特色ある研究活動の成果
Research

言語と空間からみる多様な子どものアイデンティティと居場所

言語と空間からみる多様な子どものアイデンティティと居場所

米国A高校における日本人生徒らのラベル付けとテリトリー化(Shao-Kobayashi 2019, p.17)

図1: 米国A高校における日本人生徒らのラベル付けとテリトリー化(Shao-Kobayashi 2019, p.17)

小林 聡子准教授

小林 聡子

Satoko Shao-Kobayashi

国際学術研究院 准教授

専門分野:教育・言語人類学、質的研究方法論

2008年 米国カリフォルニア大学サンタバーバラ校教育学大学院 博士課程修了(PhD)
2008年~2013年 カリフォルニア大学アーバイン校アジア系アメリカ研究科、カリフォルニア州立大学ノースリッジ校アジア系アメリカ研究科 等 非常勤講師
2013年 千葉大学国際教育センター 特任助教
2016年 千葉大学国際教養学部 助教
2019年より現職

どのような研究内容か?

 国際化やグローバルという言葉をよく耳にするようになりましたが、海外に在留する日本国籍保有者は139万人以上(外務省2019)、日本国内における在留外国人数は282万人を超え(法務省2019)、両統計ともに過去最多となりました。現在はコロナ禍で人の移動が大きく制限されているものの、国内の学校教育の場でも、過去最多の5万人を超える日本語指導が必要な児童生徒が在籍しているなど、日本につながる多様な文化的言語的背景をもつ子ども達は増え続けています。
 私は、このような子ども達の人種や民族に関わるアイデンティティや居場所について研究しています。特に、どのようなことばを使って自分や他者をラベル付けし、どのように特定の場所をテリトリー化するのか(図1)、子ども達の日常的なやりとりや行動が、建物の配置、カリキュラムの設計、メディア媒体、社会的言説等とどのように関わっているのかに焦点を当てています。これまで、2004 年から米国ロサンゼルスに長期滞在する日本人(元)高校生と日系米国人生徒らを対象にした研究を続けてきましたが(画像1)、現在はその他の国・地域や日本の教育機関に在籍する子ども達についても調査をしています。
 研究手法は、主に教育・言語人類学、批判的人文地理学をベースにした質的研究アプローチ(エスノグラフィー、ナラティブや会話のディスコース分析、メンタルマップ、GIS等)を用いています(図2)。また、GPSシステムやアクションカメラを用いた分析を取り入れ、新たなデータ収集・分析の可能性や課題を検討中です。多角的に研究者の調査への関わり方やデータの政治性を考えることで、より批判的な研究方法を模索しています。

何の役に立つ研究なのか?

 学校は、子ども達がお互いを形作るプロセスにおいて根幹となりうる場です。2019年に日本語教育推進法が施行されたことは大きな一歩ではありますが、それだけでは文化的言語的に多様な子ども達が日々直面する学習や生活上の「つまずき」は解消されません。それには、まず子ども達に焦点を当て、彼らの社会現実を描き出し、学校や地域、家庭における教育的・社会的課題を丁寧に捉える必要があります。つまり、「社会」「外国人」「日本人」といった大きな主語ではなく、個々の子ども達を起点としたミクロの重なりとしてマクロを捉えることが不可欠なのです。まさにそこに主眼をおいた私の研究は、子ども達自身を含む教育に携わる人々が、多角的に課題の複雑さを理解し、自己省察や新たな行動を促す手立てとなることを目指しています。

今後の計画は?

 従来の「マジョリティがマイノリティを支援する」という構図が必要以上に強化されるのではなく、子ども達自身が自らの置かれた立場を批判的に捉え直し、共に社会を編み直していくための支援や仕組み、手法を検討することが重要です。これを目標に掲げ、国内及び北南米で活動する多分野の研究者らと協働研究をはじめました。また、千葉県における言語的文化的に多様な子ども達の教育と就労の課題を連続的に捉え直すための研究にも携わっています。一人でできることは限られていますが、このように研究や教育の輪を広げていくことで、学術的議論に留まらない具体的な働きかけをしていきたいと思っています。

関連ウェブサイトへのリンクURL

https://researchmap.jp/shao-kobayashi

成果を客観的に示す論文や新聞等での掲載の紹介

小林聡子(2021)TransvocalityとTranslocality:カテゴリーをめぐる相互行為的分析. 『異文化間教育』53号.107-124頁.
ガイタニディス・ヤニス、小林聡子、吉野文[編](2020)『クリティカル日本学―協働学習から「日本」のステレオタイプを学びほぐす』明石書店.(画像2)
Gaitanidis, I., & Shao-Kobayashi, S. (2020). Polarized Agents of Internationalization: An Autoethnography of Migrant Faculty at a Japanese University. Higher Education, 1-15.
Shao-Kobayashi, S. (2019). "Who's Pitiful Now?": Othering and Identity Shifts of Japanese Youth from California to Tokyo. Diaspora, Indigenous, and Minority Education, 13(1), 13-25.

新旧アジア系住民が入り混じるロサンゼルス郊外の一角

画像1: 新旧アジア系住民が入り混じるロサンゼルス郊外の一角

米国A高校の生徒によるメンタルマップの一例

図2: 米国A高校の生徒によるメンタルマップの一例

書籍等

画像2 : 書籍等