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平成28年度千葉大学公開市民講座「浮世絵あらわる!―房州・江戸・ヨーロッパ―」を開催しました

掲載日:2016/11/28

 高等教育研究機構高大連携地域貢献部門の地域貢献専門部会では、菱川師宣の画業を中心に浮世絵の草創期の歴史、房州に発した浮世絵がヨーロッパの人びとをなぜ魅了したのかなどについて、さまざまな角度から掘り下げることをテーマとして掲げ、本年度は以下の公開市民講座を開催しました。

「浮世絵あらわる!―房州・江戸・ヨーロッパ―」
講演1:房州から江戸へ -浮世絵の始祖菱川師宣と初期浮世絵の展開-/田辺 昌子氏(千葉市美術館 副館長)
講演2:ジャポニスム -ヨーロッパを魅了した浮世絵-/上村 清雄(千葉大学文学部 教授)
日 時:平成28年11月23日(水)13:00~15:00
会 場:工学系総合研究棟2 2階 コンファレンスルーム

 浮世絵の祖と位置づけられる房州保田(現在の千葉県鋸南町)に生まれた菱川師宣(?〜1694年)の活動を中心に江戸時代に展開した浮世絵の歴史をあとづけながら、浮世絵など日本美術が19世紀後半にヨーロッパの美術表現に多大な影響をおよぼし新たな造形を促したジャポニスム(Japonism, 日本趣味)の広がりまでを論じる講演を開催しました。
 前半では、田辺講師にご担当された千葉市美術館で2016年に開催したこのテーマを扱った日本初の展覧会「初期浮世絵展--版の力・筆の力--」の成果をご紹介いただきながら、刺繍によって絵を表す縫箔師の子として生まれた菱川師宣が、最初地元で家業を手伝う中で仏画などに親しみ、やがて江戸に出て風俗画に接して浮世絵の礎をいかに築いたかを説明していただきました。京都出身の町絵師が江戸に移り住み、活動するようになったと想像される時代に、なぜ師宣は安房出身と常に称したのか、その点に彼の自負を感じるという指摘がなされるなど、浮世絵の多彩な表現が庶民に愛され続けた理由を考えさせる刺激的な内容に富んだ講演がおこなわれました。
 後半では、上村講師が19世紀後半に浮世絵に接することができたヨーロッパの人びとが、明るい色彩に驚き、都市を見あげるあるいは見おろす大胆な視点、そして、障子や屏風などの垂直あるいは水平の線が画面にたくみにつくりだす空間の奥行きや広がりにいかに魅了されたかを解説しました。近代都市が誕生したこの時代にふさわしい造形表現を求めていた、モネ、ゴッホなどヨーロッパの芸術家にとって、浮世絵を中心とする日本美術はひとつの「啓示」と思えたであろうことをイメージの比較によって検討をおこないました。つづく質疑応答では、絵師、彫り師、刷り師など見事に分業がなされた浮世絵の制作過程について、用いられた紙について、そして鑑賞の仕方など、実際に江戸の人たちがどのように浮世絵に接したのか具体的な質問がなされました。募集期間中に定員に達するほど盛況で、参加者131名全員が真摯に熱心に学ぶ大切な機会をもつことができました。
 地域貢献専門部会では地域の皆さまの貴重なご意見をもとに、今後も公開市民講座を企画・開催してまいります。

当日の様子

講演の様子

会場風景