特色ある研究活動の成果
Research

革新的新素材!金属を含まない金色の塗料・プラスチックの開発

革新的新素材!金属を含まない金色の塗料・プラスチックの開発

右が金色調塗布膜を塗ったガラス板
左が"本物"の金の膜が付いたガラス板

星野 勝義

Hoshino Katsuyoshi

千葉大学大学院融合科学研究科教授

専門分野:電気化学、電子写真

1983年 東京工業大学工学部化学工学科卒、1988年 同大学総合理工学研究科電子化学専攻博士課程修了。日本学術振興会特別研究員、東工大工学部助手を経て1996年 千葉大工学部助教授。2004年 同教授。2008年 より現職。2013年より千葉大学ベンチャービジネスラボラトリー施設長を兼務。1988年 東工大より「手島記念研究賞(奨励賞)」、1993年 電気化学会より「進歩賞・佐野賞」、2005年 千葉大学工学部より「ベストティーチャー賞」、2006~2008年 千葉大学より「なのはな賞」、2008年 千葉銀行より「ちばぎんひまわり賞」、2009年 千葉大学より「オープンリサーチ学長賞(最優秀賞)」、2010年 日本画像学会より「学会賞」、2014年日本画像学会よりフェロー表彰。NHK(1999, 2005)、チバテレビ(2008)、テレビ朝日(2011, 2012)、日本テレビ(2012)、関西テレビ(2013)、BSジャパンテレビ(2013)、福島テレビ(2015)、テレビ東京(2016)に出演し、科学をわかりやすく解説しています。

どのような研究内容か?

2000年に日本の白川英樹博士が、「電気を通すプラスチックの発見・発明」によりノーベル化学賞を受賞されました。私たちのグループは、この電気を通すプラスチックに秘められた、まだ他の研究者が気付かない機能を発掘し、それを画像工学やエネルギー工学に応用する研究を進めています。少し前に、私たちはこのプラスチックには、金属を接触させるとまるで手品のようにプラスチックの色も金属の色も消えてしまい、透明で電気を通す新しいプラスチックとなるものがあることを発見しました。しかし残念なことに、その透明なプラスチックは十分に電気を通すことができませんでした。そこで、私たちはプラスチックの原料から見直しましたところ、その中から透明ではなく、金色や銅色になるものがあることを見つけました。この金色に輝くプラスチックは、化学の原点でもある錬金術を連想させます。化学の勃興期においては、化学的な手段を用いて安い金属から貴金属(特に金)を作り上げようとする研究が精力的に行われ、その過程で様々の化学物質が見出されました。私たちの金色調に輝く素材は、安い金属と金の関係よりももっと希薄な関係のプラスチックと金を結びつけたところに大きな特色があり、化学の夢を伝えられるような新素材であることを確信しています。

何の役に立つ研究なのか?

金、銀および銅色は、その独特の光沢感のために、(1)高級、優良および伝統を表現する色であり、高級自動車塗装・高級置物、メダル・トロフィーおよび工芸品・寺院塗装に利用されています。また工業的には、(2)光沢感がコピーできないことを利用して、偽造防止素材としての重要な役割を担っています。
 身の回りの生活空間に存在する実用の金属光沢膜は、実際に金属(アルミ、真鍮、亜鉛など)の微粉末が"糊"の中に分散された塗料を塗布することによって作られています。しかし、金属微粉末は比重が大きく、塗料中で沈降してしまうことが切実な問題となっています。また、塗布膜が重い、腐食が進行するといった問題もあり、大型車両への塗装が困難となっています。さらに、インクジェットプリンターへの利用は、金属微粉末がプリンターのノズルに詰まってしまうために難しい状況です。
 そこで、金属を用いない非金属の素材で金属光沢を発現させようとする試みが日本を中心になされています。ある種の非金属素材の"粉末"が期せずして金色に輝いたという例はいくつかありますが、金属を含まない素材で、塗料にすることができ、塗装することができ、そして金色調の自然な見えが持続する塗布膜が実現できる素材は存在しませんでした。私たちの素材がその初めての例であり、今後、上で述べた製品への応用展開を行いたいと思います。

今後の計画は?

工業的な応用の他に、"なぜ素材が金色なのか"の謎を解き明かしたいと考えています。おそらくはプラスチックの塗布膜の中で、素材の分子が巧妙に配列し、独特の金色光沢を発現しているものと考えられますが、この素材に秘められたパズルを一つ一つ解き明かし謎を解明したいと思います。

関連ウェブサイトへのリンクURL

星野研究室

成果を客観的に示す論文や新聞等での掲載の紹介

<新聞>
1. 『「金色光沢」金属不要-千葉大、新塗料を開発』, 日刊工業新聞(第1面), 2014年3月26日版
2. 『非金属なのに金色に輝く、可能性無限大の素材が誕生!』, 週アスPLUS , 2014年4月9日版
3. 『金属使わず「金属光沢」 星野教授(千葉大)が塗料を開発』, 塗料報知(第1面トップ), 2014年4月27日版

<受賞>
1. 2013年12月:色材協会国際会議 85th JSCM Anniversary Conference、ポスター賞
2. 2015年2月:千葉大学 優秀発明賞
3. 2015年4月:千葉大学なのはなコンペ、なのはな賞及び特別賞
4. 2015年11月:画像関連学会連合会第二回秋季合同大会、優秀ポスター賞及び日本画像学会編集委員長賞

ペットフィルムの上にも塗布できます

塗布液は濃青色をしていますが、塗布すると金色になります

金色調を実現していると考えられる素材の中の分子の配列