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大学院入学式 学長告辞

掲載日:2015/04/10

学部入学式告示

 千葉大学大学院に入学された修士課程、博士課程、専門職学位課程の皆さん、入学おめでとうございます。向学心、研究心にあふれる皆さんを国内のみならず、世界各国から迎えられたことを誇りに思っております。教職員一同も、皆さんの目標達成に協働できることを楽しみにしています。また、ご家族の方々のご臨席に心より感謝申し上げますとともに、入学された方々の学問への旅立ちを温かく見守ってくださるようお願い申し上げます。


 大学院に入学された皆さんは、これまで受けてきた高等教育の集大成として、学部での経験と実績を基に学術の理論及び応用を研究し、高度の研究能力や専門学識を究め、専門性の高い職業を担うための卓越した能力を培っていただきたいと思います。


 皆さんがこれから始める研究活動には、その内容から大きく基礎研究と応用研究とに分けられます。基礎研究は、得られる成果に関して特別な応用や用途を考慮することなく、現象や観察可能な事実に関する基本原理の解明や新しい知識を得るために行われる知的活動です。その成果の中からは、新しい文化の創成に繋がるものや応用研究へのシーズとなるものが出てきます。応用研究は、特定の目標を定めて実用化の可能性を確かめる研究や、既に実用化されている方法に関して新たな応用方法を探索する研究で、その成果が世の中に役立つ知的活動です。一般的には基礎研究の成果の延長上に応用研究がありますが、どちらも人類の幸福と発展のためには不可欠です。


 世界は、21世紀に入り航空や海運の航路増大、情報通信技術の発達により、あらゆる面でのグローバル化が急速に進展してきています。一方で、地球規模の環境汚染や新興感染症の危険などの諸課題も発生してきています。特に我が国では、少子高齢化が進み、超高齢社会を迎えて、労働人口の減少や高齢化による医療面での問題が大きくなっています。また、4年前には東日本大震災を経験し、エネルギー政策、災害への備えなど喫緊の課題も山積しています。これらの課題を乗り越え人類が持続的に発展するためには、それぞれの問題に関するイノベーションの創成が急務となっています。そのため現在では、応用研究が脚光を浴びているのが実情です。


 このように時代の要請にそった応用研究が盛んになると、その研究成果が人類の幸福と発展ばかりでなく、結果的に人類を不幸に陥れるものもあることが分かってきました。また、研究成果によっては社会の産業や経済に直接的に結び付くことから、自己利益に関連した研究者の倫理違反が増えてきています。特に、研究機器や情報技術の発達により、データのねつ造や改ざんなどの倫理違反が見られるようになり、研究者の常識的な倫理基準だけでは対応しきれなくなってきました。そこで千葉大学では、独自に研究者の行動規範を定めて倫理基準の適正化を図ってきました。さらに文部科学省が、最近のSTAP細胞の作製に関する問題などへの対応から新たなガイドラインを策定したことを踏まえて、研究活動上の不正行為を防止する体制をさらに強化しています。これから研究活動を始められる皆さんには、改めて「千葉大学における研究者の行動規範」を遵守していただくよう、強く望みます。


 私は、研究活動の内容と成果は、研究者の人格の表れであると思っています。研究課題の解明に向けて、どのように研究を進めていくか、得られた研究成果をどのように論文にまとめていくかという過程において、その研究者の人格が表れてきます。そして、人格的に優れた研究者のみが、生涯にわたり研究活動を続けていくことが出来ると思っています。研究者にとって、常に素晴らしいデータを出し続けることは不可能です。データの出ない時期に如何に研究活動を継続していくかという点に、その研究者の人格が強く反映されると思います。ですから研究者にとっては、素晴らしい研究成果を出すことも重要ですが、それ以上に自らの人格の修養に努めることが大切だと思っています。


 これから研究活動を始める皆さんは、「千葉大学における研究者の行動規範」を遵守するとともに、人格面でも修養に努めてほしいと思います。人格の修養には、人生の師となる方から受ける薫陶が大変重要です。皆さんが指導を受ける先生方から、単に技術的な指導ばかりでなく、研究に対する哲学的な面での指導も受けるようにしていただくと良いでしょう。この点は、専門職学位課程の皆さんにとっても同様です。皆さんが志した研究の道で、技術ばかりでなく精神面まで指導してくれるメンターといわれる指導者に巡り合えたら、大学院へ進学した目的の半分は達成していると思ってください。さらに、共同研究者や海外の研究者などからも、積極的に人生の師となる方を探してください。


 また、人格の修養には、専門分野の「知識」を増やすことに加えて、豊かな「教養」を身に付けることも大切です。そのためには、物事の本質を知り、創造的に考える能力である「知性」を磨くことが必要です。その点において研究活動は、単に皆さんの知的好奇心を満たすだけでなく、創造的に考える能力を高めることから知性を磨くことにも繋がります。与えられた研究課題の解明に向けて、これまで培ってきた知識と知能を最大限に駆使して、研究活動を続ける中から、皆さんの知性が磨かれます。この磨き抜かれた知性を基に、幅広い教養を身に付けるように努めてください。海外留学をして言語や生活様式の異なる国の文化・芸術に深く触れたり、価値観の異なる外国人研究者や実務家と一緒になって研究活動をすることも良いでしょう。そのような活動の中から興味ある事象を見出したら、研究活動と同様に知性を活用して勉強することにより、自己の教養として身に付けるようにしてください。


 皆さんには、これから学術の理論、高度の専門学識を究めていただき、将来は、研究者や実務家としてグローバル化社会の第一線でリーダーとして活躍されることを願っています。そのためには、「つねに、より高きものをめざして」、真摯な探究心、研究心を持ち続けるとともに、研究活動をとおして「知性」を磨き、豊かな教養を身に付ける努力を続けることにより、ご自身の人格の修養に努めてください。これからの大学院における研究生活が、実り多きものとなることを心から願って、告辞といたします。

平成27年4月10日
千葉大学長 徳久剛史