特色ある研究活動の成果
Research

フェロイック物質における境界がもたらす新規物性の解明

フェロイック物質における境界がもたらす新規物性の解明

 (左) ヨーロッパ放射光施設にある2次元検出器と (右)それを用いて測定した圧電材料PZTの3次元逆格子像

Fig.1 : (左) ヨーロッパ放射光施設にある2次元検出器と
    (右)それを用いて測定した圧電材料PZTの3次元逆格子像

横田 紘子准教授

横田 紘子

Hiroko Yokota

理学研究院 准教授

専門分野:凝縮系物理学

2008年 早稲田大学大学院 理工学研究科 博士課程を飛び級にて修了ならびに博士(理学)取得。
日本学術振興会特別研究員(PD, SPD)として英国Oxford大学Clarendon研究所に滞在、東京大学大学院工学系研究科を経たのち、2011年より千葉大学に着任。2017年より現職。
2009年 日本物理学会若手奨励賞(領域10)、2015年 アメリカセラミックス学会Richard and Patricia Spriggs Phase Equilibria Award、2019年 守田科学研究奨励賞、2019年 千葉大学先進科学賞、2020年 日本物理学会 米沢富美子記念賞 受賞。

どのような研究内容か?

 フェロイック物質は、センサーやメモリなど多くの電子機器に使われている機能性を持つ物質です。電子機器の小型化に伴い、より高い性能を示す材料探索や加工技術の開発が進められていますが、従来の方法には小型化や性能の面で限界が近づいています。そこで私が注目したのが"境界"になります。物質には色々な境界が存在しますが、私はその中でも濃度相境界とよばれる異なる物質を混ぜ合わせた際にできる境界と、分域境界とよばれる一つの物質内に存在する領域を隔てる境界に着目をしています。これまで、境界は物質の持つ機能性を下げるものだと考えられてきましたが、2000年代後半を境に境界自身が特異な構造や機能性を持つということが、実験的に明らかになってきました。そこで、この境界がもつ特異な性質を積極的に利用することにより、従来とは異なる方法で物質の機能性を向上させることができるのではないかと考えました。すでに理論計算では境界を利用することにより、既存のデバイスよりも優れた特性を示すことが予想されていますが、実験的にはまだ基礎研究の段階です。
 私は、境界がもつ特異な構造や機能性を計測することを通じ、その性質の起源を明らかにし、応用へとつなげていくことを目的にして研究を行っています。レーザーを用いた非線形光学現象計測や、最先端の放射光・中性子回折を駆使し、局所的な構造および機能性の評価を行っています。

何の役に立つ研究なのか?

 この研究の面白さは、これまで役に立たないと考えられていた境界で発現する物理現象を明らかにし、それを最大限利用しようという点にあると思っています。より優れた機能性をもつ新材料を開発することも勿論面白いですが、新材料開発には膨大な時間・労力・資金が必要であり、一種の人海戦術です。このような研究方法は中国のような国に太刀打ちすることはできません。最近ではAIを駆使し、どのような元素を組み合わせるとよいのかを機械学習させ、理論計算に基づいた材料設計を行うという手段も始まっていますが、実験というのはいつも計算通りにいくものではありません。
 これに対して、私の行っている研究は、既存の物質がもつ性質を最大限利用しよう、というものです。科学技術の発達により、従来の実験装置では観測できなかった現象も捉えることが可能になってきています。最先端の装置を設計し、世界に先駆けて新しい現象を見つける、そこにこの研究の面白さがあると考えています。

今後の計画は?

 現段階では、測定に時間がかかるため、物質内で生じている速い現象をとらえることができません。例えば、物質に力を加えたり、電場を印加したりするとそれに応じて物質内の構造や電子状態が変化しますが、この速度は非常に速くそれを測定することができていません。今後は、測定にかかる時間を短くし、物質内で生じている一瞬一瞬の現象をとらえたいと考えています。

関連ウェブサイトへのリンクURL

河合塾 みらいぶプラス
https://www.miraibook-research.net/wakate/s2059/

成果を客観的に示す論文や新聞等での掲載の紹介

H. Yokota, N. Zhang, A. E. Taylor, P. A. Thomas, and A. M. Glazer, Phys. Rev. B 80, 104109 (2009).
H. Yokota, H. Usami, R. Haumont, P. Hicher, J. Kaneshiro, E. K. H. Salje, and Y. Uesu, Phys. Rev. B 89, 144109 (2014).
N. Zhang, H. Yokota, A. M. Glazer, Z. Ren, D. A. Keen, D. S. Keeble, P. A. Thomas, and Z. -G. Ye, Nat. Commun. 5, 5231(2014).
H. Yokota, S. Matsumoto, E. K. H. Salje, and Y. Uesu, Phys. Rev. B 100, 024101 (2019).

この研究の「強み」は?

 物質というのは実は表面と内部とでは大きく性質が異なります。このため、物質に特有の性質を理解するためには内部を非破壊で測定する必要があります。物質を破壊することなく3次元可視化できる技術というのは非常に限られています。私の研究では、光を駆使して物質がもつ機能性を、医療におけるMRI検査のように3次元画像として可視化することができるため、ここに研究の強みがあります。

レーザー顕微鏡を用いて得た強弾性体リン酸鉛の3次元画像 色の明るいところにのみ電荷がたまっている

Fig.2 :レーザー顕微鏡を用いて得た強弾性体リン酸鉛の3次元画像
    色の明るいところにのみ電荷がたまっている