特色ある研究活動の成果
Research

ユーザー認知特性に適応したサポートシステムの基礎応用一体型研究プロジェクト

ユーザー認知特性に適応したサポートシステムの基礎応用一体型研究プロジェクト

研究代表者
一川 誠

共同研究者
①伝康晴、②デン ヤスハル、③DEN Yasuharu、④文学部、⑤教授、⑥心理言語学・計算言語学
①木村英司、②キムラ エイジ、③KIMURA Eiji、④文学部、⑤教授、⑥視覚心理学
①眞鍋佳嗣、②マナベ ヨシツグ、③MANABE Yoshitsugu、④融合科学研究科、⑤教授、⑥複合現実感
①松香敏彦、②マツカ トシヒコ、③MATSUKA Toshihiko、④文学部、⑤教授、⑥認知モデリング
①牛谷智一、②ウシタニ トモカズ、③USHITANI Tomokazu、④文学部、⑤准教授、⑥比較認知科学
※ ①氏名、②フリガナ、③ローマ字表記、④所属部局名、⑤職名、⑥専門分野 

千葉大地図アプリ・プロトタイプ

一川誠教授

一川 誠

Ichikawa Makoto

千葉大学文学部教授

専門分野:認知心理学
大阪市立大学文学研究科後期課程修了。博士(文学)。学術振興会特別研究員、ヨーク大学での博士研究員、山口大学工学部講師・助教授を経て2006年に千葉大学文学部助教授として着任。2013年より現職。実験的手法を用いて人間の知覚認知過程や感性の特性についての研究を行なっています。現在は特に、視覚や聴覚に対して与えられた刺激の時空間的特性が知覚認知過程におよぼす効果や、体験される時空間の特性に影響を及ぼす要因についての検討を行っています。工学系や理学系の研究者とも共同研究を行い、モノ作りなどを通して、実験心理学の持つ可能性を自分なりに広げようと試みています。

どのような研究内容か?

基礎研究としての認知科学と応用研究としての工学を組み合わせ、基礎・応用一体型の学際研究活動を実施しています。基礎と応用をつなぐ認知適応科学を立ち上げ,その具体的な成果として,認知科学と拡張現実 (Augmented Reality: AR) を組み合わせたサポートシステム構築などを行っています。

何の役に立つ研究なのか?

モノ作りに関しては、多くの場合、人間がユーザーとして関わります。人間の行動や心の特性についての科学的理解に基づいて製品を作ることで、使いやすく、安全で、しかも、人間の能力をこれまでになく発揮できるようになると期待されます。そうした、人間の特性に合わせ、可能性を引き出すようなユーザーサポートシステムを構築しています。

今後の計画は?

現在、認知科学と拡張現実(AR)を組み合わせることで、空間探索サポートシステム「千葉大学地図アプリ」を作成しています。千葉大学西千葉キャンパス内の道路および建物は、方位や鉄道・主要幹線道路などの参照枠に対して角度的に不一致で、正確な認知地図が作りにくい構造となっています。人間の認知能力に合わせてナビゲーションを行うこのアプリを、将来的には、千葉大学内に限らず、千葉県内の観光名所や都市部でのナビゲーションを可能にするシステムへと発展させることにより、地域貢献も視野に入れています。さらに、認知科学的な基礎研究と応用研究とを組み合わせて人間に合わせたモノ作りを実現するノウハウを構築することで、千葉大に認知適応科学の研究拠点を構築することを目論んでいます。

関連ウェブサイトへのリンクURL

文学部
教員紹介サイト

成果を客観的に示す論文や新聞等での掲載の紹介

「"ドレスの色"問題で科学者たちも騒然! 人間の錯覚には未解明なリスクがたくさんある」, 週プレNews, 2015年4月12日.
一川誠(2012)。錯覚学─知覚の謎を解く。集英社新書。
一川誠, 池上彰 (2015)。大人になると、なぜ1年が短くなるのか? 宝島SUGOI文庫。
「「危ない!」事故の瞬間"スローモーション" 千葉大・一川教授らが仕組み解明 研究成果の応用に期待」, 47News, 2016年5月30日

この研究の「強み」は?

適応という観点から人間の行動や心に関する基礎科学的な理解と、それを工学的応用に結びつけている点は、この研究プロジェクトのオリジナルです。文理融合、基礎と応用という、異なる専門的背景を持つ研究者が取り組んでいる学際的研究としても、ユニークな内容になっていると思います。

研究への意気込みは?

千葉大には、多くの認知科学領域やユーザーとしての人間に関わる工学分野の研究者がいます。本研究プロジェクトでは、そうした叡智を結集し、文理融合、基礎と応用を組み合わせた学際的研究として、認知適応科学に基づく新しい研究拠点を千葉大に築くきっかけになれればと考えています。

学生や若手研究者へのメッセージ

実は、人間は人間自身のことについてそれほどよくまだ理解していません。その行動や心の特性は長い進化の過程で自然環境に適応する中で獲得されてきたものと思われます。しかしながら、人間は、自分自身の生活環境を作り変える生物種です。新しい人工的環境の中では、自然環境への適応の過程で獲得された人間の行動や心の特性は、様々な不適応を引き起こす可能性があります。人間が人間のことを理解し、それをモノ作りに反映させることは、生活の質を向上させるだけではなく、安心・安全な生活環境の構築にとっても重要だと考えられます。今後の、このプロジェクトの成果に期待していただければと思います。

AR技術を用いた立体物の内部構造の提示

海外からの講演者を呼んでの講演会の開催(2015年度)

学外からの講演者を招いてのワークショップの開催(2014年度)