特色ある研究活動の成果
Research

注意欠如多動性障害(ADHD)の原因解明と古くて新しい治療の開発

注意欠如多動性障害(ADHD)の原因解明と古くて新しい治療の開発

研究の楽しみ

佐々木 剛診療講師

佐々木 剛

Sasaki Tsuyoshi

千葉大学医学部附属病院診療講師

専門分野:児童精神医学

2002年秋田大学医学部卒業。卒後,秋田大学医学部附属病院精神神経科,公立米内沢病院精神科,爽風会佐々木病院精神科,同和会千葉病院精神科を経て,2009年より千葉大学医学部附属病院こどものこころ診療部に勤務。2015年より現職。
医学博士,精神保健指定医。専門は,児童精神医学。
(児童思春期の気分障害・心的外傷後ストレス障害・注意欠如多動症の病因・診断・治療に関する研究)

どのような研究内容か?

注意欠如多動性障害(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder:ADHD)は,小児期の代表的な発達障害(生まれつき脳の発達が通常と異なっていると考えられるもの)の一つです。ADHDでは,「落ち着きが無い」「いつも失敗してしまう」「いつも忙しい」「イライラしてしまう」など困ってしまうことが沢山あります。順番付けや落ち着くための練習方法もありますが,どうしてもうまくいかない場合に,お薬による治療が行われます。ADHDのお薬による治療には,一般にメチルフェニデート徐放剤(コンサータ®),アトモキセチン塩酸塩(ストラテラ®),状況によっては気分安定薬等が用いられますが,患者さんによっては効果が十分でないこともあります。また,ADHDの原因はよくわかっていないのが現状です。
チペピジンヒベンズ酸塩(アスベリン®等)は1959年以来として既に日本で承認され,お医者さんによる処方が可能な薬剤で,咳を抑える働きを持っています。「咳のあるかぜ」の時など多くの子どものたちに処方されたことのあるお薬です。私たちは,昔からあるチペピジンヒベンズ酸塩にADHDの症状を改善する新しい効果があるのではないかと考えました。チペピジンヒベンズ酸塩のADHDに対する効果を調べることがこの研究の目的です(A)。また,ADHDの原因解明のために,健康なこどもたちとADHDで悩む子供たちに血液検査の協力をして頂き,ADHDの症状と「オキシトシン」というホルモンの関係を調べることとしました(B)。
Aの研究では,ADHDで悩むこども10人に協力して頂ききました。体調に問題のないことを確認した後に,チペピジンヒベンズ酸塩を4週間に内服して頂き,内服前後のADHDの症状を比較しました。
Bの研究では,内服治療をしていないADHD児23名,内服治療をしているADHD児13名と健康な子供22名のオキシトシンホルモンの値を測定し,ADHDの症状とその値を比較しました。
Aの研究では,10人全てが4週間内服でき,「落ち着きが無い」「いつも失敗してしまう」「いつも忙しい」「イライラしてしまう」などの症状が改善しました。また,10人全てに大きな副作用はありませんでした。
Bの研究では,ADHD児のオキシトシン値は,健常な子供と比較して低下していることがわかりました。更に内服をしていないADHD児のオキシトシン値は,内服治療をしているADHD児と比較して低下していることもわかりました。また,ADHD児のオキシトシン値が低いほど「失敗をしてしまう」症状が強い傾向があることもわかりました。

何の役に立つ研究なのか?

これらの研究結果は,ADHDの原因解明や今後の治療に有用な情報であると考えられます。

今後の計画は?

Aの結果からチペピジンヒベンズ酸塩にはADHDの症状を改善させる可能性が出てきましたので,さらに発展させた80人に協力をいただく研究「科研費:古くて新しい革新的ADHD治療 -チペピジン-」が進んでいます。

関連ウェブサイトへのリンクURL

千葉大学大学院医学研究院精神医学教室

成果を客観的に示す論文や新聞等での掲載の紹介

A: Tipepidine in children with attention deficit/ hyperactivity disorder: a 4-week, open-label, preliminary study. Tsuyoshi Sasaki, Kenji Hashimoto, Masaomi Iyo 他Neuropsychiatric Disease and Treatment, 10: 147-151 (2014) 

B: Decreased levels of serum oxytocin in pediatric patients with Attention Deficit/Hyperactivity Disorder. Tsuyoshi Sasaki, Kenji Hashimoto, Masaomi Iyo他, Psychiatry Research. 30;228(3):746-51. (2015)

この研究の「強み」は?

Aにおいては,ADHDの症状に苦悩する子供たちへの新たな治療になる可能性があり,BにおいてはADHDの診断補助となる可能性があります。

研究への意気込みは?

ADHDの症状に苦悩するたくさん患者さんが研究に協力してくださいました。その気持ちに応えられるように「目の前の患者さんに最善の医療を提供し,将来はさらに良い医療が提供できるよう努力する。」を理念に努力してまいります。

学生や若手研究者へのメッセージ

ご興味のある方は、是非ご連絡ください。

Decreased Levels of Serum Oxytocin in Pediatric Patients with ADHD

注意欠如多動性障害に対するチペピジンヒベンズ酸塩の治療効果に関するオープン試験