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大学院新入生の皆さんへ

掲載日:2014/04/11

 千葉大学大学院に入学された修士課程、博士課程、専門職学位課程の皆さん、入学おめでとうございます。向学心、研究心にあふれる皆さんを国内のみならず、世界各国からお迎えできましたことを誇りに思っております。教職員一同も、皆さんの目標達成に協働できることを楽しみにしています。

 また、ご家族の方々のご臨席に心より感謝申し上げますとともに、入学された方々の学問への旅立ちを温かく見守ってくださるようお願い申し上げます。

 大学院に入学された皆さんは、これから学術の理論および応用を研究し、高度の研究能力や専門学識、及び専門性の高い職業を担うための卓越した能力を培っていただきたいと思います。

 皆さんがこれから始める研究活動には、その内容から大きく基礎研究と応用研究とに分けられます。基礎研究は、特別な応用、用途を考慮することなく、現象や観察可能な事実に関して新しい知識を得るために行われる知的活動です。それは、私たちの知的好奇心を満足させてくれるだけではなく、文化の創成や応用研究へのシーズとなります。

 応用研究は、特定の目標を定めて実用化の可能性を確かめる研究や、既に実用化されている方法に関して新たな応用方法を探索する研究で、その成果が世の中に役立つ知的活動です。

 近世になって研究活動がヨーロッパを中心として盛んになりはじめると、その研究成果が人類を不幸に陥れるものもあることが分かってきました。そのため19世紀になると研究活動には人類の幸福を妨げないという常識的な倫理基準が暗黙のうちに認められるようになってきました。しかし、その倫理基準も、時代の要求を強く反映することになりました。

 以前、イギリスでクローン羊が作製されたときには、ヒトへの臓器移植・再生医療などへの応用が期待されました。しかし、クローン人間の作製に繋がるとして、一時的にでもクローン技術のヒトへの応用が禁止されました。幸いiPS細胞の作製という研究成果が出たので、ヒトクローン作製技術を使うことなくiPS細胞を用いて移植・再生医療などへの応用研究が盛んに行われるようになっています。

 そこで文部科学省は、研究活動における基本的な倫理基準に関する指針を示し、千葉大学もその指針に沿った研究者の行動規範を規定しています。これから研究活動を始められる皆さんには、改めて「千葉大学における研究者の行動規範」を遵守していただくよう、強く望みます。

 このようなことを改めて皆さんにお話しするのも、研究データの改ざんや捏造、他人の論文の剽窃といった、科学に対する信頼を揺るがすような問題が度々起きているからです。

 最近では、STAP細胞の作製という研究成果が発表され、iPS細胞を凌駕しかねないという画期的な研究成果である可能性が高いことから、大変注目されました。しかし、STAP細胞の作製において研究者の行動規範が守られていないという事実が明らかにされ、作製者の人間性への不信感からSTAP細胞の作製自体が疑われています。

 私は、研究活動における内容とその成果は、研究者の人格の表れであると思っています。研究課題の解明に向けて、どのように研究を進めていくか、得られた研究成果をどのように論文にまとめていくかという過程において、その研究者の人間性が表れてきます。そのため研究者にとって、研究成果を上げることも重要ですが、自らの人間性を高めることも重要だと思っています。

 これから研究活動を始める皆さんは、研究者の行動規範を遵守するとともに、人格面でも鍛錬を積んでほしいと思います。そのためには、指導を受ける先生方から、単に技術的な指導ばかりでなく、人間性や研究に対する哲学的な面での指導も受けるようにしていただきたいと思います。この点は、専門職学位課程の皆さんにとっても同様です。

 皆さん自身の人間性をさらに高めるには、専門分野の「知識」を増やすことに加えて「教養」を高めることが必須です。海外留学をして、民族や生活様式の異なる国の文化・芸術に深く触れて高い教養を身に付けたり、価値観の異なる外国人研究者や実務家と一緒になって活動をすることにより、人間性を大きく成長させてください。

 皆さんには、これから学術の理論、高度の専門学識を究めていただき、将来、研究者や実務家として世界の第一線で活躍されることを願っています。そのためには、真摯な探究心、研究心を持ち続けるとともに、ご自身の人格を磨いていくことが重要です。「つねに、より高きものをめざして」、グローバル化社会の先頭に立って、学問や研究の成果を社会に還元するよう、不断の努力を惜しまず、目標に向かって邁進してください。

 皆さんのこれからの大学院生活が、実り多きものとなることを心から願って、告辞といたします。

平成26年4月11日
千葉大学長 徳久 剛史