に期待~

2026年02月10日

研究・産学連携

 千葉大学子どものこころの発達教育研究センターのSiti Nurul Zhahara特任研究員、平野好幸教授、清水栄司教授、および広島大学大学院医系科学研究科の岡田剛教授らの共同研究グループは、うつ病患者を対象とした安静時機能的MRI注1)から、個人の独自性を示す脳の領域間の機能的なつながりのパターンである「機能的コネクトーム(Functional connectome; FC)独自性注2)」を解析しました。その結果、健常者と比較して有意に低下していることを明らかにしました。
 「脳の指紋」とも呼ばれるこのFC独自性の低下は、特に前頭頭頂ネットワーク注3)や感覚運動ネットワーク注4)において顕著であり、うつ病の症状が重いほど、脳の独自性が失われているという相関関係も示されました。本研究は、診断の難しいうつ病に対して、客観的かつ再現性の高い神経画像マーカー注5)を提供し、将来的な診断や個別化医療の進展に寄与することが期待されます。
 本研究成果は、学術誌Journal of Affective Disordersに2026年1月4日(現地時間)にオンライン公開されました。

■用語解説
注1)安静時機能的MRI:機能的磁気共鳴画像(functional Magnetic Resonance Imaging)を用いて、安静時の脳血流の変化を測定することにより脳の活動を観測することが可能。何か特定の作業をしているときの脳の動きを調べるfMRIに比べ、安静時fMRIはリラックスした状態での脳の活動を評価する。
注2)機能的コネクトーム(FC)独自性:脳の異なる領域間のつながりのパターンが、どれだけ他の人と異なり、同一個人内で一貫しているかを示す数値。「脳の指紋」の一つ。
注3)前頭頭頂ネットワーク:前頭皮質と頭頂葉をつなぐ安静時脳機能ネットワークで、注意の制御や意思決定など、高度な認知機能を担う脳のネットワーク。
注4)感覚運動ネットワーク:運動野や体性感覚野を含む安静時脳機能ネットワークで、身体感覚の処理や運動の制御を担う脳のネットワーク
注5)神経画像マーカー:疾患や症状、治療の効果を評価するための指標となる脳神経由来の画像データのこと。

論文情報
タイトル:Reduced functional connectome uniqueness on the whole brain and network levels as a clinically relevant and reproducible neuroimaging marker in major depressive disorder
著者:Siti Nurul Zhahara, Yusuke Sudo, Kohei Kurita, Eri Itai, Toshiharu Kamishikiryo, Hitomi Kitagawa, Tokiko Yoshida, Junbing He, Rio Kamashita, Yuko Isobe, Yuki Ikemizu, Koji Matsumoto, Go Okada, Eiji Shimizu, Yoshiyuki Hirano
雑誌名:Journal of Affective Disorders
DOI10.1016/j.jad.2025.121073

 

  • 図 「脳指紋」の概念(本人の識別性能が高いほど)