学科(専攻)・科目の種別等

教養展開科目(コアD関連)
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授業コード G15D25501 科目コード G15D255
授業の方法 講義 単位数 2
期別 後期 曜日・時限 水2
授業科目

経済学A

Economics
副題 投票制度の数理分析
担当教員 金子 文洋
履修年次/セメスター   時間数 30時間 受入人数  
教室等 G10
概要 社会システムがその構成員のもたらす至福を分析するための基礎理論を、社会選択理論と言う。この社会選択理論の中の大きな分野として、投票制度の数理理論がある。本講義では、1990年代に開発された簡易図解ツールと初等的計算を用いて、この理論の主要部分を概説する。
目的・目標 投票制度の違いによって起こるパラドックスの成立要因を理解し、投票制度の有用性と限界を認識する。投票制度は、二者択一方式に依拠するものと順位点方式に依拠するものの2つに大別できるが、その各々について、制度内および他制度との比較において成立するパラドックスの生成要因を、簡単な図解や計算によって説明できるようにする。
授業計画・授業内容 社会選択理論は、古典的な経済社会の分析から始まった経緯から、俗に言うところの純粋に「文系」の分野に属するものと誤解されがちであるが、その実態は、社会システムについての数理理論の構築である。その中で、投票制度は、それが社会的意思決定に常に用いられているという事情もあり、古くから関心を集めてきた、現在は、分析が深化すると共に、基礎理論のより簡素な再構築が進められている。本講義では、1990年代にD.Sarriによって提唱された「幾何学的アプローチ」に準拠し、簡易な図解や計算のみを用いて、投票制度の基礎理論を解説する。具体的な講義計画(予定)は以下の通りであるが、講義進行に遅れが生じる可能性が高いので、細かなトピックについては、割愛することがある。

第1回:講義紹介ー>例で見る投票制度のパラドックスI
 多数決が引き起こす問題点について、例を用いて解説する。

第2回:例で見る投票制度のパラドックスII
アジェンダ方式やコンドルセ方式等、多数決以外の投票制度が引き起こす問題点について、例を用いて解説する。

第3回:投票制度分析するための図解ツール
 本講義を通して使用する、基本的な図解ツールを解説する。

第4回:二者択一式投票制度I:コンドルセ問題
 コンドルセが提唱した投票制度の問題点を、図解によって解説する。

第5回:二者択一式投票制度II:シングルピーク選好とコンドルセ制度の改善
 投票者が「シングルピーク選好」を持つと仮定した場合の二者択一式投票の分析、およびコンドルセ式投票制度の改善策について、図解を中心として解説する。

第6回:二者択一式投票制度III:アローの定理
 K.Arrowによって発見・証明されたいわゆる「不可能性定理」を、A.Senの定理との同値性を用いて、図解によって証明する。

第7回:小試験(二者択一式投票制度について)ー>順位点式投票制度I:図解ツールの準備
 投票者が選択対象につける順位に得点を対応させ、その総計で社会的順位を決める投票制度について、その分析のための図解ツールを解説する。

第8回:順位点式投票制度II:順位点配分の違いによる投票結果の相違
 順位点配分が異なると、どのように投票結果が変わってくるのか、図解を中心に解説する。

第9回:順位点式投票制度III:順位点式と二者択一式における投票結果の比較分析(1)
 二者択一式投票の結果と順位点式投票の結果の比較を図解し、それらの整合性の度合について解説する。

第10回:順位点制投票制度IV:順位点式と二者択一式における投票結果の比較分析(2)
 順位グループ座標系を用いて、二者択一式投票の結果と順位点式投票の結果の比較分析を行う。

第11回:順位点制投票制度V:可逆性による順位点制投票制度の分類
 可逆性を満たすかどうかという観点から、順位点制投票制度を比較分析する。

第12回:順位点式投票制度VI:プロファイル分解
 投票者の選好のプロファイルを分解し、基本プロファイルを抽出して分析することの意義を解説する。

第13回:順位点式投票制度VII:ボルダ制度以外の順位点式制度の特徴
 ボルダ制度以外の順位点制度が可逆的でないことに着目し、その特徴を図解を中心に解説する。

第14回:順位点制投票制度VIII:投票者が厳密な順位を付けない場合の順位点式投票制度
 投票者が一部の選択対象のグループに明示的な順位を付けない場合を考慮し、そのパターンにしたがって異なる順位点配分を複数個用いる投票制度について解説する。

第15回:投票制制度の有用性と問題点のまとめー>期末小試験(順位点式投票制度を中心に)
キーワード 社会選択理論、投票制度、投票のパラドックス、多数決、コンドルセ式投票制度、ボルダ式投票制度。
教科書・参考書 教科書:Sarri, D., Basic Geometry of Voting, Springer-Verlag, 1995,
ISBN 3-540-60064-7.

参考文献等:講義開始後、適宜指示する。
評価方法・基準 中間試験に代わる小試験の得点と期末小試験の得点の、大きい方で評価する。いずれの試験も、投票制度についての問に図解や計算で答える形式の、教場試験とする予定である。解答を導く過程の記述においてどれだけ数理的な説明ができているかを考慮して、採点する。