次世代の健康を守るオミックス予防医学
研究代表者
森 千里
共同研究者
①櫻井 健一、②サクライ ケンイチ、③SAKURAI, Kenichi、④予防医学センター、⑤准教授、⑥内分泌代謝学、予防医学
①江口 哲史、②エグチ アキフミ、③EGUCHI, Akifumi、④予防医学センター、⑤助教、⑥環境分析化学、毒性学
①山本 緑、②ヤマモト ミドリ、③YAMAMOTO, Midori、④予防医学センター、⑤助教、⑥疫学、公衆衛生学
①大竹 正枝、②オオタケ マサエ、③OTAKE, Masae、④予防医学センター、⑤特任助教、⑥栄養、農学
①渡邉 応宏、②ワタナベ マサヒロ、③WATANABE, Masahiro、④予防医学センター、⑤特任研究員、⑥情報工学,バイオインフォマティクス
※ ①氏名、②フリガナ、③ローマ字表記、④所属部局名、⑤職名、⑥専門分野


森 千里
MORI, Chisato
予防医学センターセンター長
専門分野:予防医学、環境生命医学、発生学、解剖学
1984年旭川医科大学卒業、同年京都大学医学部助手。カナダマニトバ大学医学部客員講師、米国国立衛生研究所客員研究員、京都大学助教授を経て2000年に千葉大学医学部教授に就任。2001年より千葉大学大学院医学研究院環境生命医学教授。2008年より千葉大学予防医学センター長兼任。東京医科大学客員教授。

どのような研究内容か?
妊娠中の母親をリクルートし、妊娠中の因子と出産後の子供の健康状態の関連を調べる研究です。母体因子の解析には、腸内細菌叢解析(メタゲノム)、血清中のメタボローム解析などのオミックス解析も行っています。また、生まれた子供に関しても臍帯や臍帯血細胞の網羅的DNAメチル化解析(エピゲノム)を行っています。その他、母親の健康状態や社会経済的状況のデータも収集しており、従来の疫学研究と最新のオミックス研究を組み合わせた出生コホート研究となっています。参加されている母親のプロフィールは、年齢、BMI、出産回数、喫煙率となっております。現在までに、母体の血中葉酸濃度と子供の臍帯DNAメチル化との関連や母体の環境化学物質(PCB)の血中濃度が母親のメタボロームプロフィールに与える影響などが明らかとなっています。

何の役に立つ研究なのか?
この研究を通して、子供の健康に影響を与える因子を同定し、より良い環境を見出していくとともに、子供の健康状態を反映するバイオマーカーを探索し、より早期の介入(予防的介入、先制医療)を可能にすることを目指しています。

今後の計画は?
母体側のデータおよび生体試料は採取が済んでおり、腸内細菌叢を含めて段階的に解析を進めていきます。また、子供の臍帯血も採取しており、こちらについてもメタボローム解析を含めてさまざまな解析を行っていく予定です。一部の試料では臍帯血単核球も分離しているので、こちらを用いた免疫学的な解析も計画しています。本研究の特徴の一つとして、子供の腸内細菌叢を経時的に解析することがあります。子供の腸内細菌叢は年齢とともに変化することが知られており、これが子供の健康にどのような影響を与えるのかを明らかにすることができればプロバイオティクスやプレバイオティクスといった手段を用いた予防医学に発展する可能性も考えられます。

関連ウェブサイトへのリンクURL

成果を客観的に示す論文や新聞等での掲載の紹介
1. Sakurai K, Miyaso H, Eguchi A, Matsuno Y, Yamamoto M, Todaka E, Fukuoka H, Hata A, Mori C. Cohort profile: Chiba study of Mother and Children's Health (C-MACH): cohort study with omics analyses. BMJ Open 6: e010531; doi: 10.1136/bmjopen-2015-010531, 2016
2. Eguchi A, Sakurai K, Watanabe M, Mori C. Exploration of potential biomarkers and related biological pathways for PCB exposure in maternal and cord serum: A pilot birth cohort study in Chiba, Japan. Environ Int. pii: S0160-4120(16)30716-4. doi: 10.1016/j.envint.2017.02.011., 2017
3. Miyaso H, Sakurai K, Takase S, Eguchi A, Watanabe M, Fukuoka H, Mori C. The methylation levels of the H19 differentially methylated region in human umbilical cords reflect newborn parameters and changes by maternal environmental factors during early pregnancy. Environ Res 157:1-8, 2017
4. Tachibana K, Sakurai K, Watanabe M, Miyaso H, Mori C. Associations between changes in the maternal gut microbiome and differentially methylated regions of diabetes-associated genes in fetuses: A pilot study from a birth cohort study. J Diabetes Investig. doi: 10.1111/jdi.12598

この研究の「強み」は?
次世代の健康を守るために、その母親世代から対象にした研究計画となっていることです。胎児期や出生直後の時期は、成人後の健康や疾病に大きな影響を持つことが明らかとなってきています。これは、「Developmental Origins of Health and Disease (DOHaD)仮説」といわれ、世界中の研究者から注目されている分野です。この研究はDOHaD仮説を基盤とし、従来の疫学的な手法に加え最新のオミックス解析を取り入れた研究となっており、今後様々な成果を発信できると考えています。

研究への意気込みは?
自分がしたい研究をして頂き、失敗を恐れず、常に前に一歩進む気持ちを持ち続けていると良い結果に結びつくと思います。
自分のやらなければいけない事(ミッション:Mission)を明確に認識し、後は熱意(パッション:Passion)を持って諦めずに進んで行かれることを望みます。

学生や若手研究者へのメッセージ
私の座右の銘は、「千里の道も一歩から」。
師を選ぶのも、その人の才能です。
ある分野(道)で成功した人は、他の道を選んでも成功すると言われてます。
妊娠中母体因子による子供の健康への影響
C-MACH(千葉こども調査)は胎児期および新生児期の環境要因が子供の健康に与える影響をオミックス解析と環境暴露因子解析を組み合わせて明らかにし、次世代の予防医学構築を目指します。
メタボローム解析
環境化学物質(PCB)に影響を受ける母体血中の代謝物を青で示す