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平成30年(2018年)学長年頭の挨拶

掲載日:2018/01/04

年頭の挨拶

 新年あけましておめでとうございます。皆様も良いお年を迎えられたことと思います。平成30年の新年にあたり所感とともに本年の目標を述べて、ご挨拶とさせていただきます。

 全国の国立大学では、法人化への機構改革が行われた平成16年度以降、国からの運営費交付金が継続的に減額され、かつ人事院勧告や地域手当等による給与面での変動に対する政府からの財政的補てんがなくなり、経営面では非常に厳しい状況が続いています。そのような経営環境の中でも本学に対する国からの期待は大きく、第3期中期目標期間の始まる平成28年度から国立大学の機能強化の方向性に関する分類で、本学は「卓越した成果を創出している海外大学と伍して、全学的に世界で卓越した教育研究、社会実装を推進する取組を中核とする国立大学」の群に入ることになりました。

 そして、国際教養学部や教職大学院の新設、大学院における教学組織と研究組織を分離させた融合理工学府、人文公共学府や4つの研究院の設置等の様々な組織改革、国際未来教育基幹とグローバルプロミネント研究基幹の創設など、世界で卓越した教育研究を推進するための様々な改革を行いました。国際化という観点からは、卓越した成果を創出している海外大学である米国のカリフォルニア大学サンジェゴ校、ドイツのシャリテ医科大学やタイのマヒドン大学に研究および教育拠点を設置しました。第3期中期目標期間では、皆さんと共に作り上げてきたこれらの仕組みを人材育成と学問の発展・継承に向けて大胆に活用していこうと考えています。

 さらに最近では、教職員の皆さまの日頃の努力により教育研究面でいくつかの輝かしい成果を挙げています。例えば、西千葉地区では地域科学技術実証拠点整備事業の支援を得て地方創生のための産学連携拠点として千葉ヨウ素資源イノベーションセンターの設立とその活動拠点の建設が行われていますし、科研費の新学術領域研究の獲得を基盤として人文社会科学系のグローバル関係融合研究センターが立ち上がりました。亥鼻地区では国立大学改革強化推進補助金事業の支援を得て行ってきた亥鼻キャンパス高機能化構想の成果が高く評価され多くの教職員ポストが基幹経費化されていますし、附属病院が国立大学病院では6施設目となる臨床研究中核病院に認定されました。また、大学の世界展開力強化事業やCOC事業をはじめ多くの文部科学省予算で行った事業も最高の評価を受けています。本学の入学者選抜試験志願者数が2年連続で国立大学第1位となったことも大変喜ばしい出来事であったと考えています。

 しかしながら、第3期中期目標期間においても引き続き運営費交付金が減額され続けており、本学では定年退職教員の補充人事を遅らせることで対応してきました。その結果として若手人材の雇用減が本学の教育や研究活動に大きな影響を与え始めています。すでに全国の国立大学法人は本学と同様に大変厳しい経営状況に陥っており、人材育成面での機能低下ばかりでなく引用頻度の高い論文数などの研究成果面においても世界の進歩から大きく後れを取っています。国立大学の法人化は本来、大学独自の発展を即すための機構改革であったわけですが、各国立大学の機能強化に向けた改革のスピードが運営費交付金の減額のスピードに追い付いていないため、現時点では法人化のマイナス面ばかりが露呈するという状況となっています。

 若手人材の雇用に関しては、競争的研究費に付随する間接経費によるテニュアトラック教員の雇用増などが期待されましたが、国の財政難から間接経費の付く競争的研究費の総額があまり増えていません。また、外部予算を獲得するような経営努力をしても様々な制約により直接的に若手人材の雇用増に結びつけることが出来ていないのが実情です。そして来年度の国の予算案の状況や18歳人口の減少予測などからも、当面国立大学への国からの財政支援が増えることは期待できそうにありません。そのため私たち自身で何か抜本的な経営改革をおこなうことが必須の状況であると強く認識するようになりました。

 私は、このような経営面で大変困難な時期を逆に機能強化に向けた改革のチャンスととらえて、昨年のこの場で皆さんに二つの目標を述べさせていただきました。トリプルピーク・チャレンジにおけるトリプルピークスの一つ一つに「卓越大学院」を設置することと、人工知能・AIに関連して普遍教育として「データサイエンス科目」を開講するという二つです。「卓越大学院」に関してはすでにトリプルピークスの一つ一つに申請案が準備されており公募を待つばかりとなっています。「データサイエンス科目」の開講という点に関しては現在準備中ですが、平成30年度の概算要求事項としていた亥鼻地区への治療学人工知能(AI)研究センターの設置が内定しています。

 そこで本年は法人化の主旨に立ち返って、一つの国立大学法人として独自の経営改革に道筋をつけることを目標としたいと思います。具体的には、これまでの収益を目的とした取組みが一切出来なかった法人化前の国立大学としてのしがらみを解き放ち、収益を目的とした組織を立ち上げて本学の持つ資産や教育研究活動の成果物から収益をあげ、若手人材の育成や教育研究のさらなる活性化に資することを考えています。

 以上、平成30年の新年にあたり所感とともに本学の経営改革に道筋をつけるという目標を述べて、ご挨拶とさせていただきます。本年も本学のさらなる発展のためにご協力のほどよろしくお願い申し上げます。

平成30年1月4日
千葉大学長 徳久剛史