特色ある研究活動の成果
Research

脂肪細胞を用いた遺伝子/再生医療技術による難病治療法の実用化研究

脂肪細胞を用いた遺伝子/再生医療技術による難病治療法の実用化研究

研究代表者横手 幸太郎
共同研究者①黒田 正幸、②クロダ マサユキ、③Kuroda Masayuki、④医学部附属病院、⑤特任准教授、⑥遺伝子細胞治療
※ ①氏名、②フリガナ、③ローマ字表記、④所属部局名、⑤職名、⑥専門分野

横手 幸太郎教授

横手 幸太郎

Yokote Koutaro

大学院医学研究院教授

専門分野:内科学、老年医学

1988年 千葉大学医学部卒業
1996年 スウェーデン国立ウプサラ大学大学院博士課程修了
2009年~ 千葉大学教授
2011年~ 千葉大学医学部附属病院 副病院長(併任)
2015年~ 千葉大学大学院医学研究院 副研究院長(併任)

どのような研究内容か?

ヒトの体内には血中ではたらく酵素・タンパク質が数多くあります。そのような酵素がはたらかなくなると、体の色々な臓器に様々な障害が発生し、時には患者さんの 生命にかかわることがあります。 そのような病気の一つに家族性レシチン:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)欠損症があります。LCATは体内で主に善玉コレステロールでコレステロールの処理を担っている酵素の一つです。家族性LCAT欠損症はLCATが十分にはたらかない、または十分量体内で作り出すことができない病気です。LCATが十分にはたらくことができないため、血液中の善玉コレステロール(HDL-コレステロール)が著しく減少してしまうとともに、余分なコレステロールが腎臓や目などに蓄積し、腎機能障害(尿蛋白が見られる他、腎臓のはたらきが悪くなり、血液から老廃物を取り除けなくなる)や角膜混濁(角膜が濁り、目が見えにくくなる)、溶血性貧血(動悸、息切れ、めまいなどの貧血症状)などの症状を引き起こします。
このような酵素を生まれながらに持たない患者さんにはその酵素を血液中に補充 する治療法(酵素補充療法)が有効です。しかしながら、この病気についてはその酵素製剤がなく、現状治療法はありません。 私たちは、古くから形成外科で臨床治療として脂肪移植が行われていることに着眼し、この病気を対象として患者さんの脂肪細胞からLCATを分泌する細胞を作り、患者さんに移植することでそのLCATを持続的に体内で作り出し、症状を長期に改善できるような治療法の 開発を進めています。
現在、再生医療等安全性確保法の下、患者さんを対象とした臨床研究を実施しており、この治療技術の安全性と有効性について評価を行っています。これは医学部附属病院の糖尿病・代謝・内分泌内科、形成・美容外科、眼科、感染制御部、臨床試験部をはじめ多くのスタッフのご協力の下進めています。

何の役に立つ研究なのか?

血中ではたらく酵素・タンパク質が低下する病気は数多く知られています。例えば糖尿病はインスリンの分泌が低下することによっておこる病気の一つです。また血友病は血液凝固因子が生まれながらにはたらかない、または十分量作り出すことができない病気です。これらの病気にはインスリン製剤や血液凝固因子製剤が開発され患者さんに投与されています。しかしながらこれらの製剤は繰り返しの投与が必要であり、生涯にわたって注射が必要となります。
開発中の治療法は原理上、1回の治療(投与)で、治療用の酵素・タンパク質が体内で持続的に供給されるようになることから、生涯その後の治療が必要でなくなる可能性があります。このように、この研究を通じて家族性LCAT欠損症だけでなく、より多くの病気の治療に貢献できると考えられます。

今後の計画は?

現在実施している臨床研究や引き続き実施予定の治験を経て、家族性LCAT欠損症の治療法として実用化を進めていく予定です。それと並行して、他の病気についても同じ手法を用いた治療法の開発を進めていきたいと考えています。

成果を客観的に示す論文や新聞等での掲載の紹介

家族性LCAT欠損症を対象とした臨床研究の承認について、2016.9.1付、以下の新聞に掲載されました。
産経新聞「遺伝疾患治療に脂肪細胞-世界初、難病への応用期待-」
千葉日報「難病LCAT欠損症 新治療法で身体負担軽減-千葉大病院、臨床試験へ-」

この研究の「強み」は?

形成・美容外科領域で従来行われている脂肪吸引と脂肪細胞移植技術を基礎として、治療用の遺伝子を発現し、治療のための酵素・タンパク質を分泌させる細胞として脂肪細胞に着目し、千葉大学が世界に先駆けて新たな治療技術として実用化を目指した研究を行っています。脂肪細胞に組み込む遺伝子を変えることで、数多くの難病治療にこの技術が応用できる可能性があります。

研究への意気込みは?

「千葉大学から、より多くの患者さんに一刻も早く安全で有効な治療法として届けられるように日夜研究を行っています。

学生や若手研究者へのメッセージ

本研究は色々な病気の治療法として応用できる可能性を秘めています。また再生医療の分野は今後も異分野の方々との交流や共同研究により発展すると考えられます。そのような活動を通じて、研究の輪を広げたいと思っています。

その他

この研究は医学研究院、薬学研究院の先生方のご協力の下進められています。これまで脂肪組織や血液検体をご提供いただいた多くの研究協力者の方にこの場を借りて感謝いたします。

脂肪組織摘出