特色ある研究活動の成果
Research

菌類・きのこを食べる「菌従属栄養植物」の菌根共生系の解明

菌類・きのこを食べる「菌従属栄養植物」の菌根共生系の解明

部分的菌従属栄養食植物のキンラン

大和 政秀准教授

大和 政秀

Masahide Yamato

教育学部准教授

専門分野:植物・菌類生態学

1992年千葉大学園芸学部卒業。1994年同大学院園芸学研究科修士課程修了。2005年博士(農学)。1994年(株)環境総合テクノス生物環境研究所研究員。2009年鳥取大学農学部助教。2013年千葉大学教育学部助教。2014年同准教授。
 植物と菌類の共生関係について主に生態的側面から研究を進めており、この共生系への理解を農業、林業、園芸などの人と植物のつきあいの中に活用していきたいと考えている。菌根共生は自然生態系の中で極めて重要であるにもかかわらず、一般にはまだまだ馴染みの薄い存在にとどまっているので、菌根共生を通じた自然の理解に関する教育的普及にも力を注ぎたい。千葉大学に着任してからは、教育学部の生物学担当の教員として、専門分野だけでなく広く生物学全体への理解にも努めている。

どのような研究内容か?

 ほとんどの植物は地下部において菌類と共生し、菌根を形成しています。通常の菌根共生では植物から菌根菌に光合成産物である炭素化合物が供給されますが、菌根菌から炭素化合物を受容する植物も知られ、このような植物は菌従属栄養植物と呼ばれています。菌従属栄養植物は様々な植物分類群の中にみられ、それぞれ独立して進化したと考えられており、生物進化の自在性を考える上でもたいへん興味深い対象です。様々な菌従属栄養植物を対象として、分子生物学的手法を用いた菌根菌の同定、安定同位体分析による物質動態の解明などを行い、菌根共生系の解明を目指しています。これまでに、ラン科植物のキンラン・菌根菌・樹木の三者共生の関係、タシロランと腐生菌(ナヨタケ科の菌類)の共生関係、ホンゴウソウ科のホンゴウソウ、ウエマツソウおよびサクライソウ科のサクライソウと特定のアーバスキュラー菌根菌との間の菌根共生などについて明らかにしてきました。また、近年は他大学との共同研究でこのような植物の菌根共生における遺伝子発現についても研究範囲を広げ、共生メカニズムの解明にも取り組んでいます。

何の役に立つ研究なのか?

 多くの菌従属栄養植物は希少植物として知られていますが、これには特定の菌類のみと共生関係をもつ宿主特異性が分布の制限因子となっていることが一因と考えられます。他の樹木に菌根共生している菌類が菌従属栄養植物にも共生していることも多く、このような場合には樹木の光合成産物が菌根菌の菌糸を通じて菌従属栄養植物に供給される三者共生の関係が成立しています。上記のサクライソウでは自生地の菌根菌群集に関する解析を行い、周辺樹木における共生菌の優占がサクライソウの分布の必要条件になっていることを明らかにしました。このような関係性の解明は生態系保全を検討する上で有用な知見をもたらすと考えられます。

今後の計画は?

 ラン科とツツジ科では光合成と菌従属栄養性を併せもつ部分的菌従属栄養植物の存在が知られています。林床に生育する草本植物には他にもこのような菌根共生を営む植物がいるのではないかと考え、探索を進めています。光合成植物間での炭素化合物のやりとりが明らかになれば、菌根菌のネットワークを通じて異種植物間で化学エネルギーを分け合う関係が成立していることになり、森林生態系を考える上でもたいへん興味深い課題であると考えています。

関連ウェブサイトへのリンクURL

http://www.chiba-u.ac.jp/general/publicity/press/files/2017/20170206.pdf

成果を客観的に示す論文や新聞等での掲載の紹介

主な研究成果は以下の論文に掲載されています。
Mycoscience (2005) 46:73-77
Ecological Research (2008) 23:329-337
Mycoscience (2011) 52:217-223
Mycorrhiza (2011) 21:631-639
Mycorrhiza (2016) 26:417-427
Molecular Ecology (2017) 26:1652-1669

学生や若手研究者へのメッセージ

 DNA解析技術の開発と普及に伴い、近年の生物学分野における研究の進展は著しく、様々な領域で今まではわからなかった謎が次々と解明されています。人工的な世界に埋もれていると生物に対する視点が希薄になりがちですが、様々な生物とのつながりの中で我々の生活は成り立っていることを今一度思い起こしてほしいと思います。歴代の著名な生物学者たちが知りえなかったことが容易に紐解けるようになった現代。生物への理解はこの時代を生きる我々の特権であるとも考えています。

キンラン・菌根菌・樹木の三者共生

様々な菌従属栄養植物